続きます花

小児科の教授の部屋は、1番奥にあった。

日当たり良好で、縦に長い鰻の寝床みたいな作りだ。教授の部屋には重い鉄製のドアがついていた。退室する時にバターンと大きな音が立つのではないかと、毎回気をつけた。ベビーカーで出入りするのでこの重い鉄製のドアは厄介だった。


他の先生の部屋は、カーテンがドア代わりの簡素な診療室だった。


小児科があったその場所は、現在は心電図を測る部屋として利用されている。

今は、真新しい新館の3階に小児科は移動した。




教授にお会いする前に、問診表を書いた。問診表を書き終えると、身体測定をした。


これは、低身長で小児科を受診すると毎回やるルーティンである。身長、体重、胸囲、頭囲を看護師さんが処置室に行って測ってくださる。

2才近くになると、身長体重だけになった。



このように当時のF大学病院の小児科にはスタンプがあり、カルテに標準値と測定値の記入を看護師さん毎回手書きで記入してくださっていた。紙カルテだった。それが終わると、いよいよ医師の診察という流れだ。


教授に、末っ子長男がミルクを飲まない事、離乳食も食べない事。赤ちゃんの頃は泣かずに寝てばかりだった事等を詳細に伝えた。


教授は、末っ子長男をベッドに寝かせると、口の中を診たり、足の形を診たり、手相を診たり全身をくまなくチェックしていた。


教授はじっくり診たあと、


口蓋が高い

猿線

片方足の踵が、ハンマー踵 だね、と仰った。


だからと言ってこれが異常かといえばそうでなく、例えば…と、ご自分の目が離れている、鼻が低いのと同じ事だと教えてくれた。実に気さくな教授であった。


教授はいつも成長率を計算されていた。

この後も先も、成長率を計算される先生は教授だけだった。


で、教授は栄養指導を受けてはどうか?と仰られた。食事は楽しい雰囲気じゃないと子どもは食べない…そんな内容の事を仰った。


♪違う違う、そうじゃ、そうじゃなーいー♪

そんな歌のフレーズがピッタリな感じだった。


食べる以前の話だからだ。末っ子長男は、食べないならずっと食べなくていいという状態なのだ。

ほっておくと、ずーーーーーーっと食べないので良いのである。


教授は、まずは栄養士との予約を入れ、その次にまた教授との予約をいれた。


私は、教授の前では断れなかったので、一応承諾したが栄養指導の外来をすっぽかした。

行く意味がないと思ったからである。


その次の教授との診察でも、再び栄養指導へ促されたのでもう断れず、意味がないと思いつつも伺った。


やっぱり、我が家には意味がなかったショボーン

タンパク質の量が不足しているとか、それは食べる子の話なのである。どんな物をどれだけ食べるとか贅沢な話なのだ。末っ子長男が食べてくれる物を探す生活で、ついこないだ食べても、次は食べない、そんなレベルなのである。


栄養士さんの作った物を食べさせてみるとか、そんなダイレクトな指導なら良いと思う。で、それを末っ子長男が食べたら、喜んで作り方を教えて頂くし足繁く通わせて頂くが…ショボーン


2回ほど教授との義理ははたし、栄誉指導を受けた。


教授に栄養指導はもう良いですと丁重にお断りし、何か病気が潜んでいるんじゃ無いか?TVで見たミトコンドリア病じゃないか?と尋ねても、

えー!と驚き、しばし考え、…いや違う!と仰ったりと、素人質問にもお怒りにならず、耳を傾けてくださる医者だった。他にも、お腹が空く薬はないか?等々、藁にもすがる気持ちで色々と話をした記憶である。教授は、話をさせてくれる空気を出せる数少ない医者の1人だった。


小児科はそんな先生の確率が高い。言葉をよく話せない患者が相手だから、親の話を聞くのが常だからなのかもしれないが、教授でこの気さくさは、神レベルであろう。


教授は、ご自身からも色々な話をしてくれた。

ホルモンは、大きく分けると7つあること。

成長ホルモンはその中で最重要では無い事、

乳幼児期に必要なのは栄誉が1番大切である事、

その後は成長ホルモンで、思春期は性ホルモンが身体を大きくする事等を教えてくれた。


私は家に帰ると、教授から聞いた話をいつも深掘り学習していた。どこかに、末っ子長男に役立つヒントがあるのではないかと必死だった。


なるほど、副腎皮質ホルモンが生命に最も重要なホルモンで、次に甲状腺ホルモン、その次に成長ホルモンだなと、私は認識した。


ホルモンの司令塔が下垂体で、この下垂体が体に必要なホルモンを過不足なく分泌させる実に優秀な臓器であり、またその分泌に肝臓の働きも重要だと学んだ。




続きます右差し