「彼女、お借りします」アニメ2期を楽しむための 誤解しがちな10のポイント
はいどーも!かのかり楽しんでますか?
かのかりガチ勢、ブロガー、千鶴ヲタクの甲楽わんです。
コチラの記事では、アニメ1期(原作1-50話)を見たよ、2期が楽しみだよ、原作漫画を読んでみたい!という皆様に向けて、より「かのかり」の物語を楽しむためのポイントを紹介します!
それが、誤解してしまいがちな10のポイント!
今回ばかりは、アニメ2期(単行本7-12巻)のネタバレなしでお送りしたいと思います。
漫画「彼女、お借りします」は、「レンタル彼女と客」というあまり身近ではない関係性が核になって物語が進みます。皆さんが思っているよりも複雑で理解し辛い人間関係の中で展開されるラブコメなんです。実は、キャラクターの行動やセリフをきちんと理解しようと思うと、底なしに沼の深い作品です。
今回は、ストーリーやキャラクターについて、僕自身が初見で誤解してしまったことや、また様々な方のレビューや解説を読んでいやいやそれは違うんだと思ったことを集めてみました。
誤解を解いて正しく理解すれば、アニメ2期以降かのかりのストーリーが楽しめるはずです。アニメ1期を見直して、なるほどーと納得できるはずです!原作漫画も読んでみたい!と思うはずです。自称水原千鶴オタクである僕が、責任をもってお送りしたいと思います。
誤解1 かのかりはキャラが可愛いだけの漫画・アニメである
かのかりのヒロインたちはみんな可愛いうえ、ものすごく個性豊かでキャラが立っていますね!清楚系黒髪ロングの水原千鶴(でも中身はツンでドライ)、恐怖の?元カノの七海麻美、無鉄砲突撃彼女(仮)の更科瑠夏、人見知りだけど頑張り屋の桜沢墨。ヒロインたちのかわいらしさは、かのかりの魅力です!もちろん、それをしっかりと形にした宮島礼史さんのイラストレーションやアニメ制作での作画の質の高さが人気の要因でもあります。
ですが、かわいいキャラクターが出てくるだけじゃないんです!かのかりの真の魅力は、レンタル彼女と客いう関係性から生まれるオリジナリティにあふれたストーリーにあります。「嘘の恋人関係」や『彼女』を借りることで生まれる、予想もつかないストーリーがファンの心を掴んでるってことですね。そしてその物語の中で生き生きと描かれるキャラクターが魅力だってことです。それは見た目のかわいらしさだけではありません。ヒロインたちに、時に悩まされ、時に助けられ物語は進んでいくわけです。アニメ2期以降も、この「レンタル彼女」が物語の核となって進んでいくので、期待してください。
誤解2 かのかりはハーレム・ラブコメである
これも違いますね。ややネタバレになりますが、アニメ一期(1-50話)で水原千鶴にガチ恋をした和也は、その後、一切他の女の子に目がいきません(笑)。
ここで言う「ハーレム・ラブコメ」とは、主人公の男の子がどの女の子が選べないままストーリーが進行し、読者からすると最後まで誰エンドになるか分からないラブコメのことです。
麻美ちゃん、千鶴、瑠夏ちゃん、墨ちゃん、ヒロインたちからモテモテの和也ですが(笑)、彼の恋心は、すべて水原千鶴に向かいます。彼の言葉を借りるなら、他のヒロインは、女の子として可愛いしドキドキする、でも、"好き"とは違うんだそうです。ハーレムラブコメであるような、どの子がいいのか迷っちゃう…みたいなことはありません。
かのかりはアニメ2期以降、正ヒロイン水原千鶴と主人公和也の協力関係にフォーカスし物語が展開されます(具体的な内容は2期をお楽しみに)。「めぞん一刻」や「世界の中心で愛を叫ぶ」(今の高校生に分かるのか?)のような純愛ものなんですね。瑠夏ちゃん押しの人はごめんなさい。千鶴エンド一直線。それは1期で和也が千鶴にガチ恋した瞬間に決まってしまいました。
千鶴エンドだと分かってしまっていて面白いの?と思ったあなた!そこは安心してください。めちゃめちゃ面白いです!
かのかりは、「ニセコイ」や「五等分の花嫁」で描かれたような最後までエンドを分からわせないラブコメとは、全く違うところに魅力を持っているからですね。それは、水原千鶴の「夢」の実現と和也との協力関係、そして、それを通して描かれる、ふたりの「距離感の変化」と「すれ違い」です。さらに、そこに絡んでくる他のヒロインたちの活躍ですね!ただドキドキ・イチャイチャするだけのラブコメではなく、描かれるのは人間のドラマ。すれ違いの物語。その点は「五等分の花嫁」に通じるところかあります。千鶴も瑠夏ちゃんも墨ちゃんもめちゃめちゃ活躍するので、ご期待ください。
誤解3 かのかりはご都合主義の物語である
これも間違いですね!かのかりはご都合主義の展開は一切ありません。むしろ逆、どの作品よりも『リアリティ』を追及していると言っていい作品です。
ここで言う『リアリティ』とは、設定が現実世界に近いということではありません。キャラクター同士のエンカウントがリアルなわけではありません。
和也と千鶴がお隣さんだったりするのは作者の都合。千鶴と麻美の対決のとき(アニメ1期12話)、彼女たちが和也のバイト先を訪れたりなんてのは、めちゃめちゃご都合主義な展開、嘘っぽい展開なんです。
でも、その虚構を受け入れてしまったら、そこ生まれる人間のドラマはものすごいリアリティを持って描かれるんです。
たとえば、更科瑠夏ちゃんの設定なんてぶっ飛んでるんです。小さなころからドキドキすることができない病気で、それがコンプレックスになっていた。自分はロボットなんじゃないかと悩んでた。和也がレンタル彼女の千鶴に一生懸命な姿を見て、「この人カッコいい」ってトキめいて、すごくドキドキしてしまった。それ自体にはリアリティは全くないんです。
(アニメ勢の皆様には特殊エンディングで説明された内容なので分かりにくかったと思いますが、原作ではそういうキャラ設定です。)
でも、彼女の生きてきた人生を素直に受け入れたら、そこに生まれた気持ちにはリアルがある。
◆私はロボットなんかじゃなかった! 原作28話
ずっと不安だった ドキドキできない私はロボットなんじゃないかって
今日はじめて 男の人がかっこよく見えた
そのドキドキは 今まで感じたことのないほど 大きなものだった
私はロボットなんかじゃなかった! ドキドキを感じられる普通の女の子なんだっ
彼の傍にいられたら ドキドキ
きっとこの人が 運命の人なんだ
瑠夏ちゃんの人生を素直に受け入れたら、はじめてドキドキさせてくれて、素敵だなって感じた男の子は絶対に手放したくないって思いますよね!運命感じちゃいますよね!こういう虚構の中で生まれる、気持ちの『リアリティ』は丁寧に作りこまれているんです。
ちょっと一番極端な例を出しましたが…、それは千鶴も同じ。どうして和也の力になるのか、気持ちの部分はめちゃめちゃ丁寧に表現されているんですね。作者の勝手な都合で、読者受けがいいからって、こう言わせたってことはマジでないんですね。千鶴の気持ちは男性視聴者には掴みにくかもしれませんが、作中で非常に丁寧に描かれています。一度、丁寧に千鶴の目線で物語を追ってみてくださいな。早く知りたい人は、僕のブログ記事「1-6巻 水原千鶴の恋物語 満足度①」を是非読んでみてください。
さらに和也と千鶴の関係性の描写は、この上なくリアリティを持って描かれています。宮島礼史さんの才能と拘りが溢れているといって良いレベルです。
◆まぁ 別にいいけど 原作20話
たとえば、海で助けられた後、当初あれだけ嫌がってたレンタルをひとつ返事で受けてしまいます。ふたりの間に、すこし信頼関係ができたからですね。こういった受け答えの変化でしっかり関係性を見せてくれるのが、「かのかり」です。
「レンタル彼女と客」という虚構の関係の中で、最初はただの客だった和也を千鶴が受け入れ、心を開いて、応援していく。最初はただのレンタル彼女だった千鶴を和也が認め、その優しさに惹かれ、本気の恋に落ちていく。そこで描かれる『千鶴にとっての和也』、『和也にとっての千鶴』は確実に変わって行くんです。受け答えの仕方ひとつ、話し方ひとつ、振舞い方ひとつで、ものすごく丁寧にふたりの変化が表現されているんですね。
是非、虚構の中で生まれる人間ドラマの『リアリティ』に注目してみてください。
誤解4 主人公木ノ下和也はクズである
これは一番解いておかなければならない誤解です!原作19巻まで読んでいる読者なら皆口をそろえて「和也かっこよすぎか!」と言ってます。僕は、他のヒロインを抑えて水原千鶴の次に好きなキャラが和也です。墨ちゃん瑠夏ちゃんを抑えて、圧倒的に和也です!千鶴の視点で見ると、和也って男の子はめちゃめちゃカッコいいからですね!千鶴を救ってくれるスーパーヒーローなんですね。和也のアニメ2期での活躍を期待しておいてください。
アニメ1期、和也に少年漫画のヒーローたちが見せるようなカッコよさはありません。勇気と意志、努力はありません。ぱっと見、冴えないしクズで魅力のない主人公に見えます。
でも、日常レベルで彼をみたら決してクズではないんです。
当初千鶴に暴言を吐いたのだって、彼がひどい失恋をしてボロボロだったから。幸せにすると誓うくらい本気の恋を失ったからですね。そういう状況を経験したことのある人なら、正しい判断ができなくなるのも分かるハズ。
優柔不断で状況に流されてしまう彼ですが、見方を変えれば空気・状況を読んで行動できる子です。嘘を重ねたことだって、そうしなければ、どうしようもない状況だったってだけです。もし自分が同じ状況だったら…と想像したら簡単に分かるはず。
当初千鶴の部屋に押しかけあれだけ迷惑をかけたのだって、彼がおばあちゃん想いで大切な人のためには全力になってしまうような子だから。それを千鶴の目線で見たら勝手なことをしているように見えるだけ。その「大切な人」の対象が千鶴に向いたのなら、全力で彼女を救いに行きましたよね、フェリーから海へのダイブです。そして、不用意に千鶴を巻き込んでしまったときには、必ず「空デート」の予約を入れて、千鶴に感謝を伝えています。
木ノ下和也は、かっこつけたがりで、エッチな妄想しちゃって、本気の恋を失えば傷ついてしまうこともある、普通の子です。家族思いで、大切な人のために全力で突っ走ってしまう、勇気があってとてもやさしい子です。傷ついた栗林くんのために、恥をさらすことも厭わない、友達のために真剣になれる子です。ひとりの女の子を「幸せにすると誓う」ような、とっても一途で真っすぐな子です。
外から和也を見ている私たちが、彼の事情を理解しようとせず、ヒロインの千鶴に迷惑をかけている姿を見てクズだと勝手に判断してしまっているだけなんじゃないでしょうか。彼のおかれている状況を考えず、私たちの願望を押し付けて勝手にイライラしているだけです。彼がどういう状況だったかは作中で確実に描かれています。どうか、そのあたりまで理解して、彼を分かってやってください。
確かに和也はスペック的にはヒーロータイプではありません。ステータスや容姿はいたって普通です。状況に流されてしまうし、視聴者(読者)にとって都合の良い決断はしない。だからクズに見えてしまう。でも、そこにはちゃんと彼なりの事情がある。そして日常レベルで考えたら、彼の誠実さや謙虚さ、優しさ、勇気はとっても素敵なんですね。
◆あいつ 悪いヤツじゃねーんだ 13話
飲み会で君が 和ちんを庇った時 思ったんだ
やっと和ちんの良さに気づいてくれる人が
現れたんだって
あいつ 悪いヤツじゃねーんだよ
きっと あんたのこと 最後は幸せにしてくれると思う
スペックは大したことない。でも和也がいい奴だと知っているから、木部くんはこう言ったんですね。
実は千鶴にも、そういう彼の良さは伝わってるんですね。だから千鶴はレンタル彼女として和也に協力するんです。それがアニメ1期です。
そして2期以降、失恋から立ち直り千鶴にガチ恋した和也は、マジでかっこいいです。決してスマートではないけれど、不器用だけど、一生懸命な彼の姿には憧れすら感じますよ!そのとき千鶴は何を感じるんでしょうね。期待しておいてください。
誤解5 レンタル彼女と客は恋人になれる
「彼女、お借りします」は、和也がレンタル彼女水原千鶴を借りるところからお話がスタートします。さらに、ふたりはおばあちゃんを悲しませたくないと、嘘の恋人を演じることになります。ならレンタル彼女と客の関係で出会った二人が惹かれ合って恋人になるんかなと予想してると思います。
ただ、実際はそう簡単にはいかないんですね。なぜなら、「彼女、お借りします」の物語では、レンタル彼女は決して彼女候補ではないからです。
レンタル彼女は、お客が本物の恋に向かえるまで寂しさを満たし、時には恋の相談を受ける、恋の応援役として描かれます。和也と本物の彼女を作ると約束したのは、それがレンタル彼女の役割だから。栗林君とのデートで描かれたように、千鶴自身もレンタル彼女を通して、お客の本物の恋を応援できることにやりがいを感じています。麻美との対決(アニメ1期12話)で、和也の恋心を麻美届けようとしたのは、まさにレンタル彼女のプライドです。レンタル彼女である千鶴は和也の恋を応援する立場なんですね。そのとき彼女候補になるのは千鶴ではないんです。千鶴自身も、そういう認識でいます。和也とは恋人になる気はありません…。
◆レンタル彼女と客の 恋愛なしの協定 原作32話
なにより、クリスマスの後千鶴が和也に忠告した通り(アニメ1期8話 原作32話)、レンタル彼女とお客の間ではプライベートな恋愛関係があってはならないんです。もしお客の和也が本気で千鶴が好きならば、千鶴は和也にレンタルをしてもらうことはできないんです。そう、レンタル彼女と客の関係でいる限り、千鶴と和也は決して結ばれない関係なんですね…。
皆さんが思っているよりも、このレンタル彼女と客の間の恋は難しいんです…。お互いが好きになればめでたく恋人関係に、というほど簡単な物語ではありません。そこには、常に「レンタル彼女と客」という関係が障害としてあります。でも、それが「彼女、お借りします」のオリジナリティであり魅力なんですね。そう理解して、アニメ2期をご覧ください。千鶴と和也に何かが起きます!
誤解6 出会った当初 水原千鶴にとって和也は嫌な客だった
これも誤解です。アニメ1話、和也との2度目のデートで水族館へ行った千鶴は、和也に暴言を吐かれてブチ切れます。その後、「彼女だ」と勝手に紹介されてしまう始末。私たちからしたら、千鶴がひどい迷惑を受けたように見えます。でも実際千鶴は、そんなこと思ってないんですね。その証拠に、このデートの後和也が☆5レビューを付けてくれたことを知って、満面の笑みなんですよ。
◆ははっ バーカッ 原作1話
レンタル彼女は、『彼女』としてお客の力になる仕事です。「家族に彼女を紹介したい」と言って、レンタルする人も多いんです(千鶴談)。なによりも超おばあちゃん子の千鶴にとって、和也がおばあちゃんを喜ばせたいという気持ちは痛いほど良く分かったんですね。だから、千鶴は特にそのことは怒ってないんですよ。あれだけの暴言を吐かれたことだって、和也がひどい失恋をしたってことが分かって許してしまったんです。だってレンタル彼女は恋の応援役だから、失恋した人が立ち直るのを支える仕事だからです。
すぐには忘れらんねーけど
せめて前向きに引きずってやる!
ばあちゃんにも謝って
いつかちゃんと 本物の彼女を連れてくる
最期にこう和也に言ってもらえて、レンタル彼女の仕事が気に入っている千鶴は嬉しかったでしょうね。千鶴にとって、和也はレンタル彼女冥利に尽きる、やりがいのあるお客なんです。
決して彼女が超の付くお人好しだから、高いプロ意識を持っているからだけで和也を許したわけではありません。彼の気持ちに共感し、楽しい時間だったから、そんなこと気にしなかったんですね。
◆自分うさぎかよって思ったら また呼んで! 原作1話
自分うさぎかよって思ったら また呼んで!
この言葉はリップサービスではありません。千鶴自身が、またレンタルして欲しいと思ったから言った言葉です。ふたりはドタバタ喧嘩しているように見えるし、期待に応えてくれない和也に視聴者はストレスを感じることも多いため、千鶴が和也を迷惑な客だと思っているように誤解されがちです。しかし、千鶴から見た和也像は、決してそうではありません。プライベートに干渉せず正規ルートで予約してもらえたら、千鶴は喜んでレンタルされてたはずです。
誤解7 水原千鶴は ダメな和也の面倒を見る 超お人好しである
これも明らかな誤解です。
「誤解4 主人公木ノ下和也はクズである」のところで、少し話しましたね。
確かに千鶴は、誰かの力になることが好きで、人の気持ちに寄り添える、お人好しタイプではあります。和也は情けないところや、甘さがあるキャラクターです。千鶴が和也の嘘に巻き込まれ、仕方なく協力することもありました。だから、千鶴ちゃんはすごく優しい子だからダメダメな和也の面倒を見ているんだと、理解してしまっていても無理はありません。
でも、千鶴がダメダメな和也を見て同情したから力になってあげたということは一度もありません。むしろ逆、千鶴にとって和也が素敵に見えたから、千鶴自身が彼の力になりたいと望んだから、協力したんです。
原作では千鶴の気持ちはちゃんと読み取れるようにと描かれています。おそらくアニメでもカットされていないはず。和おばあちゃんが和也の部屋に訪れたとき、隣に住んでいた千鶴が料理を持って挨拶に行ったのは、ダメダメな和也に同情したからではありません。千鶴自身が、和也のおばあさんを悲しませたくなかったからです。二人で泊まった旅館で「借りたいんだ 君のこと」という和也に「いいよ」と答え、その後「安心してっ 私が"彼女"でいる間は 放っておいたりしないから」と言って嘘の恋人を続けた(本物の彼女を作ると約束した)のも、和也からのお願いを断れなかったからではありません。海で助けられたときに彼が素敵な人なんだと分かり、千鶴本人が「和也と嘘の恋人関係を続けてみよう 和也の力になりたい」と思ったからなんです。栗林くんとのデート依頼も、仕方なく受けたわけではありません。「水原とデートしたら誰だって嬉しいだろ "彼女欲しい"と思うだろうし…」と和也に言われて嬉しかったから、友達想いの和也が素敵だったから受けたんです。
◆麻美との対決 和也の『幸せにすると誓った』恋心を麻美に届けようとする千鶴 原作49話
アニメ1期(原作1-50話)、千鶴はレンタル彼女と客という関係通して和也の良いところを知っていきます。視聴者にとってはクズに見えても、周りから釣り合っていないと言われても、千鶴には和也が素敵な男の子に映っているんです。彼氏合格!なんです。麻美との対決(アニメ1期 12話)で、麻美を引き止めたのは、千鶴にとって和也が大切な人だから、彼の恋心が尊く見えたからなんですね。
水原千鶴自身、なかなか本心を語るキャラクターではありません。ツンデレな千鶴は、「和也さんは素敵な人」とは言いません。だから視聴者には分かりにくかったかもしれません。でも、その代わり彼女は行動で示していたんです。千鶴は和也への好意を「レンタル彼女として力になってあげる」という形で示していたんですね。それが水原千鶴のデレなんです。
僕が、千鶴の気持ちにはリアリティがあると言っているのは、どうして和也の力になろうとするのか、毎回理由がちゃんと描かれているからです。千鶴の『気持ちの流れ』が丁寧に表現されているからですね。その中に、和也がダメダメで可哀想に思ったってのは一度もありません。詳しく知りたい人は、僕のブログ記事「1-6巻 水原千鶴の恋物語 満足度①」を是非読んでみてください。
和也というキャラ自体が誤解されやすいせいで、こういう誤解が生まれやすいと思うのですが。千鶴が和也に協力するのは、すべて千鶴自身がそう望んだから、和也が素敵だったからなんです。決して超の付くお人好しだったからでも、ダメダメな男の子が好みだったからでもありません。ただ単に、和也に惹かれていたからなんですね。
誤解8 和也は瑠夏をキープしている 振る決意がない
これも誤解ですね。和也、さっさと振るか付き合うか決めろよ!と簡単に言ってほしくありありません。
まず、和也は千鶴が好きで、瑠夏は好きではありません。そもそも付き合う気がないんです。振れるものなら振ってしまいたいんです。でも、そう簡単にはできない。なぜなら、瑠夏に千鶴がレンタル彼女であることや嘘の恋人関係を続けていることをバラされると困るからです。また、嘘がバレないように「瑠夏と付き合いなさい」と千鶴にお願いされているからです。
◆レンタル彼女の秘密がばらされてしまう! 更科瑠夏 原作25話
瑠夏ちゃんは和也に素直に好意を示すので、その可愛らしさ許してしまいがちですが、ふたりの恋人関係が嘘だとバラすぞと千鶴と和也を脅迫して、彼女(仮)にしてもらってるんですね。かなり自分勝手な子です。まぁ、でも、そもそもレンタル彼女と客の間ではプライベートな関係があることはルール違反なので、瑠夏ちゃんの言い分も正当性があるんですね。だから誰が悪者という感じでもありません。
読者(特に瑠夏押しの方)は、あれだけ素直に好意を示しているのに答えようとしない和也にストレスをため、「キープしてるなら早く振ってほしい。そうしない和也はクズ」なんて身勝手な解釈を彼に押し付けてしまいがちです。また、大好きな瑠夏ちゃんが、脅迫なんて酷いことをしているなんて認めたくないでしょう。でも、実際は、和也が瑠夏と別れられない最大の理由は、瑠夏に脅迫されているからだし、嘘がバラされないように千鶴に「付き合いなさい」とお願いされたからです。
もし無理に別れようとすれば、水原がレンタル彼女をやっていることがバラされちまう!
だから、瑠夏と無理やり別れることはできないし、瑠夏を怒らせないためにデートには付き合わないないといけないわけですね。どうか勝手に和也を優柔不断なキャラにしないで欲しい。和也の事情もちゃんと汲んであげてください。
誤解9 和也は勇気がなくて 千鶴に告白できない
これも誤解です。「君がいいっ 君が!」と言って告白した後、誤魔化してしまったのも、単に告白するのが怖かったからではないですね。実際はもっと複雑です。
◆彼女だろ? って言っても"レンタル"だけど 原作50話
まず一番大事なのが、嘘の恋人関係を続ける必要があったからです。千鶴と和也はレンタル彼女と客という関係で、恋愛も含めプライベートな関係はNG。告白どころがデートに誘うことも許されません。利用規約違反です。もし好きだと告白してしまったら、事務所のブラックリスト入り、出禁は確実です。レンタル彼女に告白なんて、あってはならないことなんです。そうなると、もう千鶴をレンタルすることも、嘘の恋人を演じてもらうこともできないんですね。それでは、おばあちゃんに「千鶴と別れた」と言わなければならなくなります。
次に、好きだと言ったらふたりで決めた約束や利用規約を破ったことになるので、嫌われてしまうと思っているから。「あなたそんな下心で私をレンタルしてたの!あなたと私はレンカノとお客!金輪際レンタルしないで!」と、大目玉を食らってしまうのが落ちです(和也視点ではそう見える、ということです)。
最後に、勝ち目がないなら、レンタル彼女と客の関係で千鶴とデートしたかったから、ですかね。和也にとって水原千鶴はまさに高根の花。ここで告白したところで、振られるだけなのは目に見えています。「君がいい 君が」は、彼女になってほしいと伝える決意をもってした告白ではなく、千鶴が素敵すぎて思わず感情が溢れ出してしまっただけです。そもそも和也に好きだと伝える決意はありません。誤魔化してしまって当然です。
私たちの感覚で、好きなら告白しちゃえ、といえるほどシンプルな状況ではないんですね。和おばあちゃんは和也にとって大切な人で、悲しませたくないんです。千鶴に嘘の恋人を演じてもらわなければいけないんです。お客がレンタル彼女に告白する(=プライベートな関係を求める)だなんてありえないんです。だから和也は、千鶴に好きだとバレるわけにはかないんです。
2期以降も和也はなかなか千鶴に本心を伝えることはできません。でも、そこにはこういった事情があるんだとご理解ください。和也と千鶴の間にどんな事件が起き、彼がどんな気持ちをエネルギーにしてこの状況を乗り越えて告白するのか。それが、このお話の最大に注目ポイント、魅力でもあります。アニメ2期を楽しみにしておきましょう!
誤解10 水原千鶴は和也と本物の恋人になりたいと思っている
うーむ。これは半分誤解で、半分正解ですね。でも、どちらかと言えば誤解です。なんじゃそれ!とツッコミたいところだと思いますが、詳しく見ていきましょう。
アニメ12話(原作50話)で、千鶴は和也から「君がいいっ君が!」と告白されます。しかし、すぐにレンタル彼女として「君がいい」という意味だと訂正されてます。
◆なによ さっきの ばーかっ 原作50話
◆ぷく顔 原作50話
すると千鶴は、ひとり部屋で「なによ さっきの ばーかっ」と残念がるような不満がるような表情を見せます。そしてぷく顔。
千鶴の和也に告白されて(一度は本気の告白だと思ってしまい)、ものすごく戸惑ってしまったわけです。麻美さんじゃなくて、私なの!?という感じ。この表情だけ見ると、まんざらでもないのか!?と期待して、続きが楽しみな方も多いと思います。
実際、まんざらでもないです。千鶴にとって和也は素敵な男の子に映っていますからね。小さいけれど『恋』をしていると言えば、そうなんです。でも、このとき千鶴が和也と恋人になりたいと考えているかと聞かれたら、それは明らかなNO。
彼に協力してるのは 仕事だから おばあさんたちを悲しませたくないから
和也の傍にいてあげるのも レンタル彼女として彼に協力してあげたいから
千鶴の頭の中の認識では、コレなんですね。千鶴は彼の力になってあげたいという気持ちが恋心だとは思っていないんです。自分の小さな恋心に気づかないまま、それがレンタル彼女として力になってあげたいという形で現れてしまっているとでも言ったらいいんでしょうか(【雑談】恋のようで 恋でない)。まだ、自分の気持ちが『恋』だと認識できるほど大きくはないんです。だからクリスマスの後、ふたりの関係が恋愛ナシの協力関係であるとはっきり決めてしまうことができたんです(アニメ1期8話 原作32話)。
同時に、このとき千鶴の和也への認識はこうです。
二人の間では恋愛なし
和也がイイと言ってくれるのは「レンタル彼女」の私
彼は私を好きではない
視聴者(読者)から見たら、和也が千鶴を好きなのは分かりますよね。あれだけ千鶴に対して分かりやすい表情を見せていたら、千鶴も和也の気持ちに気づいていそうなものです。でも実際には、そうではないんです。クリスマスの後、彼が「好きじゃねぇよ」と言ったから、和也は私のこと好きではないと千鶴は理解しているんです。あくまで和也が気に入っているのは、レンタル彼女としての私、協力者としての私、彼に恋心はないと思ってるんですね。
千鶴と和也は嘘の恋人関係、それは恋愛ナシが大前提。千鶴はあの日、和也と恋愛する気なんてさらさらないとはっきり言ってしまいました。和也には「好きじゃねぇよ」と言われてしまいました。仮に今後千鶴が和也を好きになって(恋心に気づいて)、恋人になりたいと願ったとします。でもそのとき、和也が自分のことを好きだなんて思える関係ではないんです。私と和也の間では恋愛はなし、瑠夏ちゃんか、麻美さんか分からないけれど、彼は他の誰かとの恋を見つけようとしていて、もし彼が本当の彼女を作ったとき選ばれるのは私ではないはずだ。千鶴はそう思っているわけです。またレンタル彼女である以上、お客さんをデートに誘うなんてできないし、ましては好きだなんて伝えられません。レンタル彼女と客という関係に悩むのは、千鶴も和也と同じなんですよね。
僕は、かのかりの魅力は、レンタル彼女と客の関係性から生まれる、水原千鶴と和也の「距離感の変化」と「すれ違い」なんだと言っています。「すれ違い」の意味が、なんとなく想像できたでしょうか。アニメ2期では、和也と千鶴の関係に何かが起きます!そこに注目しておいてください。
原作漫画勢の皆様、水原千鶴の視点で振り返る「彼女お借りします」レビュー&解説「水原千鶴の恋物語」もよろしくお願いします!