【解説】好きとは言わない水原千鶴の 状況と行動の間にある「好き!」 | 恋心、お借りします

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【解説】好きとは言わない水原千鶴の 状況と行動の間にある「好き!」

 

はいどーも!かのかり楽しんでますか?

 

今日は、かのかりを10倍楽しむためのヒントをお話ししようと思います!

 

それが!

 

状況と行動の間にある「気持ち」です

 

もはや漫画史に残るといって良いほど「好き」と言葉にしないヒロイン水原千鶴。だったら、まだ和也のこと対して好きじゃないんじゃ…?

 

いいえ違います。

 

千鶴は、言葉にしていないだけで、もうずっと「和也が好き この人がいい」と思ってきたんですね。漫画の中でも、明確に千鶴の気持ちは描かれています。それはもう、ハッキリと、明確に、印象的に

 

漫画の読み方の意識を変えれば、千鶴の気持ちを掴むことも簡単にできるんですね。それくらい分かりやすく表現されています。考察したり、解釈の幅があるという作品ではありません。

 

そこで大事なのは、水原千鶴に与えられた「状況」(特に和也との関係性)と、そのときとった「行動」です!

 

 

 

  水原千鶴は 本心を語らない 表情にも出さない

 

水原千鶴は、超ド級のツンデレキャラです。普通のツンデレなら、ツンケンしたり恥ずかしがりながらも、必死に好意を伝えようとするんですが。千鶴は和也の前では、本当に好意を出しません。20巻まで到達しても「和也が好き」だとは一言も言わないし、心の中でも語らないんですね。

 

千鶴は、自分が和也に好意がある、和也と一緒にいられたら嬉しいという気持ちをなかなか素直に出すことができません。

 

「好き」どころか「ありがとう」の言葉も、うまく言えないんです。感謝を伝えることは、頼ってしまったということですから、どこか自分の弱さを見せてしまっていると感じているのかもしれませんね。和也の前では、「ありがとう」と言っていても、嬉しそうな表情は極力見せないようにしています。

 

 

◆あなた時間ある? 55話

 

 

◆ありがとう もう一回言いたくて 146話

 

私はあなたには興味がありません

協力するのはあなたに言われたから

用事があるから会いに来ただけ

 

レンタル彼女と客というプライベートはNGと言う関係性もあり、和也に対しては徹底してこの姿勢を貫くんですね…。好意を表情には出さないし、理屈ばかり並べて隠してしまいます。

 

ですから、千鶴の言葉や表情から気持ちを読み取るのは不可能なんです

 

超ド級のツンデレ恐るべし…

 

 

 

これは普段少年漫画ばかり読んでいる読者にとっては難しいかもしれませんね。たとえば、「五等分の花嫁」に出てくるヒロインはみんな素直で、好きな男の子(風太郎)の前では、素直に「こうして欲しい」「ああして欲しい」と言いますし、思い通りにならないときには明らさまに頬を膨らませます。さらに、建前を言ったときには必ず心の中で本心を語ります。だから読者はヒロインたちの心理についていける。

 

少年漫画では、この人には言えるけど、この人には言えない、なんてリアルな人間関係はありません。どんな状況でもはっきり言葉にできる方がかっこよく見えます。そういうキャラクターが好まれるし、素直に言えない子は分かりやすく心の声で語らせてしまいます。

 

しかし、千鶴は本心を語らない、表情にも出さない。

 

 

 

それでも僕は、「千鶴の気持ちは明確に描かれている」と言いました。それは、千鶴は素直に言葉にしないし表情にも出さない代わりに、行動で示してきたからです。

 

今千鶴の置かれている状況を理解して、そのときとった行動の意味を考える。そうすれば、その間にある「気持ち」は明確に描かれているという言って良いです。

 

それが「状況」と「行動」の間にある「気持ち」の表現です。これが素直に言葉にできない千鶴の本心です。

 

 

 

  状況と行動の間にある「気持ち」

 

たとえば、3巻に海で和也に助けられた後の千鶴の気持ちを考えてみましょう。

 

千鶴の「状況(和也との関係性も含む)」を整理します。

 

千鶴はレンタル彼女としてお客の和也と出会ったばかりです。”恋の応援役”
の仕事を気に入っている千鶴にとって、失恋から立ち直ろうとする和也は、またレンタルして欲しいと思うお客さんです。でも、まだまだ和也がどういう人か知らないので、彼を信頼しているわけではありません

 

運悪くレンタル彼女の仕事が小百合おばあちゃんにバレてしまいそうになり、和也は本物の彼氏だと嘘をついてしまいました。和也とは、おばあちゃんたちに「別れた」と言ってしまおうと約束していました。この海でも「別れようと思っている」と周囲に言った和也を、「男らしいところあるじゃない」と言って褒めていました。

 

 

 

千鶴の行動を見てみます。海で溺れたとき命を張って助けてくれた和也。

 

レンタル彼女だって 言ってんじゃん!

 

そう言って千鶴は、ただの客である和也の命を危険にさらしてしまったと悔みます。そのとき、千鶴が脳裏をよぎったのはこの言葉です。

 

あいつ悪いヤツじゃねーんだ

きっと あんたのこと 最後は幸せにしてくれると思う

 

我が孫を好きになってくれた女性に 何を怒ろうか

 

◆レンタル彼女だって言ってんじゃん!!! 3巻15話

 

和也は命を張って千鶴を助けれくれました。千鶴は、木部くんの言った通り和也はきっと「いい奴」だと思ったんですね。さらに、彼のために和おばあさんを悲しませたくないという気持ちが動いてしまった。

 

だからその後、和也から「その ありがとな その…あそこまでして 助けてくれて…!」と言われたとき、千鶴はこういう行動に出ます!

 

◆当然でしょ 彼女なんだから 15話

 

当然でしょ 彼女なんだから

 

「彼女宣言」です。

 

おばあちゃんにも、和也の友達にも「別れた」と言う約束でした。しかし、和也の友達がいる前で自ら彼女だと宣言したんです!

 

そこにある気持ちは

 

和也との嘘の恋人関係を続けてみよう

 

もっと言えば

 

レンタル彼女として和也の力になりたい

 

この気持ちがあったから、その後「借りたいんだ 君のこと」という和也に対して、「いいよ」「安心してっ 私が彼女でいる間は 放っておいたりしないからっ」と言ったわけですね。和也に本物の恋人ができるまで嘘の恋人を続けてあげると約束したんです(20話)。

 

千鶴は、和也に対してなかなか本心を語りません。でも、こういう「行動」(言葉を言うことも含む)で、千鶴の気持ちは明確に描かれているんですね。

 

これが「状況」と「行動」の間にある「気持ち」の表現です。

 

 

 

その他、たとえば、千鶴が自分の夢を和也に明かしたとき、

 

◆ヒいた? 61話

 

約束なの…いつか女優になるって おじいちゃんとの

だから残されたおばあちゃんに 私が銀幕に立っている姿を見せたい

それが私の夢

ヒいた?

 

千鶴は、和也に話を聞いてもらって嬉しい表情ひとつ作りません。でも

 

この人には 自分の夢を知っていて欲しい

味方でいて欲しい

 

この気持ちがあるから、話すんです。

 

千鶴自身が語るように、その夢は千鶴にとって”子供っぽい”夢です。プライドが高い千鶴は、夢について誰かに話したことはなかったでしょう。でも、それを和也には話したんです、千鶴が夢を諦めそうになたとき、和也が「諦めるなんて言うな!」と励ましてくれたから。千鶴にとって和也は自分の味方になってくれる大切な人なんですね。和也だから、話したいと思ったんです。

 

かのかりでは、作者の身勝手な説明台詞はありません。宮島さんは、読者に説明するための、キャラの気持ちに矛盾する言葉は絶対に言わせないんですね。本当に”生きた”言葉ばかりです。リアルな人間関係の中で、この人には話したい、あの人には話せない、言いたいから言う、うまく言えないときもある、そんな”生きた”言葉ばかりです。

 

 

 

飲み会で和也が庇ってくれたとき、千鶴は「うれしかった」とも「ありがとう」とも言いません。

 

◆一ノ瀬だけは死んでも守んなきゃって 9巻73話

 

しかし、冷蔵庫にヨッパライ!と突っ込みを入れた「ウコンの恋人」を置いていくんですね。

 

 

◆ヨッパライ! ウコンの恋人 74話

 

庇ってくれて嬉しかった ありがとう

 

この気持ちを和也に伝えたかったんですね。

 

 

 

「フェアなお隣さん宣言」をしたときだって、ただ単にプライベートなお隣さんの関係を認めてあげったってことではありません。

 

「おはよ」と和也に挨拶をしたり、千鶴自身はもうお隣さんとして接し始めているんです(40話)。でも、和也はそんな認識はなくて、レンタル彼女と客の関係のため極力プライベートな関係を持たないように避けてくる状況です。

 

千鶴はそれが不満だったんですね。

 

 

◆これからはフェアなお隣さん 7巻57話

 

もっと話しかけて欲しい 和也と仲良くしたい

 

この気持ちがあるから、フェアなお隣さんでいて欲しいと伝えたんですね。

 

 

◆学内でのあいさつ 61話 

 

特に、千鶴にとってプライベートな関係をお客と持つというのは、できたら避けたいことなんです。それでも、和也と過ごす時間が欲しいんですね。

 

これが、「状況」と「行動」の間にある「好き」の表現です。水原千鶴のデレですね。

 

和也と出会ってからの1年間(1-6巻)は、和也への好意を「レンタル彼女として協力してあげる」という行動で示していきます。その後、女優として応援されるようになってからは(7-12巻)、フェアなお隣さん宣言ををしたり、瑠夏のお泊りを許したり、デートをリードしたり、レンカノ以外の関係の中でも好意を示していきます。映画製作が始まった後は(13-19巻)、ふたりの夢を叶える、和也の想いに答えるという形で和也への好意を示していきます。

 

千鶴は和也が好きとは言いません。しかし、状況と行動から千鶴の気持ちを捉えることができたら、「和也が好き」「傍にいたい」「大切な人だ」、そう言っているのに等しいんですね。

 

 

 

  明確かつ印象的に表現される千鶴の気持ち

 

僕は千鶴の気持ちは、セリフを切り取っても分からないと言っています。それは千鶴自身がほとんど本心を語らないし、なかなか表情に出さないからです。でも、千鶴の置かれている状況(特に和也との関係性)をちゃんと理解して、その行動で彼女が何をしたかったのかまで考えれば、千鶴の気持ちは明確かつ印象的に描かれているんですね。

 

 

◆馬鹿ね 私も… 86話

 

 

◆でも彼ほど 貴方に相応しい人はいないわ 112話

 

 

 

◆好きじゃない でも 好きじゃなくもない 127話

 

 

◆聞いた?俺の理想の彼女は―――だって 19巻166話

 

 

◆馬鹿みたい…っ 私… 174話

 

特に、千鶴が恋を自覚したとき(86話)、和也を好きでいていいんだと思ったとき(112話)、好きなってくれないと悩みながら2人の未来を信じたとき(127話)、和也の傍にいたいと強く願ったとき(166話)、やっと和也の本心を知ることができたとき(174話)―――重要なシーンほど、言葉は遠回しに、「状況」と「行動」で千鶴の気持ちが表現されます。

 

言葉だけ切り取ったら意味が分からない。でも、千鶴の置かれてる状況や彼女の性格、和也との関係性、彼と過ごした時間を考えると、「この言葉しかない」「千鶴らしい」と唸らされます。そのシーンにぴったりなんです。

 

僕の解説では、表情や言葉(セリフ)だけでなく、「状況」(特に和也との関係性)と「行動」をベースに説明しています。参考にどうぞ。

 

【解説】超重要回 水原千鶴が「私 和也が好き」と気づいた瞬間!

 
 
千鶴の立場に立って、「状況」(特に和也との関係性)と「行動」を整理してみましょう。そうすれば、これまで見えなかった千鶴の気持ちが掴めるはずです。そして、その気持ちがひと繋がりとなって、水原千鶴の恋物語が展開されていることにも気づくはずです。

 

是非もう一度、かのかりを読み直してみてください。

では、また次の記事で!

 

水原千鶴の視点で振り返る「彼女、お借りします」レビュー&解説「水原千鶴の恋物語」もよろしくお願いします。