世界の愛、をテーマにした展示が開催中の美術館に、五馬無動君が同行した場合(実にレア)。


も「ずっと来たかったんだよねー」

む「実は生まれてこの方、このような公共機関に足を踏み入れた事が無い」

も「あ、う、うん、…何かごめん」

む「謝らないでくれ、実はこれでもこのような機会を与えてくれた杵柄に感謝しているんだ」

も「ま、真顔だけどね」

む「さて入ろう、チケットは先んじて購入済みだ」

も「あ、お金、」

む「初めてなもんで俺に払わせてくれ、感動のお礼だ」

も「真顔だよ」


展示を見て回ります。


も「うわーこの絵画、どう思う?」

む「強いて言えば、タイトルが兄弟愛だろ、まずそこからが疑問だなあと」

も「え、疑問?」

む「しー、あんまでかい声出すな、美術館は静かにせんと」

も「は、はい」

む「で、疑問なんだが、兄と弟の間にある愛がどこまでのものかと考えると、例えば1つ、今江兄弟の様な危険性極まりない愛、2つ、杵柄と篤麻の様な戸籍上は兄弟だが苗字が別で出身の家柄も血筋も無関係だが戸籍上ではという関係性不可思議な愛、をまず頭に浮かべるわけだ」

も「不可思議かな」

む「篤麻はお前にかなりべったりしながらも時にあっさり、しかし慕う心はまさに弟として年相応、それに対するお前も可愛い弟、て表現しているくらいだからな」

も「可愛い弟だよ、べしゃりで興味津々、知りたがり屋で」

む「ちなみにどこが可愛いんだ?」

も「…どこって、何か、こう、」

む「ちなみに篤麻とはどんな生活をしているんだ?」

も「んー、長らく、じゃなくて、五馬と同じで、生まれてこの方無味生活を送ってきたから、今は杵柄家で料理番みたいになっているけど、味の追及、耐性をつける為に日々、トンカツを作っているよ、…もう1ヶ月も連続で…俺はその点で母さんと胃薬を奪い合う…母と長男という関係性に…」

む「俺が篤麻に要らんことしたからだろ」

も「体育祭の時のお昼ね、…何か気絶したんだって?五馬がソースに加えてマヨネーズをトンカツにかけて、篤麻とおかず交換した時」

む「俺もな、まさかと二度見、いや、五度見したかな」

も「でもあれがあって、味に興味が出たんだ、興味を持たないと何に対しても動かない子だから、いい刺激になったはずだよ」

む「そうか、それが篤麻を可愛い弟、と表現する所以か、まあそういう兄弟愛もあるのかな、という感想はあるな」

も「す、すごいね」

む「はい質問」

も「何だろう」

む「歩きながらでいい、ほいほい」

も「うん」

見て回ってます。

む「今杵柄が話せる状態かよくわからんが率直に聞きたい」

も「いいよ、何でも聞いて」

む「篤麻と風呂に入ったんだろ?」

も「…!!」

む「あ、無理か」

も「…し、仕方なかったんだ、俺が両手を怪我していて、俺がちょっと潔癖で、どうしてもお風呂に入らないと嫌だったから、あ、篤麻には何の下心はない、ないんだ、」

む「兄17歳、弟16歳、家柄は違えど兄弟、なら何も問題は無い」

も「こ、…高校生…」

む「それは世間一般の考えだろ、今江を思い出せ、兄が27歳にして独身を貫く理由は」

も「弟の今江を溺愛してしまっているから」

む「今江兄には必ず下心はある、隙あらば今江を襲いたいんだからな」

も「そう、なるね」

む「でだ」

もはや展示どころではなくなっています。

む「俺は神保篤麻の左肩が好みなんだが、どんな左肩をしていた?」

も「え、左肩?」

む「杵柄と違って篤麻は触らせてくれるんだ、杵柄と違って鳥栖も意味不明だと言いながら俺に肩甲骨を触らせてくれるんだ」

も「ほ、骨に対する、深い愛」

む「世界の愛がテーマだからついついな」

も「篤麻を直視出来なかったんだ、だから、見ていない…」

む「篤麻は顔がいいしな」

も「あ、いや、…ど、ドエロ、エロエロ篤麻…で」

む「分かるよその気持ち」

も「え」

む「成程、兄弟愛な」

も「…う、うん…」

む「で、これは溺愛か」

も「愛にはレベルがあるよね」

む「あるな」

も「い、五馬も、」

む「家族に関してはやめてくれ、蕁麻疹が出るから」

も「あ、その、」

む「ああ、不動か」

も「いとこなわけだよね、俺って兄弟姉妹もいなければ、親族とも逢ったことがないから、いとこも知らないんだ」

む「双方の親が兄弟姉妹の関係性」

も「初恋、の相手だよね」

む「…今思えばどうだか」

も「ん?」

む「確かに俺は不動の世話役としてずっと今まで制限ある人生だった、最初は母ちゃんと一緒に、母ちゃんもあんなんでも代わりが利かない考古学者、親父には酷だったろうがローマに行かせたのも俺、端から見ればまるで本家の奴隷だったんだろうが、一度も苦とした事は無いし、逆に学区の関係で本家に感謝していたり、医者になると決めたのもそれが大きい、…好きか嫌いかという枠じゃなく、こう見えて俺も理不尽だなとか嫌悪とする事があって、そんな時に不動にだけは本音が言える、返事は無い、無いとしてもただ耳に聞こえているならそれは唯一の救いというか、17という若さで命を終わらせても不動なら不満も言わなかったんじゃないかと、俺の勝手な考えだが、まだ遺骨がうちの仏壇にある、本家の墓には入れたくないと親父が無理に引き取ったから、もっと早くに本家から引き取っていればとか、名前も俺の母ちゃんがつけたんだ、不動と俺の名前、好きだったかと考えるともうそんなのとっくに通り越してて、いつも近くに居た、それが当たり前、だから初恋の相手だとは断言出来ないな、強いて言えば感謝したい相手、だ」

も「…うん」

む「はい質問」

も「は、はい!?」

む「しー」

も「…は、はい」

む「いつよ」

も「え、い、いつ?」

む「いつ俺の気持ちに応えてくれるんだ」

も「…な、流れ的に何か、な、泣きそうな話だったのに…五馬の気持ちってあれだよね、…全裸」

む「よく分かってくれているじゃないか、理解が早くて泣きそうだ」

も「…い、一回だけ、なら」

む「え」

も「一回だけなら全裸になる、さ、触りまくっていい」

む「杵柄、安心しろ。俺はお前を友達だと見ている」

も「信じるよ」

む「なら話は早い、今日の帰りによろしく」

も「え!?」

む「しー」

も「…ちょ、俺にも心の準備が」

む「待つから」

も「そ、そうは簡単に」

む「決心してくれるまで寝ないで待てるから」

も「よ、夜になっちゃうの!?」

む「しー」

も「よ、夜…に全裸…」

む「そうは簡単に心の準備が出来ないと言うから、早く出来るなら夕方までとか」

も「…と、とりあえずお昼、食べようよ、お腹空いたから」


やっと昼…。

む「…美術館、か」

(実は無動君、複雑だった)


も「俺はこれにする、季節限定のBセット」

む「なら注文な」

も「え、決めてたの?」

店員「お決まりですか?」

も「この季節限定のBセットを下さい」

店員「お飲み物はどうなさいますか?」

も「えーと、烏龍茶でお願いします」

店員「かしこまりました。…いつもの、でよろしいか」

む「よろしく頼みます」

店員「了解致した、待たれよ」


も「…今の、何?」

む「何が?」


店員「お待たせしました、Bセット、烏龍茶でございます」

も「ありがとうございます」

店員「…追加は3、でよろしいか」

む「4で」

店員「…かしこまり」

も「…」


も「五馬は茶蕎麦なんだね」

む「たまにふらっとここに来る事があってさ」

店員「…4」

む「どうも」

も「あの店員さんとは」

む「たまに遇う店員と客、だが?」


も「…」

む「ふんふふーん、ふんふふーん」

も「…もうマヨネーズ二本目だよ」

む「ならこっちだ」

も「…」

む「ふんふふーん」

も「唐辛子が空瓶になったよ」

む「いただきます。」

も「…」


む「あーうまい」

も「…それ、茶蕎麦だったよね」

む「そうだが?」

も「…」

む「よし」

も「…え」

む「ふんふふーん、ふんふふーん」

も「ちょ、ま、マヨネーズ、」

む「4本あるんだから4本だろ」

も「…」

む「それと」

ごそごそ。

む「うし」

も「ソレハナンデスカ」

む「ガラムマサラ」

も「は、はい?」

む「それとこっちはタバスコ」

も「あ、あのー」

む「そんで締めがこれよ」

も「ちょ、な、」

む「さすがにケチャップは知ってるだろ」

も「五馬、味覚、死んでる?」

む「味変って知らん?」

も「俺は知らなかった…五馬無動君の生態を…」

む「まあまあ早く食べたまえ、好きなんだろ」

も「…茶蕎麦に見えないよ…」


店を出ました。

む「さて、帰るか」

も「は、はい!?」

む「疲れただろ」

も「さ、さっき、ほら、」

む「ん?」

も「け、決心が出来ました。」

む「え」

も「全裸になります、どうぞ触りまくってください」

む「気は確かか」

も「いや、それは俺の台詞」

む「…なあ杵柄、生きてるといいことがあるんだな」

も「え、え!?」

む「俺はお前と友達になれてよかった、ありがとう」

も「…は、はい?」


歩いてます。


む「ちなみに俺は、友達ってなろうとかなりませんかとか、そんなのは要らないと思ってるんだ」

も「…うん?」

む「気がついたら友達だった、それがいい」

も「うん」

む「あの店員な、4本にしてくれただろ」

も「…マヨネーズだったとはね 」

む「何か嬉しい事があったんですか、だから4本なわけですね」

も「え?」

む「あーどうしよう」

も「え、何、え?」

む「神が拝める」

も「…か、神?」


事件が起きます…。


マヨネーズの4本、は幸せのクローバーの4から来ています。

それから、無動君はちらほらと元就君にしか言えない自分の本音を語ってました。

やはり17歳ですからね。