女性という立場って「駒姫 三条原異聞」 | 風信子 

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 あまりにも有名な最上の駒姫の物語。

 東国一の美女というだけでまだ十五歳の身で豊臣秀次の側室になるために聚楽第入りをする駒姫、だが秀次は既に秀吉の手により謀反のを理由に切腹していた。顔も見たこともない男の側室になるために聚楽第に入っただけなのに、死罪を言い渡される駒姫。

 彼女と彼女に付き従う御物師おこちゃ。この二人を最上の男たちは救い出すことはできるのか!?

 

「駒姫 三条河原異聞」 武内涼著

 

 

 

 歴史でも秀吉の晩年は一体どうしてしまったのかという感じの政治でしたが、その最たるものがこの甥と甥の妻子に対するこの所業でしょうね。

 

 後継ぎに恵まれなかった秀吉が老いてから得た子供に執着する気持ちはわかるのだけど……。

 

 この方は初読みでしたが、勢いついて、というか先が気になって読み終えるのは早かったです。

 まず秀次が高野山に蟄居させられてところからはじまり、場面が変わって最上から京へ上洛する駒姫たちののんびりとした旅路が描かれていくのですが、彼女が聚楽第へ入ってから物語は急変します。

 

 謀反を起こしたと(この辺りは完全な老人あるあるで、自分が図ったのに、実際に謀反があったと思い込み>_<)それを知った秀次の妻子もまた遺恨の種になると秀吉が、ご存知のように死罪を命じるわけなんですね。

 ここで心打たれるのが、駒姫のまだ十五歳でしかないのに、短い日々を共に過ごした秀次の正室や側室と身を共にしようとする潔さ。そし最後までそんな駒姫に付き従うおこちゃの姿なんです。

 

 秀吉は恐怖で周囲を縛り上げようとするのですが、それはやはり無意味なことで、結果が豊臣家の滅亡。

 先日、読んだ今川家の物語「義元、遼たり」「氏真、寂たり」ではないですが、家が滅んでは仕方ない。家を存続させていくにはどうすべきなのかという思考がなかったんですかね。

 

 天下を支配しても、あとから来るものに怯えて、周囲に死体をまくような政治は間違ってますしね。それはどこの国の歴史でも同じこと。

 

 それに政に女性が男性の思惑に振りまわされる姿はやはり哀しい。死に近くなるにつれて、周りのことを思いやり、和ませてゆく幼い駒姫の人生にそう思ってしまいました。

 

 手に汗を握りながら、読みふけってしまいました。お勧めの一冊です。