小説と書いてロマンと読む。

 

 

ニューヨーク在住のベストセラー作家、

フローラ・コンウェイの3歳の娘がいなくなった。

誘拐か? それとも・・・・・・?

 

始まりはこうである。

あなたのようなすれっからし――ではなく、

練達の読書家ならば「はいはい、あれね」と予想するだろう。

 

・混乱状態の後についに現れた人物が、名探偵ぶりを発揮して娘を連れ戻し、

「犯人はあなたです!」と指摘する。

 

・娘がいなくなった母親の苦悩を綿々と描き、

彼女と彼女を取り巻く社会の混乱と、現代社会の問題を暴き出す。

 

どちらもちがう。

「じゃあ――」

ちがう。

「だったら――」

ちがう。

どの予想ともちがう世界がその後に広がっている。

 

読みながらたびたび頭に浮かんだのが、遊園地の乗り物である。

ぐるぐる回されたり、上下左右にふりまわされたりする類だが、

眺めて自分がどうされるか知っていたはずなのに、

自身がぶんまわされると想定外の動きに「きゃ――」と悲鳴をあげてしまう。

外から見るのと、乗ってみるのは大きなちがいだ。

 

ミュッソを読むのはそれと同じだ。

『予測不能な真相とは?』

帯には書かれているのは、使い古された言葉である。

「たいていの展開、たいていの真相は予想がつくよ」

そういうあなた!

これは予想外だから!

 

 

パリ在住ロシア人社会の歴史的な信仰の場である聖アレクサンドル・ネフスキー大聖堂の存在は知っていたが、足を踏み入れたことはなかった。(212頁)

 

感心しきりなのは、文庫裏表紙にある紹介文である。

誰が書いたか知らないが、きっと編集のどなたかだろう、

プロの手腕とはこういうものかと舌を巻く。

こんなわけのわからない小説を、よくここまでうまく紹介したものだ。

大丈夫。これで86ページまでだから、ネタバレにもならない。

Amazonなら概要、楽天ブックスならば内容紹介のところで、それを読むことはできる。

 

くわえて、表紙もいい!

読み終わる頃に、読者は何度も見て頷くにちがいない。

「ああ、なるほど・・・・・・」

作者ミュッソと編集の腕が光る一冊である。

 

紹介文と表紙を見たくなった方はこちらへ。

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