第26話 愛しのキョンキョン(前編)
1980年代はまさにアイドル全盛期でありまして、毎年、多数の男女アイドルがデビューしては、絶大な人気を博す時代でありました。
よってこの時代の團員は團員時代はともかく大学入学までの期間に贔屓のアイドルがいた、という者は珍しくはありません。そんな時代の話であります。
勧誘のピークとも言えるある年の入学式、見るからに一クセも二クセもありそうな新入生がおりました。こういう手合いは我が團に迎え、正しい甲南生としての姿勢を叩き込む責務がありますので、真っ先に勧誘させて頂いておりました。
さて、その新入生を我が團の勧誘ブースまで任意で連行して参りますと、全身からいい加減さを漂わせておりまして、その場にいた團員達は「こんな奴を我が校に野放しにしておく訳にはいかない」と強く感じさせられました。
團生活で鍛えし話術で腹が立つのも抑えつつ話を聞いてみると、後に「あれほど見事なまでに酒と女と金にダラしない奴も珍しい」と感嘆されるだけあって、煩悩の塊の様な男でありました。
特に女性への興味は尋常一様ではなく、好きなタイプを問えばアイドルの名を列挙する始末。そこで一計を案じ
「にーちゃん、去年の学祭のゲストは誰か知っとるか?」
「??」
「中山美穂や」
「えっー!マジっすか??」
ってな感じであっさり釣れまして
「そうや。ワシらは学祭ではゲストの警備をしとるから、30cm位まで迫れたんや」
と言えば、早くも彼の脳が溶解を始めており
「ちなみに今年のゲストは小泉今日子や」
と追い打ちをかければ
「お願いします!何でもやります!どうか應援團に入れて下さい!」
あっさりと團員を確保した訳であります。【続く】
甲南大學應援團OB会
八代目甲雄会広報委員会