第77話 白い虚像【5】【完】
トレイ掃除好きの入院団員も病院で完全な優等生であった訳ではなく、同期の団員が見舞に行った時間帯が夕食の時間と重なったのですが、運び込まれた食事を見て見舞に来た団員は仰天致します。ご飯は漫画に出て来る様なてんこ盛り。おかずの乗った皿の隅にはマヨネーズがこんもり盛られております。お盆には「飯大 要マヨ」と書かれたメモが付いているではありませんか。
大体、病院食というものは脂肪分を抑えたりしておりまして、ただでさえ運動不足な訳ですから綿密なカロリー計算の下、メニューが決められている筈であります。おそらくご飯とマヨネーズだけで入院患者1日の必要カロリーの大部分を消費するであろうそのメニューは掟破りも甚だしいと言えましょう。団員がどんな手を使ったのか今もって謎であります。
また見舞に来た団員がそろそろ帰ろうとすると
「悪いけど、帰りにこれを捨てといてくれんか」
とベットの下を指さします。覗き込んでみますと何とビールの空き缶が無数に入ったビニール袋が置いてあるのではありませんか。団室では当番団員が行うべき約束事を欠かす彼ではありましたが、入院中でも晩酌だけは欠かしていなかった様であります。
入院などしない方が良いのでありますが、仮にそういう事態になったとしても決して悲観する事はないという含蓄に富んだお話でありました。
ここで一句。
【完】
甲南大學應援團OB
八代目甲雄会広報委員会