まずは、逆。


も「えいやあっえいやあっ」


ぽこーん。ぽこーん。


む「…だから物理的に無理だって」

投げられたモンスターボールを拾っては律儀に返すミュウ。

も「俺は諦めない、ミュウを捕獲するまでは死ねない」

む「何がそこまでラッキーを動かすんだかね」

も「聞いたんだ、篤麻に」

む「なんですかね」

も「ミュウを捕獲するといいことがあるって」

む「ないわ、あるとしたら図鑑が出来上がるだけだわ」

も「ううう、えいやあっ」

ぽこーん。

む「いいことって何を期待してるんだよ、ほれ」

また拾って渡しているミュウ。

受けとるラッキー。

も「五馬がおかしな方向へ行かないように」

む「どっち」

も「君は忘れん坊だよ」

む「おかしな方向へだろ?何だよ、俺を現実に引き戻してくれるってのか」

も「非現実的思考からね」

む「お葬式か」

も「…え?」

む「世界改編か」

も「何?」

む「俺は悪魔じゃない、爆弾魔だ」

も「ミュウだよ」

む「ショックだろ…俺は涙が止まらなくて立ち上がれなかったんだぞ」

も「爆弾魔にショックなことがあるもんか!」

む「ああ…もしかして実の母親が、というあれか…泣いたよ、それとも先祖の契約を破棄させたあれか、あれもあれで泣いたかもな、あ、実は君があの、という衝撃か、しかし養父がまさか頂点とはな、俺は既にこの世に居なかったが、京都にも行けたしな、右目。最近じゃ島根だったし、次は青森」

も「…み、ミュウ!」

む「いいことなんかないぞ、俺を捕獲したところで俺は不幸そのもの、希望の欠片すら手にしていない。捕獲したらしたで死ぬぞ。」

も「何故」

む「ド忘れしてんのはラッキーだろ、俺は何をお前に散々求めてきた?呼び覚ませ、記憶を」

も「ううう、えいやあっ」

む「…あ、もしかして、普通に投げつけて遊んでる感覚?」

も「入るんだ、ミュウ!」

む「楽しいか」

も「楽しいね」

む「なら俺も楽しくなりたい」

も「はい。」

む「いや、俺はサトシじゃないから要らん、投げないし図鑑意味無し 」

も「…何故俺はラッキーなんだ…」

む「俺の幸運の意味では最適だろ」

も「…デス」

む「バニシュからのデス」

も「ざ、ざ、」

む「50%ならザオラル、確実ならザオリク」

も「ザオラルッ」

む「あ、何でよ、何故半減させたんだよ今」

も「生き返るかどうか分からないねっていうワクワク感を大切に」

む「作戦名は是非とも、いのちだいじに、でお願いします」

も「みんながんばれ!」

む「個性重視派か、ならばこちらは、めいれいさせろ」

も「むー!」

む「はいラッキー、いつも一番手ご苦労様です。命令ですよ」

も「勝てないじゃないか!五馬はあの城では王様だったんだ!」

む「命令だっつの。全裸カモーン」


…ミュウは諦めていなかった。


も「そんな選択肢はない!攻撃!呪文!道具!」

む「おい、逃げるを忘れるなラッキー」

も「に、逃げる!」

む「作戦名は、命令させろ」

も「ふんがー!」

む「逃げられませんでした、敵に回り込まれました。はい全裸カモーンリターン」

も「くっそー!」

む「第一逃げられないんだよ、相手が俺ならば。逃げる、と選択しても選択肢提示の意味がまずないんだからさ、ありゃまやかしだ、紛らわしいことこの上なし」

も「め、め、」

む「やめてください、メガンテとか誰が好き好んで使わせますかー」

も「俺は死んでも、仲間を必ず、」

む「くそがッ」

どがしっ 

も「な、何で殴った!?」

む「俺はマジでメガンテ使わせないんだよ、何だよそれ、自分を犠牲にしてまで仲間をって、命を粗末にするんじゃないわ」

も「それでよく全裸カモーンなどと」

む「全裸になったとして敵はどうともないわ、掠りもなし、会心の一撃にもならず。まずバトル中に装備品をどうにかしてる事がマジでの戦闘放棄。だが相手が俺なんだろ?城に来た、俺がボスっぽくいた、ならば俺を即死させるにはラッキーが全裸になるだけでヨロシ」

も「逃げられない、」

む「あ、やめて?危ない水着とか逆に頭痛がするから。ビジュアルからドキドキしたいとか嫌悪。ぬいぐるみも却下。誰がラッキーを全裸から遠ざけるんだよ」

も「わっかんない!」

む「ラッキー、君が相対している敵は名前を何としているのだ」

も「五馬!」

む「ならマジで命令させろ、全裸になってくれ」

も「水着は!?」

む「やだよ、直にこの手で触りたいんだ、邪魔だわあんなもん」

も「さ、触るってまだ言うかッ」

む「何の為の全裸ですか」

も「セクハラ!セクシュアルハラスメント!17歳なんて嘘だ!実は中年、壮年男性だなっ!そして俺は冴えないオフィスレディ!お茶汲みしか能の無いパシリ兼ナイスバディ!」

む「…それどこから来た」

も「すみませんっ…こ、こぴーきが誤作動をっ…」

む「メカオンチさん、平仮名やめてください」

も「すみませんっ…ああっ、お茶をっ…フキフキ」

む「おい、逆セクハラだろ」

も「はあっ!?」

む「上司の股間に茶をぶっかけてフキフキしたのならやばい、逆セクハラもしくは誘ってんじゃねえわとなる、もはや行き先は確実に休憩時間指定場所です、直行です」

も「あっ、せっかく運んできた書類が床にっ…!」

む「はい駄目。拾う時に既にスカート短いので下着丸見えです、何なの新人部下、ことごとく自分からお誘いですわね、お局さんならある意味嫌がらせだわ」

も「何を言ってるの」

む「論点ずれただろ、軌道修正」

も「…えいやあっ」

む「何でまた投げてんだよ、戻る場所違うだろ、ほれ」

も「うー…」

む「つかこれ一番安価なボールだろ、マジで捕獲したいなら一番高価な高確率ボールを惜しみ無く使いなさいよ」

も「…え」

む「本気じゃないって証明だよ。安価なボールを連続使用、あわよくばこれでと経済的になってしまうのもいいが、こうもひたすらに俺を捕獲したいその執着心、無いわ」

も「あるよ!お金じゃない!」

む「なら何故延々とこれよ」

も「他にあったの?」

む「はー…まあいいよそれで。捕獲したいなら俺を瀕死にしなさい。HPを限り無く1に、あ、やば、もう少しで死なせるとこだったじゃんレベルまで追い詰めなさい。ボールに入った、しかし余力ありません、センター連れてけ馬鹿野郎となればいいのです。」

も「や、やだよ」

む「俺を瀕死で留める方法は1つだラッキー、いや、サトシ」

も「嫌だよ…」

む「全裸になれ」

も「嫌だよッ!」

む「ああすまん、全裸になられたら俺にはマジでベホマだ、死んでも生き返りたいのでリレイズかけといてください」

も「わっかんない!」

む「俺も理解出来ないわ、このやり取りをするにあたりラッキーがどこまで俺に追い付いたか」

も「は、走る!?」

む「明日はあっちよ」

も「方向じゃない!」

む「救いたい友達はあちらです」

も「俺はメロスじゃない!」

む「いやいや、マジで走られたら俺が死ぬ。飛び出し坊や気取りでいるなよ、ラッキーは走る大型車両だ、むしろ宇宙に行ける戦艦だ」

も「…宇宙…」

む「あれ、違ったか」

も「ううう、えいやあっ」

む「またこれかい、もはや俺を誰だかマジで分かってないな、ミュウなんだろ」

も「はい」

む「やってみそ、実際に。このボールじゃ無理だから。ほい」

も「他にあるの」

む「一番高価なボール連続使用+瀕死ミュウIN奇跡」

も「この出逢いは奇跡…」

む「何よ」

も「出逢う順番を間違えてしまったのね、私達」

む「なら俺は、…父さん、俺、学校に行くよ」

も「え」

む「ショックだぞ、その次の日、俺は死ぬんだから」

も「い、嫌だよ」

む「はいこれ、持って」

も「…注射器」

む「それを持ち、にやにやしながら俺に近寄る、ウサギとは違うぜ」

も「…何を言ってるの」

む「何を言わせてんの」

も「あ~…駄目だ、五馬が分からない」

む「じゃあ別だ、何か別な世界で来い」

も「…世界?」

む「うーん、今の俺ならば、呪われた血の一族でいいです。」

も「え」

む「気になって見返してました。あの立ち位置。敵が前にいるからメガネさんがバイク前にスタンバイです、もはやメガネさん、メガネマニアさんより強いので。メンタル。ポジティブなんです」

も「…よ、よくわからない…」

む「なら別か、…あ、叫んでみ?走るんだよな?もう必死こいて全力疾走しながら名前連呼です。いつかあなたがつけてくれたんです、私のその名前を」

も「…」

む「泣けるからマジで。寿退社ですから」

も「…はい」

む「ほう、俺の捕獲を諦めたか、だがな、このボールはラッキーサトシ、お前の金で買ったんだ。これまでの苦労を無碍にするな。ほれ」

も「ついていけない」

む「求めないわ」

も「全然分からない」

む「趣味の範疇を超えてしまったからな」

も「誰が、好きですか」

む「一番手がたくさんおられます。決めかねます」

も「今のあなたは」

む「目の前にいるラッキーです」

も「俺?」

む「はい。全裸でお願いします」

も「まただよ」

む「誇りなさいよその骨格を。自信持ちなさいよ、もうお茶汲みだのばら撒いてしまった会議用資料は不要です。あなたの身体は服を脱ぎ捨てれば最高のご馳走です」

も「な、なんだっけ、…えー、」

む「五馬君のエッチ~」

も「五馬君のえっち~!」

む「俺、もういじめられっこです」

も「え!?」

む「俺を殴り飛ばすあなたはガキ大将、そしてメカオンチではなく世界破壊の歌音痴です。マイク剥奪」

も「え…」

む「しかし時にあなたはお風呂っ子です。いつでも気がつけば風呂ですね、潔癖なんだかマジで自慢のナイスバディですかね」

も「…」

む「な?趣味の範疇を超えてしまうとこうなります。しかしこんな俺は世界にごまんといます。レベル低いわけです」

も「…99では」

む「上には上がいます。そらもう際限無く」

も「さ、さっきの、…これ」

む「ああ、注射器な。あれはな、前日に父親とキャッチボールしてて、多分複雑だったんだよ、父親に心配かけたくないし、でも理不尽な苛めがエスカレートしてる、

しかもラスボスが当初の苛めのターゲットだったんだ、息子はそれを庇ったんだ、それが全ての始まりとは知らずにな」

も「何が始まったの」

む「父親の復讐劇だ」

も「え」

む「決意のキャッチボールだったんだよ、学校に行くよってあの台詞、心なしか何かを悟りきっていたかのように聞こえた、本当は分かってたんだろうな、やばいんじゃないかと、今までの流れ的にあそこでキャッチボールだぞ、いや、苛めがな、もはややばいんだよ、あいつの血は何色してんのかなみたいなレベル。ウサギは赤かったんだよな。だからその注射器なわけ。屋上だったよ。息子は後ずさる。ラスボスは注射器を手に追い詰める。お前の血は何色かなみたいな好奇心旺盛な男子だ、そして息子はそのまま」

も「…ど、どう、なったの…」

む「ちょ、ちょっとさ、今それここで言うか?」

も「え、気になったよ、」

む「やめてくれない?つい見上げちゃうだろ、思い出すだろ、名前の由来、小さな手をこう、空に向けて、この空をはばたくのね、そうね、うふふふふ、…あなたの…本当の子供じゃないんだから…、フェンリルだよ、約束を守りたいって泣けるだろ、約束したのよ、私、約束を守りたい。分かってたよ、元々体が弱いんだ、肝臓がな、生まれながらにハンデがある、母親からの遺伝じゃないと頭がいいから気づいてる、余命いくばくかとも悟ってる、命短し恋せよ乙女とかでは片付けられない、娘を止めてくれ、返してくれ、分かるよ、やってんだよ司令塔も、戦闘に出す所から無理だって勝算がないって、でも解除したくてもさせないんだよ、もはやあの子が司令塔でとか思うわ、でも冷静な対応と参謀、耐える激痛、孤独に背負う義務、序盤から言ってただろ、自分が乗れるなら乗ってるわ、誰も失いたくない、自分が出れば、自分が1人で戦えれば、もう苦しいわ」

も「ミュウ…」

む「ああすまん、世界が違った。あれだよな、息子はそのまま後ろ向きで下に落ちて死にます。ラスボスもな、まさか相手が死ぬとかびっくりだ。そして始まる父親の復讐劇。苛めグループの一員達を潰しに行きます」

も「は、」

む「だってもう主題歌があれだぞ、冬の散歩道。イントロだけで蘇るわ、…あ、別なんだ、タイトルは同じでもな、読書家さんよ」

も「…つ、潰すって…こう、」

む「それ、蚊をパチン、じゃないよな」

も「潰すって、こう…」

む「それはアルミ缶相手だろ」

も「…潰す!?」

む「復讐だから。息子をさ、事故扱いみたいにされてさ、実際は苛めがあったとかさ、知らなかったんだよ父親は。息子は何も言ってなかったんだから。はい、俺は今、教室で苛められてます。とか言わないだろ。優しい息子だったからこそ、苛めを正当に回避させようとしてしまったんだから。…あ、…あれはな…まあいいか、いいやいい、終わろう」

も「な、何、今の」

む「苛め、駄目、絶対。」

も「は、はい」

む「てなわけで、はい質問」

も「はい」

む「何のドラマ?」

も「え?」

む「冴えないオフィスレディよ」

も「え?」

む「ちょっとさ、今江も今江だけど、何なのこの後味の悪さ。やめてくれない?どこ情報かくらいは知りたかったわ、まさかのまさか、AVかとも考えたわ」

も「えーぶい」

む「俺は見ないから、そっちは。なら何故その単語が?とは聞くなよ、もうわからん、どっかのドラマで知った、としてくれ。…あ、あれだ…うわー、何故俺はあれを見てたんだ…?暇潰しに見るドラマではなかったのに、深夜枠でもなかったのに、…あああの流れだ、何かあの頃はああいう流れが主流だったというか、…学校って、嫌いになるよな」

も「え」

む「帰りたくなってきた。疲れた。もう死んでしまいたい。起きたくない。朝陽がな、つらいんだよ」

も「ミュウ」

む「何とでも呼べよ、もういいわ、タイトル裏切るけど諦めます。あーしんど、帰ってなーんにも考えずにぐったりとなって死んでしまいたいのです、早退します、さようなら生徒会長」

も「…し、死なないで」


む「死なないわ、お前の全裸を拝み、触りまくる日が来るまでは何としても生きるわ、それから死ぬわ」


諦めてない。