北のはじまりの土地【13】最後の晩餐 | 徒然コオロギ庵~旅する似顔絵師~

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一年の半分を旅に過ごす似顔絵師コオロギの日々の雑記。趣味の古墳巡り&地質巡り&車中泊アレコレetc徒然とだらだらと書き尽くします

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『浮き玉いらない?』


田中さんとクリオネにお別れしてビジターセンターのおじさんと共に戻る。


番屋や番屋の周辺にはごろごろとガラスでできた浮き玉が転がっている。


『昔はこれを使ってたんだけど、今はプラスチックのを使ってるからいらないんだ。よかったらあげるよ。』


ビジターセンターのおじさんにしきりに勧められるも、、

荷物になるし、持って帰っても使い道がわからない。。


という理由で固辞する二人。

田中さんの生活を見たせいか、妙に現実的になる(笑)


『じゃあ、鮭の稚魚に餌をやってみない?』


・・・このビジターセンターのおじさん、、なんかものすごく親切だね。。


ビジターセンターってこんななの?

こんな色々体験させてくれるの??


なんて思っていると、



『お客さんにやってもらうのってはじめてなんだけど、こういう体験もいいかなと思って。』


って!

我々が初めて!?


もしかしたらこのおじさん、最近初めて羅臼にやって来て、

『もっとたくさんの人に羅臼の素晴らしさを体験してほしい』

って思い始めて試行錯誤してたとこなのでは??


詳しい素性は聞かなかったけど、、そんな気がしました。



ビジターセンターの横にある原っぱの小さな小川。


その横に小さな小屋。




『おーい、餌やり、この子らにやらせてやってもいいかなー?』


ビジターセンターのおじさんは鮭のおじさんに話しかける。


『おー。』


と鮭のおじさん、なんのことかあまりわかってない様子ながらも、

バケツ一杯に入った鮭の餌と、ペットボトルを改良したスコップを持ってきて、、


餌のまき方を無言で説明してくれました。







スコップに餌を入れると、素早く腕を広げながらまく。


布が広がるように綺麗に水面に広がる鮭の餌。

餌に群がる稚魚たち。


『今日で最後だから。一杯まいてやって。』


???


今日で最後?何が?


こっちもよくわからないながらもバケツを受け取り餌をまいてみる。


おじさんのように素早く腕を広げると、、


ぜんぜん広がらない。

一ヶ所に飛んでいくだけ。



これはこれはなかなか難しいぞ。


手首にスナップをきかせるのか?


スコップの角度か??


量が多いのか???


わたしもやなさんもなかなか苦戦。


ぐちゃぐちゃなまき方ながらも餌に群がってきてくれる鮭の稚魚たち。





『今日で最後なんだから、もっとこっちの子達にもまいてやって。』



今日で最後??


『明日、この稚魚たちを海に放流するんだ。だから最後の餌。』


まじっすか( ̄▽ ̄;)( ̄▽ ̄;)!!


結構責任重大じゃない?


ひょっとしたら、海に出たら餌を食べることがないまま死んじゃう稚魚もいるかも??


最後の晩餐??


というか、鮭のおじさんが一生懸命育てた稚魚たちとの最後の食事、

我々がやっていいの??



みょうな罪悪感を抱きつつも、思いがけず任された重大任務を完遂すべく、

食べ漏れする子がいないように一生懸命まかせていただきました。


『この鮭たちはいつ頃戻ってくるんですか?』


鮭といえば回遊魚。

私のまいた餌を食べた鮭が戻ってくるのを見てみたい!

と聞いてみた。


『4年後だな。』


って。。

4年か。。


なかなか。

来れそうで来れなさそうな、、ね。


まぁ、何を隠そう魚では一番鮭が好き!!


この稚魚たちとの再会なるか!?

この稚魚たちを食する旅日記は実現するか否か!?


乞うご期待(笑)!!!



と、思いがけず知床の羅臼昆布と鮭のおじさんに出会って少し考えてみた。


私は大学で地理学を専攻したんだけど、

地理学を専攻した理由というのが、

1つは旅好きなこと。

2つめは身近に阪神大震災を経験したこと。

3つめは高校の地理の授業で先生が言った言葉が胸に動かされたこと。


その言葉というのは、

『南アフリカ共和国が金の産出量が一番なのは、南アフリカ共和国に金が一番埋っているからではなく、

安い労働環境のもと、安価な人件費でたくさん産出できるという社会的背景があるから。』

まぁ、あれから15年くらい経っているから、状況は変わっているだろうけど、



数字では見えないものがある。


ということを学んだんだなー。


数字の裏側が見えるから、、旅は面白いね!



羅臼の昆布も、

田中さんら昆布の番人あっての羅臼の昆布なんだなー!!


羅臼の鮭も、おじさんの親身な餌やりあっての羅臼の鮭なんだなー!!

・・・・なんか違うか(笑)??



今回の北海道旅日記のタイトルを『はじまりの土地』としたのは、

少し前の回に書いた『人間が住んでいる限られた土地の方こそ【地の果て】ではないか?』

と思ったことと、


羅臼昆布や鮭だけでなく、肉や魚介類、野菜に乳製品などなど、食材の宝庫北海道。


田中さんたちのように厳しい環境で働いている方がいるからこそ生まれる食材たち。


我々の命をつなぐ素晴らしい食材たちの生まれる場所。



そんな北海道に敬意と感謝の気持ちを込めて『はじまりの土地』としたのです。


とても『地の果て』なんて言えないよね。。


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