再掲 いつカク 13

「愛しい風」

 

 

 

このカクテルも、「いつ夕」に登場しませんが、

 

母と、カンパリに纏わるオリジナルカクテルなので紹介させて戴きます。

 

一矢が述べている通り、

 

俺が25歳の時に、母は49歳で逝きました。

 

母は、「人生五十年。ぽっくり逝きたい」と言っていましたから、

 

その通りに逝ったわけで、驚くほどのことはないのかもしれませんが、

 

母の訃報を、旅先の沖永良部島で知った時は、ショックでしたね。

 

雇い主に報告し、

 

(旅費稼ぎに、ユリの球根の選別作業のバイトをさせて戴いていました)

 

身の回りを整理してからだったと思いますが、(記憶がないのです)

 

海を見に行きました。

 

実感は湧かないものですねえ。

 

実感が湧かないものは仕方がないや、

 

と、ぼんやり海と空を眺めている時に、

 

ふと、頭の中に流れたのが、「愛しい風」 でした。

 

「夏が ゆくよ  虹の影の下を  星屑をひき……」

 

母は八月八日生まれ、夏生まれでしたから、

 

「夏が  逝くよ」

 

と、感じられたことは覚えています。

 

母が好きだったジュリーの「勝手にしやがれ」の歌詞のように、

 

「あばよ」と、さらりと葬送ってみるか……。

 

なんてことも思いました。

 

「愛しい風」

 

 

旅を終え、再び「ログハウス」で働かせて戴けるようになって、

 

暫くしてから、このカクテルをつくりました。

 

喪失感、爽快感ともつかない、云うならば、「爽失感」ですかね、

 

あの時の感覚をカタチにしたかったのでしょう。

 

白ワイン、カンパリ、ソーダ、トニックウォーター、レモン。

 

夏の終りに相応しい、さらりとした味わいです。

 

後に、イタリアのヴェネツィアで、このカクテルに似た

 

「SPRITZ」という名のヴェネツィア生まれのカクテルを知りました。

 

こちらの方は、カンパリのみならず、アペロールを主体に使うそうですし、

 

色々なバリエーションがあるようです。

 

 

 

「次の星で  また巡り逢いたい……」

 

「いつ夕」の八日目、城山での、ヨシ君の願いに通ずるかと思います。

 

それは、そのまま俺の願いでもあるのです。

 

 

日日好日

 

 

そして、

 

暁をまちながら