メラトニン
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「メラトニン」も参照
メラトニンは松果体で合成されるホルモンであり、睡眠サイクルを制御している暗所や、通常は夜間に血中に分泌され、睡眠のサイクルを制御している[128]。日本睡眠学会ガイドラインでは、メラトニンは睡眠リズムの異常には効果があるが、一般的な不眠症には効果が乏しいとしている[129]。
ラメルテオン(ロゼレム)は、メラトニンと同様にメラトニン受容体に作用し、その研究結果は良好である[130]。ラメルテオンとタシメルテオンは、メラトニンのリズムを変えて、明らかな否定的な影響なく睡眠時間を増やす[128][131]。乱用の証拠はほとんどなく、しかし、メラトニン系のたいていの薬剤は、長期的な副作用については、まだ充分には明らかではない。ラメルテオンを服用する場合は、寝る直前に服用するのが良い[132][133]。
ラメルテオンは、日本、米国FDAで認可されているが、一方で欧州EMAは不眠への効果の根拠が不十分であるとして2008年に不認可としている[58]。ラメルテオンは、他の不眠症治療薬による治療歴や、精神障害の既往がある場合には効果が確認されていない[134]。
研究によれば、自閉症スペクトラム障害、学習障害、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、また他の関連した神経疾患の子どもたちに、メラトニンの使用が有益である場合がある。こうした子どもたちは、病気のために睡眠の問題をしばしば持っている。例えば、ADHDの子どもには、多動性による入眠障害があるため、日中の大半の時間は疲れた状態にある。ADHDや、前述の他の障害を持っている子供たちは、眠るのを助けるために就寝前にメラトニンを服用すれば、睡眠のサイクルが制御できる。[135]
メラトニンは、アメリカやイギリスでは医薬品ではなくサプリメントとして市販されている。他の国では医薬品として販売されている場合がある。日本では個人輸入によって入手できる。メラトニンは、忍容性が高く依存性がない[136]。ベンゾジアゼピン系の使用に抵抗のある小児科でも用いられてきた[137]。
2015年のシステマティックレビューでは、薬局などで購入できるメラトニン[注 9]、ジフェンヒドラミン、バレリアンについて、メラトニンの特に除放剤は、不眠症の高齢者において特に入眠、睡眠の質に効果があり、忍容性も良好であったが、ほかの薬剤や通常のメラトニンでは限られた効果を示していた[123]。
抗精神病薬
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「抗精神病薬」も参照
不眠症に対する抗精神病薬の低用量の使用は、一般に推奨されておらず、利益に関する証拠はほとんどないが、有害な副作用の懸念がある[138][139][58]。精神病(psychosis)ではない不眠症患者に抗精神病薬を日常的に投与することは推奨されない[140]。
副作用に関する懸念は、高齢者でのほうが大きい[141]。アメリカ精神医学会(APA)は、成人の不眠症に対し抗精神病薬を継続的に最初の治療としてはならないと勧告している[142]。日本でもエビデンスが乏しいまま抗精神病薬が適応外使用されている現状が危惧されている[22]。
抗精神病薬は、遅発性ジスキネジアやアカシジア(静座不能)といった睡眠関連運動障害の原因となることがあり、またむずむず脚症候群や、周期性四肢運動障害を誘発させたり悪化させることがある[143]。
統合失調症患者における抗精神病薬は、しばしば、寝つきの悪さ、中途覚醒、睡眠の質の悪化、過眠など睡眠障害の原因になる一方、ヒスタミン受容体やセロトニン受容体に拮抗作用のある定型、非定型抗精神病薬は鎮静作用があり、中でもリスペリドンやオランザピンなど5-HT2受容体(5-HT2 receptor)により選択的に拮抗する非定型抗精神病薬は、統合失調症患者の睡眠の質、量、寝つきを共に改善させ得る。[144][145]
セロトニン5-HT2受容体に選択的に拮抗する抗精神病薬のヴォリナンセリン(英語版)などが不眠症の治療の目的でも調査されている[146]。
漢方薬
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漢方薬においては、いわゆる睡眠導入剤は存在しない[147]。不眠症への漢方処方では、全身状態への改善により自然な眠りが訪れるよう調整する[147](日本睡眠学会および厚労科学斑は不眠症に対して漢方薬の有効性エビデンスは確認されていないとしている[129])。
- 神経過敏による入眠障害
- 抑うつ傾向を伴う不眠
神経症性不眠や神経質性不眠の患者で睡眠導入剤の依存傾向を作りやすい場合、漢方薬が第一選択肢[148]。睡眠導入剤から漢方薬への切り替えは困難なことが多いが、2-4週間以上の時間をおいて行うべきである[148]。経過の判定には4週間以上を見る必要がある[148]。
代替薬
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いくらかの不眠症患者は、バレリアン、カモミール、ラベンダー、医療大麻、ホップ、アシュワガンダ、パッションフラワーのようなハーブを使用している。バレリアンについては複数の研究があり効き目が穏やかなように見える。[149][150][151]L-アルギニン、L-アスパラギン酸、S-アデノシル-L-ホモシステイン、デルタ睡眠誘発ペプチド(Delta sleep-inducing peptide、DSIP)も、不眠症の緩和に役立つかもしれない[152]。『精神薬理学』(Psychopharmacologia)に掲載された1973年の研究では、経口投与されたTHCが9人の健康な被験者で睡眠潜時と睡眠の中断の頻度を有意に減少させた。[153]『麻酔と鎮痛』(Anesthesia and Analgesia)に2010年に掲載された研究では、線維筋痛症の患者の睡眠の質の改善において、合成THCは抗うつ薬のアミトリプチリンよりも有効であった。[154]
2017年のシステマティックレビューでは、大麻の成分テトラヒドロカンナビノール (THC) では、入眠しやすくするが睡眠の質を損なう可能性を示し、全般的に研究の初期段階にある[155]。アメリカなどで医療大麻の使用が認められており4276人の回答からは、約7割が不安、不眠、痛みに用いており、不眠症では60%が他の薬から大麻に置き換えたり、薬の量を減らすことができたという[156]。
2015年のシステマティックレビューでは、バレリアンの使用を支持するための強い証拠はない[123]。
そのほか
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バルビツール酸系は副作用のリスクが高いため、日常的に処方することは推奨されない[140]。
特定の集団
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児童
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アメリカ睡眠学会は、児童の不眠に対して睡眠薬を処方してはならないとしている(Choosing Wisely)[157]。児童に対し米国FDAが認可している睡眠薬は存在しない[157]。代わりに行動療法を勧告している[157]。
高齢者
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80歳以上の女性は20%以上が睡眠薬を服用している[158]。
アメリカ老年医学会およびカナダ老年医学会は、高齢者の不眠に対して睡眠薬を第一選択肢としてはならないとしている(Choosing Wisely)[159][160]。米国内科医学会ガイドラインでは高齢者の不眠に対し、CBT-Iには中程度のエビデンスが存在するとしているが、薬物療法についての利益を決定する根拠は不十分(insufficient)であるとしている[6]。
日本老年医学会ガイドラインでは、高齢者の不眠症に対しては第一に非薬物療法を実施すべきとしている(推奨度:強)[161]。日本睡眠学会も、非薬物療法は有用であるとし、薬物療法の前に睡眠衛生指導を行うよう推奨している[162]。
日本においては、日本老年医学会は睡眠薬の有用性は認めるが(エビデンス:高)、推奨度は低い立場である[161]。反対に日本睡眠学会は、睡眠衛生指導の効果は認知行動療法に比較して限定的であり睡眠衛生指導では薬物療法を十分には代替できないという立場である[162]。日本睡眠学会は、日本では不眠症に対する認知行動療法は健康保険の適応外であり、認知行動療法が実施可能な医療機関はごく限られており、日本睡眠学会は、睡眠薬による薬物療法に先だって認知行動療法を最初に考慮することは実効性に乏しく、常用量で治らない不眠症患者に対して認知行動療法の適応を考慮するとしている[162]。
予防
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不眠症は、短期的あるいは長期的である。睡眠障害の予防には、同じような時刻での起床と入眠を保つといような一定した睡眠予定の維持が含まれる。また睡眠時刻の8時間前からカフェインを含む飲料を避けるべきである[58]。運動は不可欠で睡眠への過程の助力となるが、就寝時間の前には、運動しないことは重要でそれゆえ静かな環境を整えるようにする。自分の寝床は、睡眠とセックスのためにのみ用いることにすべきである。これは睡眠衛生を含むいくつかの要点である。[1]
疫学
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有病率
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米国における調査では、成人人口の6-10%が診断基準を満たしており、その経済的コストは300-1,070億ドルと推定されている[6]。
豪州における調査では、成人人口の11-33%が入眠困難または睡眠持続困難を訴えていた[21]。日本人を対象にした調査によれば、5人に1人が「睡眠で休養が取れていない」、「何らかの不眠がある」と回答している[163]。日本では、成人の30%以上が入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難などいずれかの不眠症状を有し、6〜10%が不眠症に罹患しているとされる[22]。
日本では不眠症状の有病率は入眠困難が9.8%、中途覚醒が7.1%、早朝覚醒が6.7%である[164]。
不眠は女性のほうが男性よりも40%以上も一般的である[165]。
疾患リスク
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危険因子
- 60歳を超える高齢者
- うつ病を含む精神障害病歴など
- 感情的ストレス
- 深夜のシフト勤務
- 異なるタイムゾーンをまたがる旅行
米国における医師110万人に対しての調査によれば、一日に7時間前後眠っている人が最も死亡率が低い。6時間未満や8時間以上の睡眠のほうが、死亡率が高かった。また一日に8.5時間以上の睡眠をとると、死亡率は15%増加していた。また深刻な不眠(女性では3.5時間未満、男性では4.5時間未満)をもつ人も、死亡率は15%増加していた。
最も死亡率の低いグループは、一日あたり6.5〜7.5時間の睡眠であった。しかし一日4.5時間のみ眠るグループにおいても、死亡率はほんの少ししか上昇していない。つまり多くの人々にとって中程度の不眠であれば寿命は延長され、重篤な不眠でも死亡率への影響はほんの僅かである。
また患者が睡眠薬を服用しない期間が長いほど、不眠に起因する死亡率上昇はほとんど見られなくなるが、寿命延長につながるかは分からない。患者は不眠のことを心配し、また不眠は不快なこともあるが、しかし不眠自体は寿命延長と関連性があるとされている。なぜ8.5時間以上の睡眠が死亡率増加につながるかは不明である。
慢性的な睡眠不足状態にある人は高血圧、糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患や脳血管障害といった生活習慣病に罹りやすい[166]。また免疫力を低下させ、インフルエンザなどの感染症や癌の誘因や増悪因子になる[167]。
不眠を題材にした作品
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映画・ドラマ
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- 『眠れない夜はあなたと』 - 1994年公開のアメリカ映画。
- 『インソムニア』 - 2002年公開のアメリカ映画。
- 『マシニスト』 - 2004年公開のアメリカ・スペイン合作映画。
- 『Cradle[クレイドル] -眠れぬ夜の子守唄-』 - 2007年の日本のネットドラマ。
書籍・漫画
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音楽
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- INSOMNIA - YMOの楽曲で、 1979年発売のアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』に収録。当時不眠症だった細野晴臣が作曲。