私は、恥ずかしながら大学3年まで、自分が将来どんな職業に就きたいかという目標や夢がなかった。
高校3年のとき、漠然と大学に行ったほうがいいと思って勉強したが、ときすでに遅し、受験に失敗した。
そこで私は、浪人してでも大学に行きたいと両親に伝え、その理由として、父がしていた自営業の不安定さを訴え、自分はサラリーマンになるといった。
ただ父とは交換条件として、もし大学に受からなければ、家業を継ぐと約束していた。
父は中卒で丁稚になって、その後自力で独立しただけに、私に継いでほしいと思っていたのは当然だった。
だが、私はどうしても家業を継ぐのが嫌だったので、浪人中猛勉強をし、見事3つの大学に受かった。
合格したことを父に伝えたときの、父の寂しげな顔は今でもはっきりと覚えている。
大学3年も終わろうかというとき、山下達郎のア・カペラのアルバムをずっと聴いていて、ふと歌手になりたいと思った。バックコーラスでもいいから歌う仕事がしたいと思った。
しかしその夢は、4年になったときに無残にも崩れ去った。
家庭の事情で、そんな悠長なことを言ってられなくなったのだ。とにかくお金を稼がなければならなくなった。
就職活動でも、周りのやつらが電機メーカーに就職が決まっている中、私は、給料の高い某ベンチャー企業に就職することにした。
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それから16年後の4年前から、勤め人から脱却するために、試行錯誤を繰り返してきた。
3年前には借金を背負ってあきらめた。
ようやく暗いトンネルを経て、今年3月から再度活動を始めてきた。
しかし、1人で考えていると、時々無性に不安になるときがある。
考えがまとまらず、このままでいいのかという気持ちである。
私の方向性は間違っていないはずなのに、なぜうまくいかないのかといういらだたしさも付きまとう。
なぜ、自分には「経営の神様」が舞い降りてくれないのだろうか、と世間を恨んでみたりもする。
でもこれが夢を追いかけることの試練であり、リスクではないかと思う。
しかし、この試練を乗り越えられたとき、サラリーマンには味わえない極上の喜びがあるのだろうと思う。