PTA退会後、よく言われる「実費請求」

これ正しいようで、実は仕組み上不可能です。

うちのPTAがやろうとしていたので、以下のお手紙を渡したところ、実費請求はなくなりました。



(1)「配布物の希望を確認する」

ア 個人情報

 PTAが持っているのは会員(子)の個人情報のみです。非会員の個人情報は持っていないため、非会員を特定し意思確認を取ることは不可能です。知り得ない個人情報を持っていた場合や、学校園から個人情報を入手した場合は、不正入手となり個人情報保護法第17条違反となります。


 学校園に関しても会員情報は会費の会計処理上知っていますが、会計処理以外の目的で個人情報を使用することは、目的外使用と見なされ同様に個人情報保護法第16条違反となり、非会員へ「配布物の希望を確認する」ことはできません。


イ 配布を希望しない場合の対応

 非会員が配布を希望しないと自ら申し出があった場合は「配布されない」ということになります。学校園は、非会員の子どもに対し差別をすることになります。PTAが会員の子のみに配布(非会員の子には配布しない)するように学校園に申し出たとしても、学校園は教育基本法第4条に則り差別はできないため承諾できません。


これは「区別」ではなく「差別」であることもご承知おきください。

区別:それぞれが本来持っている個性や特性の違いで分けること

差別:性別、人種、病気、住んでいる場所など、本来もっているものに差を作って不当な扱いをすること


(2)「実費請求をする」

ア 「会員限定サービス団体」

 ご存知の通りPTAの対象者は全ての子どもたちであり「会員の子」という概念はありません。

会員と会員の子はセットではありません。会員の子が対象となる場合は、「会員限定サービス団体」となり互助会と同じです。それではPTAの主旨に反します。

 会員サービス団体であれば、公共性が失われるため学校教育法第137条違反となり、学校園の敷地内での活動はできなくなります。公共性のない団体であれば、敷地内から退去しなければなりません。さらに活動は教育時間外、配布物も敷地外での配布となります。非会員に費用を負担させることも会員サービスです。学校園は、公共性のない団体に加担したとみなされるため、学校教育法第3条に違反します。


イ 非会員への請求と配布方法

 費用の請求ですが、(1)にも記載したとおり、PTAは非会員の個人情報は持っていないため請求先が分かりません。また、団体とは無関係(非会員)の人に費用請求はできず、非会員は無関係の団体(PTA)に支払い義務もありません。PTAは学校園の一部ではなく、あくまで外部団体です。入会していないスポーツクラブから金銭を請求されるのと同じことです。

 また学校園が請求する場合でも、個人情報使用に問題がある上、特定の家庭に金銭の要求をすることは地方公務員法の職務違反にあたるためできません。学校園長個人としても同様に特定の家庭に金銭を要求することはできません。


ウ 配布目的

 PTAからの配布物はプレゼントやお祝い品であるはずです。プレゼントやお祝い品というものは、贈る人が費用を負担するのが一般的です。受け取る側が費用を負担する場合は購入や販売といいます。そうなると、もはやプレゼントでもお祝い品でもありません。さらに学校園敷地内で自治体に許可なく物を販売するという事業も行えません。


 以上、(1)(2)のとおり、非会員へ配布の希望を確認したり、実費請求を行ったりすることは不可能です。そのようなPTAは会員サービス団体となり、複数の法律に抵触することになります。また学校園も違法団体に加担していることになります。



ではPTA側としたらどうしたらいいかというと、①物品を全員に配布する、もしくは②配布しない、のどちらかしかありません。


①を選択する場合は、加入率にもよりますが、できるだけ負担がかからないように費用を抑える必要があるかと思います。

しかし、予算的に難しい場合(会員数が少ないなど)は、①を選択できないことは充分考えられます。

学校園との相談になりますが、学校園が必要と判断したものであれば②を選択したとしても学校徴収金より一律徴収すれば配布することができます。

我が幼稚園の場合も、進級記念品や運動会のメダルなど今までPTA会費より支出していましたが、全て幼稚園徴収に変更になりました。今ではPTAからの配布物がほぼなくなり、会費も半額になりました。


 保護者側としては、PTAからの配布物が多く存在することによって、それが「退会障壁」となりうるため“配布物があるかないか”はとても重要なポイントかと思われます。






教育基本法(教育の機会均等等)第3条 

すべての国民は、ひとしく、どの能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない


学校教育法第137条

学校教育上支障のない限り、学校には、社会教育に関する施設を附置し、又は学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる


個人情報保護法(適正な取得)第17条

個人情報取扱事業者は、偽りその他不正入手により個人情報を取得してはならない


個人情報保護法第16条

個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱う場合、あらかじめ本人の同意を得なければならない