ヤマケンカット | 甲南大學應援團OB会のブログ「雲外蒼天」

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甲南大学応援団再建物語
~黄霧四塞すと雖も、上に蒼天なきに非ず~

以前に書かせて頂いた記事 で関西圏における文化の相違について軽く触れた箇所がございました。ここでご紹介させて頂いた「ダボ」という神戸では小学生でも日常的に使う言葉が、淀川を越え大阪に参りますと通じないのであります。こういう事例は神戸・大阪間に限らず全国的に多々ございますが、今回はこの神戸でしか通じない言葉をご紹介しましょう。

 

おそらく広辞苑にも載っていない「ヤマケンカット」という物騒な単語がそうでございます。カットという位ですから髪型を指す言葉なのでありますが、昔の神戸の散髪屋では「おっちゃん、ヤマケンカット」と言うと、たちどころにカットに取り掛かって下さるのでありますが、これが神戸を一歩出ますと、ほとんど通じなかったのであります。

 

團員達の頭は概ね規定されておりまして、1回生=丸坊主、2回生=角刈り、3回生=髪を伸ばしても良いが額は出しておかねばならない、4回生=自由、というのが一般的な決まりでございました。故に以前にもコメントを頂戴致しましたが、他校の様に大学生協に理髪店がない我が校では、團室に出入りする男達がいつもサッパリした頭をしている為に散髪屋と間違えて團室に闖入して来る珍客もいらっしゃった程でした。

 

一定期間、短い髪型で過ごした事がある方ならお分かり頂けるかと思いますが、一度、短くしますと、その手入れの楽さから、別に短くする必要がなくっても、短いままにしてしまう事がままございまして、1~3回生は角刈り頭で過ごす事が多くなる傾向にございました。

 

そんな角刈り頭を少しオシャレにしようという目論見の下、当時の團員に支持されたのがヤマケンカットなのであります。どんな髪型かと申しますと、プロゴルファーのジャンボこと尾崎将司氏、プロレスラーの「世界の荒鷲」こと坂口征二氏の髪型をもう少し短くした感じを想像して頂ければ、そう遠くないかと存じます。

 

殆ど角刈りなのでありますが、通常、刈ってしまう襟足がほんの僅か、微妙に長いのが特徴であります。間違っても地方都市に生息するヤンキーの様にたなびく様な長い襟足ですと、忽ちハサミで切り落とされてしまいますので、バレない程度のミリ単位の長さであります。

 

何故これをヤマケンカットと呼称されるのかは察しの良い方ならお分かりかと存じますが、敢えてご説明申し上げると、昔、ヤマケンと呼ばれる方が神戸におられ、往時は三宮によく出没されておられ、團員からは「モダン焼きの親分」と密かに恐れられておりました。このエピソードはまた改めてご紹介させて頂きます。

 

それはさておきこの方、昭和57年にご逝去されてしまいます。この方の跡を相続され、次にヤマケンと呼ばれる様になったがおられまして、この方がこの髪型をしておられたのであります。忽ちこの髪型は業界で爆発的に流行し、その波が我が團にも押し寄せた次第でございます。

ただ今でも神戸の床屋さんで「おっちゃん、ヤマケンカット」とオーダーして通じるか否かは不明であります。

 

八代目甲南大學應援團OB会

広報委員会