配慮のない心理誘導と本末転倒

去年の暮れに、本末転倒（ほんまつてんとう）について書きましたが、今回も少し本末転倒について書きたいと思います。

うちもいくつかの企業と付き合いがあり、ネットに関するいろいろな情報が入ってくるのですが、4年後のネット上は85パーセントが動画になっているという情報が入ってきました。

どこまで情報通りになるかは定かではありませんが、ネット上の動画の量が日進月歩で増えているのは間違いないようです。

それもYouTubeをはじめとする動画サイトの影響だと思いますが、動画サイトの繁栄に反比例してテレビの需要が減ってきているのも確かなようです。

動画サイトの映像が観たいものを末端まで絞れるのに対し、テレビはほぼ製作者側に操作されてしまいます。

ある程度チャンネルを自分で選択してはいるものの、その映像の中には戦略的な映し方をしているものも少なくありません。

CM（コマーシャル）の入れ方なんかがそうですね。

いつ頃からか、バラエティー番組やドラマなどの一番いいところでCMが入ることが当たり前のようになってきました。

これはCMの間にチャンネルを変えられてしまうことを防ぐテレビ側の戦略だそうですが、スポンサーのほうもCMを観てもらわないと意味がないので、こういったCMの入れ方をしないとダメだというスポンサーも少なくないようです。

ただ、視聴者に与えるストレスがあまり強くなると、視聴者なりにストレスを回避するようになってきます。

たとえば、DVDプレイヤーを使い、リアルタイムで観ることができる番組をわざわざ録画してCMを飛ばしながら観たり、自分が観たいものだけを観るといった動画サイトの観覧だったりするのです。

これぞ本末転倒というもので、肝心のCMをまったく観ない視聴者がどんどん増えていくわけです。

追い込みすぎるとそのエリアそのものから逃げてしまうというのは、催眠のテクニックにもありまして、ダブルバインドなんかがそうですね…

ダブルバインドというのは、選択肢をふたつ与えて相手に選ばせます。

相手は自分の意思で選んでいるのですが、どちらを選んでも誘導者の意図した通りになってしまうという心理テクニック…

わかりやすいところで説明するなら、異性をデートに誘うとき、たとえば「恋人としてデートするのと友達としてデートするのどっちがいい？」という言い方をします。

誘導者の側からすると、デートができればいいのだから、どちらを答えてもデートができるわけです。

自己暗示の父といわれたエミール・クーエは、「人間は同時に二つ以上のことで迷うことはできない」と言っています。

ということは、恋人としてか友達としてかで迷っている間は、デートするかしないかでは迷えないということです。

つまり、ほかの部分（恋人としてか友達としてか）で迷っている間は、デートをすることをすでに前提として受け入れてしまっているのです。

これがダブルバインドの原理ですね。

しかし、ダブルバインドを仕掛けたからといって、相手に逃げ道がないわけではありません。

どちらを選んでもストレスが強い場合はダブルバインドというエリアそのものから出ていくという選択もあるわけです。

心理誘導というのは、相手の状況や心境を考慮していないとうまくいきません。

催眠の第一歩は相手を観ることから始まります。

同じダブルバインドを仕掛けるにしても、相手が心を開く前に仕掛けるのと、心を開いたあとで仕掛けるのでは、結果が違うのは当たり前ですよね…

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