いやー、びっくりした。

30ページまでに『○丸』という単語が出てくる。

睾○が!

2回も!

 

 

 

『人目を気にせず睾丸の位置を整えることができない気がするのだ。男が自宅のキッチンでできてしかるべきことを。』(14頁)

 

といっても、やらしいことが理由ではない。

上記のように、極めて男らしい――おっさんらしい理由だ。

書いたのはどんなおっさんだろうと、巻末の著者近影を見てみたら・・・・・・

女性だった。きれいな女性である。あらまあ。

 

 

主人公カル(カルヴァン)・ジョン・フーパーは、もとシカゴ警察の刑事だ。

退職して、一人アイルランドの田舎に移ってきた。

ボロ家を修理しながら住んでいる。

野菜気がまったくない食事をし、好きなカントリーを聞き、

睾丸の位置を整え、隣人にからかわれ、クッキーをねだられ――

絵に描いたような男の一人暮らしである。

そこに地元の子どもがやってきた。

やっかいな頼みごとと共に。

 

「浸して食べてみろ。紅茶に。マシュマロは柔らかくなるし、ジャムは舌の上で溶ける。こんなにうまいものはほかにない」(35頁)

 

ミステリーやサスペンスに重点をおいて読むのは大はずれである。

なにせ長い! 700ページ近くある!

話が動き出すまでも長い。

 

主人公はアイルランドである。

そう思って読むのが、きっと正解だ。

『カルはこの地の雨が好きだ。攻撃性はいっさいなく、窓を通して届く一定のリズムとにおいがこの家のみすぼらしさをやわらげ、居心地のいい家庭という雰囲気をもたらしてくれるからだ。』(56頁)

『芝地に寝転んで満天の星を見上げると、まるで空一面にたんぽぽ畑が広がっているようだった。』(326頁)

折々描かれる風景の描写が素晴らしい。

カルが惹かれ、魅せられたのも当然だ。

そして現れる人もいちいち魅力的だ。

『あの子なら、いつだったか店へ行ったときに助けてくれたよ。その食器洗剤じゃだめ、手はかさかさになるけどお皿はぴかぴかにならないわ、と言って、梯子を上がったらお勧めの食器洗剤を取ってくれたんだ。・・・・・・』(370頁)

『外国で離婚やら同性愛者やらが多い理由の半分はスパイスだと、母はよく言ってた。スパイスが血液に入り込み、脳みそを腐らせるってな』(266頁)

 

カルと同じに、我々も、

アイルランドの田舎村に魅了されようではないか!

 

ミヤマガラス

 

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