夏目漱石著「吾輩は猫である」、
終盤は文明論に終始する。
自己の発見と、その自己との限りない戦い、
明けても暮れても自己から逃れられない苦しみの連鎖、無間地獄
それが文明の本質で、もはや自然と相容れない悲しい存在と化してしまった哀れな人間。
この苦しみから逃れるには死しか選択肢はない、という結論に至る。
まさに現代、いまではないか。
常にそこ、死に自らを追い込まないではいられない生とは果たして何か?
そのうち死といえば、それは自殺を意味することになる、
とまで言わせるけど、なるほど抜け道はないのか。
せめて月を眺める無心を希求する刹那。
苦しんで苦しんで死をもとめる生ならば、
苦しむのはもう止めにしようと思うのは至極自然そのもではないか。
そう「吾輩」は悟るとき、
悪足掻きはすまいと静かにこころ決めるのだ。
そして「吾輩」はビールを飲んで甕に落ちた酔った体から、
次第に抗う力を抜いて自然に身を任せる。
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