本山村怪々奇團【59】 | 甲南大學應援團OB会のブログ「雲外蒼天」

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甲南大学応援団再建物語
~黄霧四塞すと雖も、上に蒼天なきに非ず~

第59話 パンチングマシン
 
今でもあるのかどうか分かりませんが、かつてゲームセンターの店頭にはパンチングマシンと呼ばれる、打撃対象面を殴る事でパンチ力を測定するゲーム機が置いてありまして、腕自慢がゲーム機の前に群がって、パンチ力を競っている姿がよく見られたものでありました。
そんなパンチングマシンがまだ店頭に普通に置かれている時代の話であります。前回の奇團で登場した志賀親衛隊隊長がまだ駆け出しの親衛隊1回生の時のお話であります。

穏やかな時間が流れる團室に驚愕の報らせがもたらされます。神戸一の繁華街である三宮にある生田警察署より、志賀親衛隊1回生他数名が三宮の路上で派手な殴り合いをしているところを取り押さえられ、生田署に連行されたというのであります。
取り急ぎ團室にいた親衛隊3回生の團員が身柄引き受けに生田署に行く事になりました。
 
まずは当時の我が團を取り巻く状況をご説明申し上げます。今、阪急電車に揺られ生田署に向かっている親衛隊3回生の團員が入團した3年前は、應援團は解散寸前の状態でありまして、4回生團員はゼロ、2、3回生もそれぞれ1-2名しかいないという惨憺たる有様でありました。
それ以降、團勢は回復の兆しを示し、この年の春には新入團員が10名近く入りまして、再建活動は軌道に乗ったところだったのであります。
その10名の中の数名が互いに殴り合っていたというのですから、事と次第によってはこれまでの苦労が水泡に帰す可能性もある訳で、上級生である彼は言い様のない不安に包まれておりました。
 
生田署に到着した上級生、警察官に厳しく叱責される事を覚悟しつつ部屋に入りますと、警察官は半ば呆れ顔で
「お前がこいつらの上級生か。しっかり教育しといてや」
と想定したよりも遥かに柔らかい対応で、そのまま1回生達を連れて帰る事が出来たのであります。
 
さて一体、何があったのか。当時は前述の様に應援團再建に向けての熱が團内で煮え滾っている最中であり、その意識は1回生に至るまで共有されておりました。大学の帰り道、1回生同士が喫茶店に入って、これからの應援團に関してどうあるべきか毎日、議論を戦わせておりました。
その日のテーマは應援團と肉弾戦についてでありまして、有事の際、應援團には一定の武力が必要であるという物騒な話であります。ところが議論が進むうち「誰が一番、強いのか」という方向に話はスライドしておりまして、挙句の果てには「誰のパンチが一番、強力か」というのが論点になっていたのであります。
そして互いにパンチを叩き込み合い、パンチ力を競っているところを通りかかった人が應援團の乱闘と誤認し、生田署に通報⇒連行、という事になったという訳であります。
「君達は本当に大学生か?」
と歯が欠けたり目の周りに痣を作った團員達を目の当たりにして、生田署の方が呆れ果てていたとの事ですが、間違いなく事実でありましょう。

せめてゲームセンターに置いてあったであろうパンチングマシンを利用して数値で競って欲しかったものでありますが、そんな團員達を嫌いにはなれません。
 
甲南大學應援團OB会
八代目甲雄会広報委員会