本山村怪々奇團【16】 | 甲南大學應援團OB会のブログ「雲外蒼天」

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甲南大学応援団再建物語
~黄霧四塞すと雖も、上に蒼天なきに非ず~

第16話 鉄のカーテン


鉄のカーテン と言えば、かつての欧州での冷戦の緊張状態を示す用語でありまして、派生してV9時代の読売巨人軍でしばしば行われた報道管制もそう呼ばれていた事もあった様でございます。



さて、以前、練習場 についてご紹介申し上げた通り、我が應援團では雨天の時や夕方からの練習では、我が校の体育館を使用させて頂いておりました。体育館では昼休みはともかく夕方ともなりますと、他部も練習に励んでおります。


体育館内は真っ二つに区切られ、二つの部が同時に練習を行います。バレーボール部、体操部、バスケットボール部、ハンドボール部、バトミントン部、フェンシング部と言った顔ぶれだった様に記憶致しております。時間帯や曜日でローテーションを組んで使用しておりました。

そして舞台は應援團、そして体育館に入ってすぐのロビースペースではチアリーダー部等が練習をしておりました。

應援團の練習では太鼓は欠かせず、その爆音は体育館という密閉された空間ではさながら、雷(いかづち)の声かと許り響(どよ)むのであります。

しかしながら体育館をホームグラウンドとする各部は慣れたもので、そんな爆音も意に介さず其々の練習に励んでおりましたので、高い集中力を誇っておりました。

ところがその高い集中力が途切れるシーンがない訳でもありません。我が團の下級生が大下手を打つ、ケアレスミスを連発する、或いはイベント前の風紀粛清の場合もありますが、下級生は横一列に並んで、先輩にアントニオ猪木の如く闘魂を注入頂く事もある訳であります。鉄拳か平手かで音も異なりますが、平手の破裂音の方が音的には響く傾向にあります。

何発目かの破裂音の後、猪木役の上級生はふと背中に数多の視線を感じ振り返りますと、体操部の部員は鉄棒にぶら下がったままこちらを見ておりますし、バレーボール部の部員をサーブを打つ姿勢のままこちらを見て居りまして、それぞれ慌てて目を逸らします。


これでは愛と正義の味方である應援團のイメージダウンになると考える猪木氏。ふと見上げると舞台でありますので、緞帳がある事に気付きます。早速、舞台袖の装置を操作し緞帳を下します。これで多くの視線をシャットアウト、後顧の憂いを絶ち安心して続きの闘魂注入を再開するのでありました。


練習終了後、意気揚々と團室へ戻ろうとする猪木氏を同期で懇意のバレーボール部員が呼び止めます。すると「緞帳は上げたまま練習して欲しい」との意外な要請だったのであります。なけなしの最大限の配慮をしたつもりの猪木氏の頭には無数の?が飛び交います。

バレーボール部員氏によれば緞帳が下りた後、中から怒号、それに続く破裂音や呻き声、雄叫び等々が聞こえて参りますと、何が行われているのか、見えないだけに逆に気になって仕方ないとの事でありました。

なるほど、人間の心理でございます。


八代目甲南大學應援團OB会広報委員会