歴史小説の評論家でもある細谷正充先生が選んだ女性歴史小説家のアンソロジー第二弾です。
今回のテーマは「猫」です。(あー、東雅夫先生が編著している「猫のまぼろし、猫のまどわし」はまだ途中でとまってます こちらも面白いのですが、他の本に浮気をしてしまった結果後回しに)
「ねこだまり<猫>時代小説傑作選」 細谷正充編
「お婆さまの猫」 諸田玲子著
「包丁騒動」 田牧大和著
「踊る猫」 折口真喜子著
「おとき殺し」 森川楓子著
「猫神さま」 西條奈加著
「だるま猫」 宮部みゆき著
以上の六編の短編集になります。宮部さんの「だるま猫」はすでに既読でしたので、他の作品が初めて読む作品となりました。
現代に通じるテーマを持った作品もあり、江戸時代は今よりも福祉は充実していたということも聞くのですが、少し疑問符もわいてしまったところもあります。(これは後日、改めて調べたいと思っています)
気に行っているのは諸田先生の「お婆さまの猫」と西條先生の「猫神さま」です。
ともに世の中の偏見って変わらないなと思わせて、そうしていながら最後に安堵させてくれる短編でした。
「お婆さま猫」は「狸穴あいあい坂シリーズ」の中の一遍だそうです。主人公の結寿が嫁いだ先には夫の祖母(実際は祖父の従姉)がいるのですが、離れに一人住んでいて、すでに周囲のことがよくわからなくなっているため、結寿と髪結いの徳四郎しか訪れない。そのお婆さまが大事にしているのが飼っている猫。
その猫がいなくなってきたことから起きる騒動を描いたものなのですが、そこには老いの問題であったり、人のつながりの問題が浮き彫りにされるのですね。そして物語の最後を迎えるわけですが、それが救いになることがうれしいと思う一作でした。
「猫神さま」は掏摸やかっぱらいで食べていた十五人の孤児が今ではまっとうな商売をして生きているという「はむ・はたる」という連作シリーズの一遍だそうです。
この話は雨の中で一人の少女が孤児の一人である三治に助けられることから始まります。話を聞けば、この少女おのぶは安曇屋という繭玉問屋に奉公しているという。けれど店で大事にしている猫神さまがなくなり、それを盗んだという疑いをかけられているという。
おのぶがいう「おとっさんが泥棒をしたから」という言葉が重たい。親が泥棒ならば、その子は泥棒なのか、今も変わらずそういうことをいう卑しい人間がいます。それは違うと抗う、三治とおのぶの姿がまぶしい一遍でした。
他の作品もどれも面白かったんですが、特にといわれてしまうとこの二作になってしまいます。
そして、最後を飾る一作は宮部みゆきさんの怪談です。これは何を語ってもネタバレになってしまうので、読んでくださいというしかないのですが、今回再読して、改めて怖いわぁと。(この短編が収録されている文庫をすでに持っているんですよ)
でも面白い。
こちらは2月に出たもので、今月は「もののけ」ということで楽しみです。小松エメルさんの作品も収録されていますので
細谷先生、昨年操觚の会のライブワイアーの伝奇小説の時にお会いしましたが、どれくらいの量の本を読まれているのでしょうか。知りたいです。
疲れた心にじんわりしみとおる話もあれば、背筋が寒くなる話もあり、楽しかったです