なんで先に読み終えてしまった!?「AX アックス」 | 風信子 

風信子 

 いらっしゃいませ。こちらは読書日記中心のサイトになります。本を好きな方が一時楽しんでくだされば嬉しいです。

 伊坂幸太郎さんの「殺し屋シリーズ」の最新文庫。

 今回は殺し屋でありながら恐妻家である兜というコードネームの人物が主人公。

 

「AX アックス」 伊坂幸太郎著


image

 このところ、ずっと時代小説とか、ファンタジーとか、推理ものばかり読んでいたような気があせる

 伊坂さんの本は「チルドレン」を読んで以来だわ。(あのシリーズも大好きなのですが)

 

 あちらは少年犯罪ですが、こちらは殺し屋ということで、物騒なんですけどね。

 

 兜は凄腕の殺し屋なのですが、妻の機嫌を損ねることが何よりも嫌なんですね。その辺りを息子に突っ込まれていたりもするのですが。

 

 小説の始まりが、仕事を終えて、家に帰ってカップラーメンでも食べるんだろうと殺し屋仲間である檸檬に言われた兜が、カップラーメンなんて食べられるかと返すところからはじまります。

 

 読みながら、そうだよね。こんな仕事の後にカップラーメンなんてと思っているといきなり裏切られるのが伊坂ワールドですねぇ。

 

 なぜかというと、夜中に帰ってカップラーメンの包装をはがしたら、その音で妻が起きてしまうと、??、と思いつつ読みつつづけていくとそれだけでも大変なのに、お湯を注ぎ、麺をすするなんてと話は続き、では一番安全な食べ物は魚肉ソーセージだと話が流れていくのがいい。

 要するに奥さんが目を覚まして機嫌が悪くなるのが怖いのですよ。

 

 ま、どれだけ奥さんに気を使ってるんだとも言えますし、きちんとした会社員でもある兜なので、そっちで生きていけばと思うんですが、そこはできないのはシビアですね、相変わらず。

 

 感想を端的に語ってしまえば、家族を大事にしている男の物語になるのでしょう。ですが、彼が殺し屋である以上、大事にしている家族を自分が壊す可能性があるわけで、そこから逃れようとあがく物語でもあります。

 

 一見、滑稽で、それでいて切ない物語でした。

 

 こちらは単体で読むというよりも「グラスホッパー」から読んでいったほうがわかりやすいと思います。登場人物も重なるところがありますから。

 

 ベストセラー作家として、あまり大きな問題提起をしていないように見える伊坂さんの小説ですが、そこには必ず現代が抱える問題が含まれていて、私はそこが大好きなんですね。そして、同じ大江健三郎ファン(というのはおこがましいですが)としては、登場人物の名前の付け方が若いころの大江さんの小説のようで好き♪

 

 恐妻家というよりも家族のために兜がどのような選択をしていくのか、そして、何も知らない妻と息子とのやり取りが面白い反面、こういう問題もあるのだろうと思わせるのはさすがです。

 

 いやぁ、次の作品も楽しみです音譜

 

 そして、ああ、同時並列で読んでいるのに、どんどん後から読む本に追い越されていく本たちえーん

 同じように読んでいるんだけど、なぜだ! 多分、ページの文字数や行数も違うからなんでしょうね。という言い訳。

 

 大丈夫、金曜日は時間が取れるはずだから、大きめのカバンで父の付き添いについていこう。(何が目的はわからなくなってますね。でも、検査中は何もすることないのでね)