「子供も読めるでしょうか?」
月に一度、親しい友人たちと読者会を開いているのだが、
その席で参加者のひとりに訊ねられた。
表紙の絵がかわいくて、小学生のお嬢さんにいけるかなと思ったらしい。
うーむ。小学生にはまだまだ早いと思うのだ。
それよりも、お母さん、あなたご自身はどうですか?
シリーズもなんと20巻目である。
人気の秘密は何よりもまず主人公アガサの人となりだろう。
強烈。
そして、なんかかわいい。
アガサの日常は「やっちゃう」にあふれている。
件の読書会にアガサのファンがいるのだが、
彼女はシリーズの1巻目のアガサにやられてしまったのだ。
「村のキッシュコンテストに、大人気店のキッシュを自分のものとして出す?!」
よほど強い印象だったのか、彼女はアガサを語る度にその驚きを語る。
シリーズ最新刊でもアガサの「やっちゃう」行動力は遺憾なく発揮されている。
休暇にイスタンブールに行く。
さる人を驚かせたいために、特に興味のない戦場跡を訪ねるためだ。
「どうしてあんな馬鹿な真似をしてしまったんだろう?」 (20頁)
そして、さんざんな目にあって、激しく落ち込む。
最新刊ではさらっと書いてはあるが、シリーズ20巻の間には、
アガサがベッドで涙を流したことが多々あると、読者は知っている。
アガサはほれっぽく、すぐ出会った人の妻になることを想像するのだが、
その空想っぷりがかわいらしい。
(アガサはコッツウォルズに住んでいる)
アガサは50代である。
人は50代になるのだが、なってみたら戸惑いも多い。
なんせ初めてなるのだから当然なのだけれど。
若さっていいなと強く若者に嫉妬したり、
医者から股関節の手術を勧められたり、
自分が時代遅れになっているかとおびえたり、
アガサがしているのを見ると、
「この年代になると、そういうこともあるんだ」と知っておける。
一方で、「やっちゃう」アガサを見て、
「あ、これをしてもいいんだ」と、自分に要らぬ規制をかけていたことを知る。
そして、乙女な空想をするアガサに、
自分もこんなかわいいところを大切にしようと思える。
(いや、既製品を自分のものとして出品したり、
既婚者がアガサを見習って浮つくのはどうかと思うけれども。)
だから、アガサのシリーズを勧めるのは大人の女性である。
シリーズ20巻目を記念して、巻末にシリーズファンの応援コメントが載っている。
13人のファンの熱い思いだが、皆、シリーズ最初からはまってしまったようである。
読むこちらも「私も私も」と何度もうなずいてしまう。
シリーズはどれから読んでもかまわない。
はまったら全部読みたくなるから、どれから読んでも同じだ。
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※シリーズ20巻記念の読者プレゼントがある。
応募は2024年2月29日締切。
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