「第1回 全国俳諧歌吟詠大会」に出席された長野日報社佐久秀幸社長のお祝いのことばを全文紹介させて頂く。


 お祝いのことば 伝統の重みと革新

       株式会社 長野日報社

       代表取締役 佐久秀幸


 数年前のことです。お笑いタレントが「吟じます~」を枕詞に、笑いのネタを詩吟として披露し、テレビのお笑い番組などで引っ張りだことなったことがありました。詩吟を愛する皆様にとって、ネタが下世話だったこともあり、伝統芸能を貶す(おとす)《不謹慎さ》が目立ち、不快感を持った方々が多かったことと思います。

 一方で、ネタの内容については、一考を要する必要があったと思いますが、「吟じます~」がテレビやラジオから頻繁に流れたことで、詩吟というものが身近に感じられ、特に吟に触れる機会が少なかった若い人たちにとっては、《新鮮さ》を持って迎え入れられた―という側面があったことも事実です。

 このお笑いタレントの祖父、父は詩吟の師範であり、自身も師範代の資格を持つほど、小さい頃から詩吟に触れてきました。父親がテレビで観た息子の下手加減に、「もっと研鑽を」と叱咤激励した―という逸話があります。

 詩吟は江戸時代に始まった日本の誇る伝統文化であることは紛れもありません。しかし、ともすれば、伝統文化に《革新》という新しい風を吹き込もうとすると、それは《異端》とみなされ、排除の理論が働くこともあります。

 全国から詩吟を愛する皆様をお迎えした中で、伝統文化を否定するつもりは全くありません。ただ、伝統文化を継承し、守っていくことに非常に心を砕かれていることを十分承知した上で、伝統文化を育成していくことに《決まったルール》はないのではないかと感じております。《革新的な息吹》を全否定するだけでなく、新しい時代、新しい芽を育てていくためにも、多くの意見に耳を傾ける真摯な取り組みが必要ではないかと思っております。

 今回、ここ諏訪の地に全国からつどった詩吟を愛する皆さまが、伝統の《重み》を再認識するとともに、新たな発見をしていただく機会になればと期待しております


「吟じます!」の天津木村については同感で、詩吟という言葉を広めてくれたのだから、これから本物の詩吟を教えていくのは、私たちの責任である。

後半部は、文化面にもあかるい外部のメディアの方々が、詩吟界ばかりでなく、伝統文化を継承する各団体をどう見ているかということでもある。


伝統文化に《革新》という新しい風を吹き込もうとすると、それは《異端》とみなされ、排除の理論が働くこともあります。

伝統文化を育成していくことに《決まったルール》はないのではないかと感じております。《革新的な息吹》を全否定するだけでなく、新しい時代、新しい芽を育てていくためにも、多くの意見に耳を傾ける真摯な取り組みが必要ではないかと思っております。


私も還暦を過ぎ、次代の若い人たちに対して、こうした気持ちで対処していかなければいけないと自戒している。