なぜ?建売は性能悪い!・・・なら賃貸でもいい?!~それでも持家じゃないといけない? | 伝統構法の家づくり…大阪の街中で!石場建て/木組み/土壁のマイホーム新築

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五十代も後半、自宅を新築…新建材は怖い!
行き着いたのは地元の工務店。
で、棟梁がつぶやいた。
「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」
「石場建てってなんですのん?!」・・・

石場建て伝統構法の新築現場の方は、床板が張り終わったので、週末は封鎖。

 
 

この土曜と月曜は、棟梁は工房にこもって造作作業。現場はお休み。

さて、いつものYouTube「ラクジュ建築と不動産」

題して【​なぜ?建売は性能悪い!​】

設計工房ラクジュの本橋哲幸さんの発信。
 

これを見て、あらためていろいろ考えさせられました。


 

建売住宅の顧客の実態として・・・
 

まず性能云々より「価格」

次に性能云々より「デザイン」
 

そもそも性能に興味もニーズもない

立地にこだわり地価に予算を費やす

流行を追い見た目で選ぶ
 

まず予算ありき

 → 販売価格が決まる

 → その価格では高性能住宅は建てられない
 

デザイン重視

 → 虚飾に予算を費やす

 → 価値の伴わないデザインや建材

 

要するに、「今」しかない。

35年ローンが組めて、その間なんとか住んで、

35年後には家の価値がゼロになって解体・・・次の人が建て替え。

 

新建材や集成材・合板は化学物質が混入しているので、

解体した家は、環境負荷の大きいただの産業廃棄物・・・ゴミ。
 

高度経済成長という戦後復興のなか、

建売住宅を国民に買わせるという政策の下で

低性能短寿命の住宅が粗製乱造されてきた時代をようやく脱し、

高性能長寿命の住宅が建てられるようになり

先進国としての面目がようやく立つようになった今も、

この七十年間に染み付いた国民の意識は変えられずにいる・・・

ということでしょうか。

 

バブル崩壊後の2000年代、今に至るまで「失われた20年」と称され、

政府の無策から国民生活が崩壊に瀕し、それを政府がどうにもできないでいる現状、

「価格」より「性能」と言われても、庶民には手が出ないのも事実。
 

それなら、不安定長時間労働低収入低所得を強いられているなかで、

地価も物価も高い大都市圏で、

なぜローコスト住宅を人生かけたローンで買わなければならないのでしょう。
 

戦前は、都市部はほとんどの人が借家住まいだったといいます。

いま見直されつつある京町家も、庶民は借家・・・細い柱に薄い壁。

いわゆる「貸家普請」。


​(大阪の古い借家街)​
 

建売住宅・ローコスト住宅は、まさにその貸家普請と言えるでしょう。

そんなものを生涯かけて買う?
 

高性能で価値のあるホンモノの家づくりを目指す方向性の一方で、

どうせ貸家普請ならば持ち家なんか買ったりしないで、
上質な賃貸で気楽に暮らすという選択肢がもっと見直されていいんじゃないか。

そんな選択肢、価値観が、地価の高い都市部ではもっと見直されてもいい。

 

高気密高断熱高耐久の住宅建築の技術は、今やほぼ確立しています。

ただ、良いものには費用がかかる。

どうせ買うなら、高性能な住宅をまっとうな工務店(建築家)と

それ相応の費用をかけて建てる。
 

冒頭の建築家、​本橋哲幸さん​も、言ってらっしゃいました。

横浜で、予算5000万円と制限されると、家に2000万円しかかけられない。

それでは高性能な住宅にはできない。あと500万円出せませんか?

・・・それで性能は雲泥の差なのだからと。
 

もう日本は、経済成長も行き着き、成熟・円熟社会に移行すべき時。

もう粗製乱造の時代ではない。

真に価値あるものには対価をかけ、心の豊かさを手にする時代。
 

貸家普請で建てないと売れないから、建売住宅は高性能が追及できない。

相応の対価をかけた高性能な住宅しかニーズがなければ、

建売住宅も貸家普請から脱却でるということです。
 

そして、ホンモノを建てるなら、

結局はコストパフォーマンスに優れているのは、

高性能な住宅を設計し元請け施工できる地域の優良工務店か、

マトモな建築家の設計に依頼した元請け工務店による建築。

顔の見えるつくり手と、一緒に「建てる」ことです。
 

広告や営業といった建築に直接関係ないところに巨額な経費をかけ、

下請け・孫請け作業員に施工させている大企業から「買う」のではなく!

 

そんな地域の優良工務店、例えば京阪沿線だと、

本物の伝統的な木組みの家が建てられる​日伸建設​とか、

本物の高気密高断熱耐震構造ができる​丸富工務店​とか、

住まい手が家を建てることについて勉強し、自分の価値基準から本気で探せば、

他にも最高水準のところが地元にたくさんあります。


​​(建築知識ビルダーズNo.25)​​


でも、そういう高性能には、当然それに見合った費用もかかるし、

そもそもこの稿で取り上げた建売りの購買層は、建売り業者に言わせると、

建築に興味がない・・・性能より予算とデザイン・・・ということであれば、

低水準の持ち家が濫造されるのを抑制するというのは難しいということになります。
 

私もこの石場建て伝統構法の家を建て始めることになるまで、

以前にも言っていますが、ローコスト建売住宅の自由間取でいいと思っていました。

そのうえで、賃貸より持ち家とも思っていました。
 

「​賃貸vs持ち家論争、お金のプロは「持ち家が有利」と断定する理由​」(2018.4.17)
 

でもそれは、ホンモノの家を建てるなら・・・というのが前提ということに気付きました。

貸家普請の家を買うぐらいなら、

賃貸(勤め先に制度があるなら家賃補助を活用して)で気楽に暮らすのもいいと!

 

住宅が資産価値であった時代に存在していた3つの神話・・・

「土地神話」「インフレ神話」「昇給神話」、

これらが崩壊し、人口減少、デフレ、非正規雇用賃金カットの昨今、

それでも10年後に資産価値がゼロの住宅に35年ローンを組むか。
 

因みに、住宅金融支援機構の調査報告書(2019年7月時点)によると、大阪府の場合、

もともと所有していた土地に家を建てた世帯の相場(外構込)は、

延床面積127.9㎡・38.8坪、建設費相場3,611.8万円。
 

土地と家を同時に購入した世帯の相場は、

延床面積108.4㎡・32.8坪、土地費用込相場4,357.7万円だそうです。

(東京都だとそれぞれ97.5㎡・29.5坪、5,644.3万円!)
 

こう見ると、土地+建物合わせた総額で超単純!に言うと、大阪では、

高性能な住宅に住むには坪単価100万円は見とかないと・・・ということのようです(?)。

(大阪にもかなりの田舎もあり、貸家普請のローコスト住宅も含めた平均ですから。)
 

地価の安い郊外や田舎ならともかく、

都市部で本当に持ち家が必要なんでしょうか?(都市部は家賃も高いですが。)

低性能短寿命の貸家普請の持ち家が増えることは、

SDGs​(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)の観点から、

どうなんでしょう・・・。


 

[註]

建売り業者やローコスト住宅ビルダーに悪意があると言っているのではありません!

むしろ、低価格でもそれなりに上質な家を消費者に提供しようとの努力の成果でしょう。
(枚方近辺でも、なかなかいい取り組みをしている地域密着の建売ビルダーもあります。)

ここでの主旨は、ビルダーに向けられているのではなく、

持ち家と借家に対する価値観を、住まい手に向けて問いかけるものです。​​