3.うつ病概念とDSM
問題は、明らかにそれとわかるうつ病ではなくて、軽いうつ病やうつ病にまでは至らない適応障害や
気分変調症などの、グレーゾーンのうつです。
というのも、実はこの部分がいつの間にか膨らんでしまって、「悩める健康人」までもがうつ病と診断
される傾向が顕著になっているからです。
普通の人の悩みとうつ病はどう違うのか、明らかにそれとわかるうつ病と悩める健康人の自然な悲
しみとの境界線はどこにあるのか。
グレーゾーンが拡大する中、どこまでが正常で、どこからが異常なのか、さっぱりわからなくなってき
ています。
うつ病概念の混乱は、米国精神医学会の「DSM」(精神障害の診断と統計マニュアル:Diagnostic a
nd Statistical Manual of Mental Disorders)の普及と無関係ではありません。
そもそもDSMは、精神障害の概念を明確にするために作られましたが、その目的は今日まで達成さ
れたとは言えません。
DSMの最新版はDSM-Ⅴ(2013年)ですが、特に影響が大きかったのはDSM-Ⅲ(1980年)とDS
M-Ⅳ(1994年)です。
今、精神科臨床の現場で当たり前のように使われている「抑うつ気分など9つの症状のうち5つ以上
が2週間以上続く場合はうつ病である」という操作的診断基準が、これらを通じて世界中に広まった
からです。
ここで示された診断基準の症状は、抑うつ気分のほかに、興味や喜びの喪失、体重変化、不眠など
の睡眠障害、気力の低下、罪悪感、思考や集中力の減退などです。
操作的診断とは、病気に特徴的な複数の症状のうち、いくつ患者さんに該当するかで診断を下すと
いうものです。
あらかじめ決められたチェックリストに従って、該当する、しないを答えていくと、自動的にその病気
かどうかわかる、とされています。
しかしこのような操作主義診断は取り決めに過ぎず、科学的に根拠があるとは言えません。
しかも原因を考慮していないので、抑うつ気分にしても、興味や喜びの喪失にしても、それらが例え
ば仕事のストレスや辛い出来事などに起因する一時的な落ち込みなのか、疾病としてとらえるべき
本当のうつ病の落ち込みなのか判断できません。
恋人と別れたり、連れ合いを亡くしたり、職を失ったりすれば、誰でも落ち込みます。
そんな時この診断基準に当たれば、誰だって5つくらい丸がつくかもしれません。
つまり「悩める健康人」の落ち込みであっても、症状が5つあって2週間続けば「うつ病」とされる可
能性があるのです。
明らかにそれとわかる真っ黒なうつ病はいいのです。
問題は、真っ黒のうつ病まで行かない、グレーゾーンがどんどん広がって、それらグレーゾーンす
ら、真っ黒なうつ病と同じカテゴリーとみなされ、同じ薬物療法が施されてしまっている点です。
操作主義診断学は、「病的なうつ」と「自然な悲しみ」の境界線を「症状が5つあって2週間」という
決まりを作って、そこで分断してしまいました。
でも、そこには明白な根拠はありません。
だから、その取り決めが生物学的実態を反映している保証はありません。
結果として正常と異常の輪郭はぼやけ、勢い「悩める健康人」までもが十把一絡げに「うつ病」と
診断されるようになってしまったのです。
★このような真実を知った上で、カウンセリングしているのはごく少数です!
詳しくはこちらをご覧ください。

