やがてすすり泣く声が聞こえてくる。
本当の長い夜はそこからはじまる。
『お大事に』と言い放たれた言葉が、
深夜の病棟を行き場もなく漂いはじめる。
何度目を覚ましても、まだ夜のままなんだ。
永遠に明けない夜がやって来たのかもしれない。
そしてそれが空恐ろしくなる。
『いつ頃退院できそう?』
屈託ない笑顔できいてくる丈夫な者たち。
そんな事わかれば苦労はない、そう言いたかったけれど、
一番知りたいのは自分だ、そう言いたかったけれど。
面会の家族や友人や同僚が立ち去った後の病棟では、
やがてやり場の無いため息が満ちてゆく。
明けない夜なんかないと信じていたあの頃の自分が、
懐かしくて情けなくて泣けてくる。

