潜在意識の防衛本能と除反応の痛み

先日、ある方から「催眠状態では潜在意識が守ってくれているのに、催眠療法を行うときに、なぜ除反応からは守ってもらえないのか？」という質問をいただきました。

そのときは時間の制限もあり、満足のいく回答を返せなかったので、ここに書きたいと思います。

このブログにも何度か「潜在意識は自分という個体を守るために存在する」と書いてきましたよね…

除反応というのは、過去に受けた心の傷が表面化されるときに伴う苦痛のことです。

たとえば、7歳の少女が学校の帰り道、変質者の手によって性的暴行を受けたとします。

少女は自分に起きたこの出来事があまりにも残酷すぎて受け入れることができない。

しかし、現実に起きてしまった悲惨な出来事は、無かった事にもできません。

現実をそのまま受け入れてしまうと、成長途上の少女の心は完全に壊れてしまいます。

そこで潜在意識が心を壊さないためにとる防衛手段は、外に出すことができない現実を、内側の奥底に沈めてしまうことなのです。

わかりやすく言うなら、心の危険を感じる部位に留まっている状態がもっとも苦痛を感じるのであって、中間ではなく、ストレッサー（ストレスの元）を外側か内側の奥かに移動させることで苦痛からは解放されます。

しかし、この場合は内側の奥底に仕舞い込まれたストレッサーは未解決のまま心の中に存在しています。

これがトラウマの核になるわけです。

少女はその出来事だけでなく、その日一日の記憶ごと沈めてしまったり、その周辺の記憶ごと沈めてしまうこともあります。

それでも、潜在意識は自分の中に入り込んだ未解決の問題に対し、解決するまでいつまでもこだわり続けるのです。

身体で説明するなら、悪い部分があると、それを取り出すまで治らないのと同じです。

悪い部分を取り除くとき、麻酔をして手術を行います。

催眠療法も同じです。

幹部に到達するために催眠分析などを行います。

しかし、残念なことに、外科手術と違って、心にはまだ麻酔薬がありません。

だから、取り出すときにはもろに苦痛を味わってしまうのです。

心の奥底に仕舞い込まれたストレッサーは、心の成長と共にいつか必ず表面意識に返してきます。

これは、ストレッサーを仕舞い込んでいる間は楽ではないからです。

潜在意識がストレッサーを抑圧している状態と言えばわかりやすいでしょうか…？

抑圧をかけている力は徐々に弱まり、心の成長と共に潜在意識が預かっていたストレッサーを返してきます。

このときに心身症の症状が顕著に出てくるわけです。

だから心の奥底に仕舞い込まれたストレッサーが抑圧から解放されて外に出るとき、それが症状であれ、催眠療法の治療であれ、必ず苦痛を味わう部位を通過するのです。

これが除反応ですね…

除反応を出してしまうまで心は治りません。

しかし、心に適応できる麻酔もありません。

手も足も言葉も持たない潜在意識は、感情や感覚で感じ取り、感情や感覚で意識とコンタクトをとります。

つまり、苦痛事態がその人を守るための大事なセンサーになっているわけです。

だから、除反応を相手にしたとき、少しずつ少しずつがキーワードになるのです。

この少しずつ除反応を出す手法が催眠療法士の技量であり、『系統的脱感作』という技術になります。

催眠療法士がもっとも重要視しなければならない技術です。

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