この2人の戦いという場ですが、シリアスversionなので、別枠が登場です。

 

ちょいと前に自転車のくだりがあったので、それの延長でシリアスversionが出ます。

 

「なあ今江、諏訪先輩って3年7組のクラス委員長だよな」

「そうだぞ、すっごく優しいんだぞ、神だ」

「それでさ、3年7組ってどんななの」

「ん?ああ、どんなかって、酷かったらしいよ」

「酷かった?」

「俺が1年7組のクラス委員長として初めて委員長会議ってのに出た時に、おっかしいなあと思ってたんだよ、諏訪先輩が一番最初に来てて、俺も緊張してたから結構時間前に行ったんだ、でも会場設営っていうやつがもう始まってて、それが諏訪先輩一人だったから、あれ?って」

「わんさかいるだろ、クラス委員長は」

「うん、でも初回からずっと諏訪先輩が一番先に来て会場設営、それでその時、3年8組のクラス委員長の、ほら音大に行ったっていうすっごい人、城善寺先輩、あの人がまたかあって言ったから、だからそれで納得したんだよな、

諏訪先輩は1年7組のクラス委員長としてずっと頑張って来たんだけど、1年の時から苦労してたってこと、

あーその、ここだけの話なんだけど、ほらあの杵柄にべったりのやっばい先輩がさ、すげえ問題児だったらしくて、

そのせいで諏訪先輩のクラスが1年の時から学級崩壊してたんだよ」

「へえ」

「びっくりしたよ、あの先輩に監視がいっぱいついてたとか、同じクラスにもいたし、諏訪先輩は知らないだろうけど、小牧先輩と都築先輩か、それと一ノ瀬先輩、あの人すっげえセンスいいよな、あと他にも何人かであの先輩を監視しまくりって感じだったな、びっくりだった、だって初回から諏訪先輩が俺に、来年は分からないって言うから、でも一番つらかったのは誰よりも杵柄だから、俺はクラス委員長として少しでも支えてやりたいの、ひでえことしたの、ちゃんと覚えてるし、忘れないから」

「なあ今江、3年7組って掃除当番制あるんだよな」

「あああるよ、あーでも1人だけすっとぼけて参加してない特別扱い者がいる、でももう今では誰もそれを見過ごしたりしてないってさ、みんなで目が覚めたって、諏訪先輩が言ったんだから」

 

指定された時刻まではまだまだという場面。

五馬無動君、指定場所付近の角に立っています。

「あれ、五馬君」

「篤麻、まだ時間まであるだろ、ちょっと休憩したいから俺はここで待機」

「ああそうなの?分かった、じゃあ俺先に行くね」

その1分後。

 

「江藤瑞樹先輩、ですよね」

「ん?ああ、もしかして君も気になって」

「いや、俺はちょっとした参加者なのでこれから同席となるんですが、江藤先輩はもう

 部活を引退した身、法学部を目指しているなら追い込みの時期では」

「よく知ってるなあ、もしかして」

「俺はたまたま、総合進学部2年7組に在籍してるってだけなので、江藤先輩にとって

 は後輩にあたるんですが、うちのクラスの委員長の今江俊樹が、どうにも3年7組

 のクラス委員長の諏訪永久先輩を神だ神だと尊敬してたので、

 そんな方が委員長をしているクラスってどんななのかなあと思っただけです。

 ご存知ですよね、今江俊樹って誰か」

江藤瑞樹が固まる。

「俺が知りたいのは1つです、教えて頂けませんか?後輩に是非とも、先輩として」

「な、何だろう、私で言えることなら」

「掃除当番制、うちのクラスにはないんです。そのきっかけを作ってくれた偉大な先代

 生徒会長って、どういう入学の方法を果たしたか、なんですけど」

「え、ああ、それか、ええと入学式にはいなかったんだ、それで1週間遅れで編入試験で合格したとかで、それでうちのクラスに合流になった。ドイツから来たばかりだから日本語も分からないし、でも」

「でも?」

「今思えば、普通だったんだなと、私たちは、目の色が青いとか、それは最初だからびっくりするよな、ドイツからってのもそれでかと頷ける、誰だって最初はどういう経緯でここに来たんだろうとか、ドイツで高校行かなかったのかとか、遅れて入学してきたって部分でも興味があるだろ、誰だって知らない相手を知りたいと思うから、

結構質問をしてしまう、

特に中学上がりって頃は好奇心旺盛だし、義務教育ではないのだから、

将来の志望なんかを決める大切な場所がこの高校だし、

だから余計にちょっと変わって入ってきた橘君をみんなで質問攻めにしたのも、

そう、普通だったんだ。

でも、橘君はいつも無視ばかりだった、それにわざと相手を突っぱねるような言葉を言ってはわざと距離感を取るような感じだったと、

私と都築って、ちょっと趣味が同じだから、進学も方向が同じだから、よくベランダでだべってたから直接的な会話を知らないんだ、

でもそういう態度を取られると誰ももう背を向けるよな、

話し掛けても無視、挙句の果てにちょっとこっちが傷つくような言葉を向けられれば、

誰だって完璧じゃないから心が折れるし、怒りもするし、

だから距離感がどんどんと広がっていって、

でもそのことに気がついたのが私も都築も遅かったんだ、

まさか今江君を殴るとか、町田さんにも怪我をさせても、

謝罪もしないって、

確かに私達は可哀想だというだけで守らないとと行動をしたんだ、

それが原因でうちのクラスは学級崩壊に至った、

人を憐れむという事は、意味がいろいろ変わって来る、

蔑んで憐れむということはした覚えはないんだ、

でも人としての礼儀だけは忘れないでいたかったから、

3人でみんなに謝って、もう一度クラスをやり直せないかって思ったんだ、

卒業までにまだ時間があるのならまだ何とかなると、

そう、杵柄君にも言われたような気がした、

やり直せるのは当事者達だけなのだから、

今では結構これでもうまくいってるんだ、

私は法学部、諏訪も法学部、伏見も法学部、都築も法学部、

小牧はおかしいんだがな、あんなでも小さい子供が大好きって奴で幼稚園教諭を目指すって、もう進路決定してるしな、

もう私たちの目は覚めたんだよ、

私も都築も一度、法学部ではなく別の道にと考えた事もあった、

でもまた法学部を、弁護士になりたいという希望を持たせてくれたのも杵柄君だ、

すげえなあ、いい生徒会長だ、出来過ぎだ、

優しいし、先輩に対しても敬意を払ってくれるし、後輩に対してもすげえ優しい、

だから同期っていう君に対しても同じように優しいんだろう、

ただ怖いよ、

あんまり誰かの為にその優しさを捧げ続けてしまったら、

自分自身の心の中から優しさが、消えてしまうんじゃないかって」

「大丈夫ですよ」

五馬無動君、微笑む。

「どうもありがとうございました、法学部ってかなりの難関じゃないですか、大学とか決まってるんでしょうから自分の進路を優先するべきですよ。

他の事に余計な時間を割くことは不要です。

こっちはこっちで終わりますから、どうか気にせず。

これから、『郷戸道明先生が直々にと判断をなさる』わけですから、

それと杵柄に関しても大丈夫です、俺達2年7組が全力で支えるわけです、

それに生徒会長の右腕、副会長も一緒にいるんですから、

こんなつまらない場所でくだらない事でまた余計なものなんか背負わせませんから」

「私からも1ついいだろうか」

「何でしょうか」

「掃除当番、今日のうちのクラスの掃除当番、橘君も入ってるんだ。そのことを都築が早退する前に言ったんだ、都築がちょっと今不調でさ、でも君がいるなら大丈夫だ、

こっちはこっちで諏訪と伏見がまとめている、

なら君達は、今江君と町田さんで卒業まで行ける、

まだ2年生なのだから、

学校は本来、勉学だけを身に着ける場所ではない、

友達ができたり、趣味が合う仲間と出逢えたり、ただ楽しむだけの場所でもあるということを、杵柄君に伝えておいてくれ」

 

こういうやり取りがあっての、無動君の入室です。

 

「ん?席?」

「うん、郷戸先生が好きな場所を選んでいいって、五馬は?」

無動君、郷戸先生を見ます。

「杵柄の後ろがいいです」

本当は、真正面に立って、さっきの言葉を伝えてやりたいんだが、と思いながら、

無動君がその席に座りました。

 

「篤麻、何かいい部活は見つかったのか?」

「困ってるんだ、さっきすっごい大勢に囲まれて、今日は文化部を回ろうと思っていたんだけど」

「文化部か、でも運動部も文化部もそうは変わりないと思うんだよな、やってることが違うってだけだし」

「そうなの?」

「でも何か、これがやりたいって思えるものがあったらそれは出逢いだ、それまでは捜し続けるだけでいい、んー、俺だったら、部活に強制加入っていう校則が最初からなかったなら、最初から帰宅部だったな」

「五馬君にはそういう出逢いってのがなかったの?」

「ここにはなかった、でも、昔にはあった、そういう感じだな」

「ふうん」

 

こうして4人の戦いが始まります。

数学。

元就君と篤麻が提出としてから無動君も提出とします。

机に戻るという際に焦りまくっている橘を見ていたりします。

物理も化学も同じ感じです。

そして、例の英語です。

 

「(あー、通りでストさんがあの席なわけだ、ばっちりな角度だな、郷戸先生がどういう方かを知りもせんで、無知のままでいるということも悪くはないが、これは破滅を迎える無知としてもいいって感じだな)」

ちょうど見えますね、橘君が元就君の解答用紙をカンニングしているところが。

そして無動君が前を見て、苦笑。

 

そして採点結果と講評は同じ感じで。

 

その後、なわけです。

 

無「先輩、どうもお疲れ様でした」

橘「…お前は、さっきの」

無「東大医学部、目指してるわけですよね、将来は医者志望ですか」

橘「それが何だよ」

無「奇遇だなと思ったので、俺も同じ進学先を希望してますから」

 

2人の間を風が…(冷たそうだい)。

 

橘「はは、なら先に行って待っててやろうか、ああでも待っていても駄目か、お前は

  不合格になるから」

無「全国模試、いくつ受けてます?その全部で合格確率とか出てる筈ですけど、

  各教科の偏差値とか、実はうちのクラスで全国模試受けてるの俺しかいないので、

  誰とも情報共有できなくて相談したかったんです」

橘「いくつ、…1個だ」

無「俺、7つ受けてるんです、7個しかないからそれ以上受けられなくて、1年の春

  からずっと7個受けてるんです、自分が今どの位置にいるかくらいは把握したい

  じゃないですか、確実に合格を果たす為には今の自分の位置を確認しておかない

  と、よく言いますよね、僅かな事でも命取りになるとか、1日でも欠かさず勉強

  をしていないとなかなかの難関ですから、東大医学部って」

橘「お前には、だろ」

無「そうですね、でも高校は義務教育ではないからそれこそ必死です、総合進学部と

  もなれば進学に特化した学部ですから、悠長にどこかに出掛けている暇もないし、

  勉強だけにしか集中出来ない息苦しさって厳しいですよね、本当に感謝してるん

  ですよ、部活強制加入という校則を撤廃してくれた今の生徒会長に、

  部活でさえ貴重な時間を取られてしまうから、本当は早く家に帰って勉強したい

  とか併設図書館で勉強したいとか、俺は将棋部でしたけど文化部でもそういう縛

  りがあるって辛いと思いますよね」

橘「さっきのわざとなんだろ」

無「さっきの、というのは何でしょうか」

橘「あの先生とやらと全員でグルになって僕を陥れるだけの計画だろ、試験問題も前

  から知らされていたからああやって早く出せたんだろう、あの先生ってお前らの

  担任だからひいきでもしたってことだ、楽しかっただろ」

無「話、すり替えないでもらえますか?俺今結構傷ついたんですけど、誰とも情報共有

  出来ないから経験者である先輩に少しでも話を聞いてもらいたいってだけで話して

  たのに、全国模試の話すら後輩としてくれないってあんまりじゃないですか」

橘「勝手に傷ついてればいいだろ、どうせこれっきりだ、僕は合格するし、お前は不合

  格になる未来がある、ああそうか、先輩として教えておいてやるよ。全国模試でど

  ういう判定がされているかだろ、僕はずっとBだ、1年からずっと合格圏内だ、

  偏差値だろ?大体が70だ、それは変わらない」

無「ああそうですか、合格確率判定、Bなんですか。偏差値も各教科が大体が70とい

  う感じで、それは今までと、最近受けた夏の終わりのものでも、変わりない」

橘「悪かったな、貴重な時間を僕が奪ってしまって」

無「いいえ、俺が先輩から貴重な時間を奪ってしまったのかとすごく反省してます。

  あと僅かという期間でBのままだとまずいですよね、偏差値が大体70ってのも

  本気で追い込みをかけないとどうにもならないじゃないですか、

  俺も頑張りますよ、判定がAの+で英語以外の偏差値が90以上を何とか保って

  おかないと、英語もあと少し頑張れば90になるんですけど、不合格になる未来、

  俺は俺の手で何とか変えないとって決心が固まりました、東大医学部で1年先に

  合格している未来がある先輩にもう一度再会できることを願ってますよ」

橘「…お前、何が言いたいんだ」

無「願望とか希望とかですか?なら1つだけですよ、難病研究医となって少しでも世界

  の医学に貢献したい、その一助となれたら俺としても生きて居る価値があるだろう

  と思えるような誇りを持てるのでは、それだけで俺は出来てます、その為にこの学

  校に入ったわけですから。学校って、ただ楽しんでいられるだけの場所じゃないと

  先輩のクラスの方から教えて頂いたので、一層気を引き締めて行きます。その先輩

  は法学部を目指していて将来は弁護士になるとか、やはり法律系を極める志望をお

  持ちの方って言葉の重みが全然違うな、と感じましたね。

  そう言えば、先輩のクラスには法学部志望の方が4名いらっしゃるとか、医学部と

  法学部って学ぶ事は全くの別物ですけど、志というものは同じですよね?」

無動君、会釈して立ち去ろうとします。

そして立ち止まります。

無「ああそうだ先輩、本試験の前のセンター試験とかでも不正行為をしたら、一発で終

  わりますよ、こんな一介の高校のたかが進学ばっかりの生徒がうじゃうじゃいる学

  部で受けたくだらない試験なんかで不正行為しなければいけないっていう焦り、

  センター試験を前にしたらそれこそ命取りです、本試験に辿り着けなければ来年、

  本試験も会場が本場ですから緊張すると思うんですが、天野先輩だったらそんな

  こと関係無しだったんでしょうね、城善寺先輩も音大ではなく東大医学部だったら

  また別な意味で、緊張してきてしまったので帰ります、帰って、」

橘「…」

無「帰って、ちょっと気になっている映画でも、見てみようかな、と思います。長編で

  知られているタイタニックとか、あーあ、1日潰れるなあ、はあ」

 

無「…あんな奴が医者になったら世界が滅ぶわ、くっそ、自分のクラスから既にぶっ壊

  してるって自覚もねえ、自分が合格になる未来があるって誰が断言してんだか、俺

  だって合格すっか分からねえってのにどっから出てんだよあのおかしな自信、

  でもそれより、…あいつが杵柄をここまでにやばくさせた元凶なんだろ、迷惑をか

  けている自覚をしろ、それって自分に言ってたんじゃねえのか、クソが」

 

無「郷戸先生、今少しよろしいですか」

郷「ああうん、何だろう、さっきはありがとうね、あ、約束守ったよね」

無「先生は、郷戸道明先生は、諸葛孔明でいいです」

郷「…え?」

無「もう俺はやめます、落書き。でもその代わり、絶対に医者になりますから」

郷「…う、うん…」

無「それと、もうあれもやめます、だから戦争は終戦として平和になりました」

郷「…うん…?」

無「それと、2日でいいので欠席してもいいですか」

郷「ん?」

無「月命日と、もう1日、ちょっと疲れたので、寝たふりくらいはさせてください」

 

無動君のこの後の行動は秘密にしておこう!!彼に悪いからね!!