続きが読みたいのか読みたくないのか、はっきりしなくなってしまった。
だって、特捜部Qが次回で最終回だなんて!
シリーズは最初から10作構成で考えられていたという。
読者もわかっている。
ローセの過去が描かれ(『自撮りする女たち』)、
アサドの過去が描かれ(『アサドの祈り』)、
そろそろ主人公カールの番かなと予想はつく。
見れば本作の帯に書かれているではないか。
『あの未解決事件がカールを追いつめる』
ああ、ついにあれだなと、シリーズ・ファンは頷くだろう。
「ステープル釘打ち機事件」と呼ばれるあのあれだ。
シリーズ最初から時々出てくる、真相のわからないあの事件だ。
あのあれが、ついに! と思って読み出したら――拍子抜けするかもしれない。
過去のことが出てくるのだが、あのあれではない。
ヤコプスン課長がずっと引っかかっていた、30年以上前の出来事である。
事故だか事件だかもはっきりしないこれを、
もう一度調べようというところから話は始まる。
調べるのは、特捜部Qの面々だ。
ローセ、アサド、そしてゴードン。
どこから手を着けるか、どうやって調べていくかを見るのが興味深い。
カールと彼らのやりとりが楽しい。
カールの、口には出さない文句がおかしい。
調べて出てくるものが重くとも、彼らの様子で笑うことができる。
『じゃあ、便秘になったときはお知らせください。本物のイラクコーヒーをお淹れしましょう。
生涯忘れられないような体験ができますよ』(49頁)
原題は『Natrium chlorid』――『塩』だそうだ。
何がどう塩なのかは、読んでのお楽しみだ。
そして、あのあれは、ステープル釘打ち機事件は、出てくる。
ちょっと遅れて出てきて、たしかにカールを追いつめてくる。
ああ、これは・・・・・・次も読まなくてはならない。
楽しみにしてとは言えないが、待っている。
心待ちにしている。
それまでは、シリーズを読み返していようか。
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