大阪府立高校複数で1つの部活?、吉村知事は何をしたいの? | 世に棲む日々。(教育講演、研修、相談)

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各競技団体の取り組みをよそに大阪府では公立校を複数で一つの部活動運営を検討すると言う。

 大阪府の吉村知事は会議のあと記者団に対し「目的は、生徒が部活を選択できる幅を広げることと、先生の働き方改革だ。他校への生徒の移動はどうするのかとか、1校で十分成り立っている部活はどうするのかといった課題はあるが、解消する方策を模索し、理解を得られるような形で制度を作り上げていく」という。

公式戦出場という選択の幅ならば、既に部員数の足りない学校が集まり合同チームでの大会出場を取り入れている競技団体は多く、ラグビーなどは合同チームの歴史も古く2005年からは合同チーム参加者での全国大会も行われるようになっている。

 吉村知事は選択肢の幅と言うが、受験の段階でどのような部活が志望校にあるのかはアドミッションポリシーも含め受験生は既に選択して受験している事を考えると生徒を出汁にしたこじ付けとしか言いようが無い。

 さらに、言えば既存の学校で取り組みたい部活動が無い場合は創部の手続きは各学校には存在する。創部の努力も含めて生徒の取り組みとして教育的な価値は高く、部員数の確保についても同じ事が言える。

ただし、部員獲得も生徒数の減少から今までのように全ての部活が潤滑に部員を確保する事は確かに難しい現状にある。しかし、前述のように各競技団体の合同チームの容認の方向性が部活の存立を可能にし、既に生徒の選択の幅を確保している。

複数の学校で一つの部活が制度化された場合懸念される事は多々ある。

部活動は各々の学校のアドミッションポリシーに乗っ取り日常の学校生活、教育活動を互いに補完するものである。各々違うアドミッションポリシーの学校で整合性をつける事は難しい。(学校の部活動の位置付け、教育理念から年間の行事予定、時程、校則も違う生徒達の存在がある。)
 さらに言えば、多様な特性と問題を抱える生徒の指導を部活動のみならず、日常から面倒を見ている教師だから教育的効果も高く、問題を回避する事ができる。それを働き方改革にかこつけて、日常の学校生活を知らない者が安心安全に指導する事は難しい。

また、アドミッションポリシーが絵に描いた餅と言うのなら話は別だが、アドミッションポリシーを入試制度に利用している大阪府においては入試制度と大きな矛盾を生じ、選択の幅を広げると言いながら、生徒の選択を無視した形となり、その矛盾を解決する事は難しい。

学校の働き方、教員の働き方と言う意味においても、アドミッションポリシーも違う、教育理念も違う、生徒の特徴も質も違う学校を制度的に括る事は、その矛盾を埋める作業をさらに現場の学校の教員に押し付ける事になり、結局は教員の仕事を増やす事になる。そんな事が想像できない教育委員、お役所、政治家の自己満足やアピールに付き合わされ、振り回される生徒も教員もたまったものでは無い。

格競技団体、学校で自主的に解決できる事に公的な縛りをかける事は教育的な問題を複雑多様にし、働き方についても解決を遠ざけるばかり、現場の声が届かない大阪府立高校の声を世間に届けたい。