本山村怪々奇團【78】 | 甲南大學應援團OB会のブログ「雲外蒼天」

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甲南大学応援団再建物語
~黄霧四塞すと雖も、上に蒼天なきに非ず~

第77話 白い虚像【4】

 

また別の団員のお話であります。彼は内科のお世話になる病でしばらく入院生活を送る事になりました。ある時、同期の団員が見舞に行きますと、学ラン姿を見かけた入院団員の主治医の先生が声をかけて来られました。
「彼は稀に見る好青年だねぇ。應援團というのは良いクラブなんだね。君も頑張りたまえ」
と団員としては決して優秀とは言えない入院団員を激賞するではありませんか。そこで強い否定をする事も憚られますので、何となくお茶を濁して病室を訪ねると快方に向かっている団員氏が喜んで迎え入れました。最近の団の様子などを話しておりますと、ふと先程の医師の話を思い出し、どういう事か彼に尋ねたところ、事の真相はこうでありました。


当時のトイレはスリッパを履き替えるところが多く、ドアを開けた辺りにある簀の子の上で靴やスリッパを脱いで、トイレ用のスリッパに履き替えるのであります。入院団員氏は団員生活の中で上級生に叱られる回数が同期の中では抜きん出ておりまして、大学や合宿先のトイレ掃除及び随時トイレ用スリッパを出船形に並べる罰則を科されておりました。その癖で病人でありながら、病室のあるフロアのトイレのスリッパを揃えたり、目立つ汚れを掃除したりしていた様でありまして、それを知った医師がすっかり感心してしまったというものでありました。


「お前が下手を打つ回数がそれだけ多かった、というだけの話やんけ」
と呆れたものの、その一事で人の評価は変わってしまうのも事実であります。後日談でありますが、彼は退院後、團活動に復帰しましたが、病み上りの身体に應援團下級生修業は辛く、根を上げそうになった事がございました。その時、退団を真っ先に反対したのが彼の御両親だったのであります。病院で医師に息子のことを激賞され、そのバックボーンとなっている應援團に対し非常な好感を持って下さっていたそうでありまして、退路を断たれた彼は団員生活を全うする事になりました。トイレ掃除でも男を上げる事が出来る訳であります。【以下次稿】

 

甲南大學應援團OB

八代目甲雄会広報委員会