昨日 の続きであります。應援團と学食の良好な関係を縷々、述べましたが、そんなある日、遅めの昼食を学食で摂る某幹部氏。がら空きの食堂では、テーブルに散乱した食器をため息をつきながら片づける食堂のお姉様方の姿が見えます。
すかさずお付の下級生に手伝いを命じる幹部氏。お節介なところが應援團員の悪い癖でありまして、早速、食堂の方の話を伺います。
昨日の記事の通り当時、食堂でのセルフサービスが浸透していない実態を嘆くお姉様方の話に、忽ち義憤に燃える幹部氏。愚痴をこぼしていたお姉さんは、明日何が起こるか知る由もなく、相変わらずの團員の食べっぷりの良さを褒め称え、立ち去って行きました。
さて翌日、昼休みの練習に参加すべく團室には続々と團員が集まって参ります。時は昭和40年代半ばの事、50名は下らない團員は全員、團室に入れません。團室前に整列し、出発を待っておりますと、昨日の幹部氏、キチッと学ランを着込み腕には公式行事の時に使用する腕章をつけて團員の前に現れます。
全員に腕章着用を指示し恒例の訓示であります。
「我が校で看過し難い事態、是有り。各員、母校百年の大計の為、風紀粛正に挺身すべし」
学食で自分が食べた食器を返却しない学生さんにやんわりと注意喚起しようという訳であります。
早速、昼休みでごった返す食堂に黒い軍団が粛々と入って参りまして、要所要所に團員が配置されます。手を後に組み背筋を伸ばし不動の姿勢であります。
【イメージ図】
始めは何事が起ったのか事態を呑み込めなかった学生達も、ただ無言で立っているだけでございますので、いつしかいつもの日常に戻ります。そうするといました、いました、食器を放置したまま立ち去ろうとする男子学生の団体様。その姿を認めた3回生が下級生に目くばせします。1、2回生が脱兎の如くその不逞の一団に近づき、恐る恐る
「にいちゃん、オノレで食うた食器もよう片付けられんのけ?ほな、飯が食えん体にしたろか」
とやんわりと注意します。そこは物分かりが良い我が校の生徒達、たちまち食器を片付け、大急ぎで食堂から退散します。そうです、短い昼休み、学食は回転が良くなくてはなりません。食べ終わったらさっさと退散し、待っている人の為に席を譲る配慮が必要なのであります。それでこそ世界に通用する紳士たり得るのでございます。
故に空席がなく待っている学生がいるにも関わらず、食べ終わっても、いつまでも会話に花を咲かせている様な不遜の輩にも注意が必要です。
「にいちゃん、待っとる人がおるのが見えへんのけ?ほな、ものが言えん体にしたろか」
と丁重に申し入れます。たちまち空席が出来まして、待っている人を別の團員が誘導致します。かくしてセルフサービスはたちまち浸透し、学食は空前の回転率を記録したのであります。
應援團ではこれを「セルフの日」と呼び、いつ実施するのかは團員達も当日まで知らされません。しかしながらセルフの日=昼休みの練習はなし、という事でありますので、今日はセルフの日であると宣告されますと、團員達は喜び勇み極めて士気は高うございました。
八代目甲南大學應援團OB会
広報委員会