詩吟の会議や大会に参加するとき、特急電車を利用することが多い。

 

松本まで各駅停車で片道二時間以上かけて往復するより、片道一時間少々と、半分の時間で往復できる特急電車は、「時は金なり」の時代には嬉しい。

 

しかしながら、松本まで千二百円、往復二千四百円の特急料金がかかるのは、経済的に痛い。

 

 

 先週の日曜日に、松本での午後からの会議に行く時、南木曽駅を11時丁度の特急に乗り、松本に12過ぎに着いた。

 

8号編成の後尾の二両が自由席なのだが、7号車に乗って後部まで見て行ったのだが、二人掛けしている人は二人くらい。

 

他の二人掛けの席は全部一人だけで、通路側の席には荷物を置き、私が通っても知らん顔をして荷物をどけようとしない。

 

隣に座らないで他に行け!というオーラを出している人ばかり。

 

ほぼ往復して、乗った入り口近くに、荷物を置いていない席が有ったが、窓側に若い女性が座っていたので少し躊躇した。

 

しかし、大きめの荷物を足元に置き、座っても好いよ‥と言う雰囲気なので、有難く座らせてもらうことにした。

 

上松の手前辺りで一度その女性が席を立ち、戻ってきた時に席を立って座るのを待っている私に軽く会釈するので、「すみませんね。」「荷物を置いていない席がここしか無くて。」「女性の隣でどうしようか思ったんですよ。」と話しかけると、「ええ!大丈夫ですよ!」「私、木曽福島で降りますから。」

 

観光に来たという、爽やかな、きれいな女性だった。

 

 

 帰りは各駅停車になることもあるので、南木曽駅では往復乗車券と自由席特急券を買い、帰りの自由席特急券は松本で買って、松本を4時53分に乗った。

 

塩尻駅から大きなスーツケースの五十代くらいの男性が乗ってきたが、来る時より混んでいて二人で座っている席も多く、窓側の人が通路側の席に荷物を置いているため座ることが出来ないのだろう。

 

荷物を置いていない私の隣に座った。

 

走り出して少ししたら、反対側の窓側に座っていた若者が立って行ったので、トイレだろうと思っていたら、私の隣の男性がその席に移動。

 

「エー!!!」と思っていたら、案の定、戻ってきた若者は仕方なく後ろの方に移動して行った。

 

何も荷物を持たない若者だったので、ハンカチかポケットティッシュ一つでも置いて行けばよかったかもしれないし、その席に移動した男性も、他の空いた席に代えたのだろう‥ぐらいに思ったかもしれないが、それにしても考えればトイレだと分かるだろうにと驚いた。

 

しばらくして後方の指定席の方から乗ったので、自由席車両迄歩いてきたため時間がかかったのか、三、四歳くらいの女の子を連れた祖母と思われる六十代くらいの女性が来て、その女の子を私の隣に座らせ、自分はその隣の通路に立ち、動かない。

 

無視できるほど私は心臓が強くない。

「どうぞ!」と言って席を立ち、反対側の通路側の席に移動。

 

「すみませんねえ‥」と言う言葉はそれほど心が籠っていないので、最初から譲ってもらうのを期待していたのだろう。

 

しばらくして女の子が「おもち!おもち!」と言うと、大福餅を食べさせていたが、半分くらい食べておばあさんに返した。

 

飲み物を用意していないようで、甘いものを食べさせてそのままで好いのかな‥と心配になり、自分で買ったお茶とは別に詩吟の会議でもらったお茶が余分にあったのであげた。

 

やはり「すみませんねえ‥。」と言い、孫に「ありがと!って言って!」と言うが、自分からの「ありがとう!」は無かった。

 

女の子は無邪気で可愛くて、感謝して欲しくてやっているわけではないので好いのだが、南木曽駅までもう少し時間があったが、後方のデッキに移動した。

 

 

 今回は往復の列車の中で、人間模様を見させてもらって面白かったが、指定席なら否応なく隣に来れば荷物は置けない。

 

指定席より安い自由席で、荷物を置いて隣に人を座らせない人を、何とかする方法や対策は無いものだろうか。