何方かのブログだったか、あるいは何かの書評だったか、読んでみようかなと思ったそのきっかけは忘れてしまったのだけれども・・・

 

 

気まぐれ図書館、今回のお題は『発達障害に生まれて』でございます。著者は松永正訓さんで「自閉症児と母の17年」という副題がついてます。

 

 

〈人の気持ちがわからない。人間に関心がない。コミュニケーションがとれない。勇太くんは、会話によって他人と信頼関係を築くことができない。それは母親に対しても同じだ。でも母にとっては、明るく跳びはねている勇太くんこそが生きる希望だ。幼児教育のプロとして活躍する母が世間一般の「理想の子育て」から自由になっていく軌跡を描いた渾身のルポルタージュ。子育てにおける「普通」という呪縛を問う〉

 

*中央公論新社:発達障害に生まれて

http://www.chuko.co.jp/tanko/2018/09/005115.html

 

・・・という内容です。

 

ウチの三女 V3 はウィリアムズ症候群でして、症状として微かに自閉傾向を指摘される場合があったり、また、広〜い意味での発達障害の範疇(知的障害)だったりという程度で、それほど思い入れしたり溺れたりすることもなく読み進める・・・はずだったんですが、うっかり一気読み。

 

これは正に、個別(もしくは特殊)事例であっても、それをきちんと突き詰めていくと一般に訴えるチカラを持つ、の良い例ですね。

 

副題にあるとおり、17年間の軌跡を順を追って記述してまして、母子が重ねてきた月日の、その折々に「あー、ウチもそういう気分だったなー」なんて思いました。

 

 

ということで、どなたが読んでも共感する部分が必ずあるとは思うのですが、今、V3 は18歳(もうすぐ19歳)ということで、やはりソコに近いところを、ちょっとだけ紹介いたしましょう。

 

最終章になりますが「19章 今日までそして明日から」からです。

 

 17年間、母は勇太君と一緒に今日まで生きてきた。大変な思いもたくさんしてきた。しかし今になって言えるのは、いや、今だから言えるのかもしれないが、自閉症児を育てるのはそんなにつらくはないということだ。我が子が自閉症と知って若い母親は泣くだろう。だけど本当は泣く必要なんてない。泣く理由は将来が不安だからだろう。(p231)

 

 

ホントそう。

 

でも例えば、年を取ってから言うのは簡単、けれど若い内に聞くのは大変。こちらの想いが刺さることは稀だと思います。むしろ別の方向に抉ってしまったりします。

 

 

 だから、障害児を持つ親には強く勧めることが一つある。それは障害児の親の仲間に加わることだ。健常児と交わることにこだわる親は、健常児と障害児の違いを思い知らされてつらくなる。福祉サービス、学校、就労、住まいの情報も入ってこない。家族会はたくさんある。最初にたくさん泣いたらそのあとは、ネットばかり見ないで家族会に実際に足を運ぶことが大事だ。子ども同士も遊び相手ができるし、親も交流を深めて情報を得ることができる。(p232)

 

これも、ホントそう。

 

いろんなこと、素直に聞くことはできなくても、感じることならできるかもしれない。

 

おなじ障害(症状)だからと言って、同じ道を歩むというものではないけれども、自分にも、自分の子供にも、ちゃんと未来がある、ということだけは確かめられると思います。
 

 

「あとがき」からも少し。

 

 

 私はこれまでに、先天性染色体異常児の家族と、自宅で人工呼吸器を付けている少年の家族に聞き書きをして本を上梓している。これらの本のテーマはいずれも障害の受容である。本書も、知的障害を伴う自閉症児の世界を描くと同時に、母親がわが子の障害を受容し、「普通」とか「世間並み」という呪縛から開放されていく過程を描いたつもりだ。(p252)

 

 

その「つもり」は、きちんと伝わってきました。

 

誰かの言葉や、何かの事件で、一気に進むようなものではなく・・・一本道ではあっても、右に左にふらふら、3歩進んで2歩下がる、みたいな・・・あるいは、螺旋階段をぐるぐると、同じ景色を何度も、けれども少しずつ角度を変えて見ながら上る、ような・・・障害の受容って、そういうものなんだろうな、なんて改めて思います。

 

 

 みなさんはこの本をどう読むだろうか? いろいろな読み方が可能だと思う。自閉症と直接関係がなくても、生き方に困難を抱えている子どもは多いはずである。そのことによって家族みんなで悩んでいることもあるだろう。そうした難しさに直面したとき、本書がそれを乗り越えるヒントになってくれれば嬉しい。(p253)

 

 

よくある締めの言葉ですが、はい、ヒントになりました。嬉しいでしょ、とか言って差し上げたいです。

 

 

 

 

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ちなみに松永正順さん、ヨミドクターというサイトで「いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち」と題するコラムを連載してました。興味ある方はどうぞ。

 

〈生まれてくる子どもに重い障害があるとわかったとき、家族はどう向き合えばいいのか。大人たちの選択が、子どもの生きる力を支えてくれないことも、現実にはある。命の尊厳に対し、他者が線を引くことは許されるのだろうか? 小児医療の現場でその答えを探し続ける医師と、障害のある子どもたちに寄り添ってきた写真家が、小さな命の重さと輝きを伝えます〉

 

*ヨミドクター:いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち(連載一覧)

https://yomidr.yomiuri.co.jp/column/inochihakagayaku/

 

 

もひとつ、ちなみに。

 

本の中で「母」と表記されているのは立石美津子さん。サイトを見ると、なんだかとっても変な人(Daddy 的には一応褒め言葉)でした。

 

*立石美津子オフィシャルサイト

http://tateishi-mitsuko.com/index.html