私の目前には、夫の浮気を疑っている(確信している)相談者である30代前半の妻が座ってます。
その大きな目はかっと開いて、まばたきすらしない。
顔は硬直しているかのようだった。まったくにこりともしない、一瞬ですらも。
調査員全盛の頃の事例です。
同じく30代の前半の夫の浮気調査の依頼でした。
帰りがどんどん遅くなり深夜だと。
手渡された旦那さんの写真には、お子さんたちと楽しそうに遊んでいる姿が写っている。
「休日も子供とは遊ばなくなり、寝転んでスマホ三昧。そして一人で外出することが多くなりました。」と。
離婚は言ってきていないと。
夫の行動にいたたまれなくなった妻は、夫に行動をもう少し改めてよと言ったようだが、
仕事や仕事上の付き合いもあるから仕方ないと聞く耳は持たないようでした。
こっそり夫の携帯電話を見たりした。
何もあやしい痕跡はない。完璧だったという。
「まめに消しているんでしょうきっと・・・」と。
女はどこの誰か、まったくわかりません。顔も、下の名前も、どこで知り合ったぽいかも。
わかっていること・・・夫は家庭を顧みなくなった。そして間違いなく浮気している。ことでした。
2~3時間の面談のなかの会話。
依頼人の顔は硬直しきったままでした(汗)
すでに笑みすら失っていました・・・
そしていざ夫の浮気調査が始まりました。
約3週間ほどの期間のなか、日をこちらでチョイスして実地しました。
仕事は17~19時には終わる仕事です。問題はそこからです。
前半は空振りとか、調査がうまくいかず難航していました。
調査員のストレスもですが、依頼人のストレスも上昇していたのは確かです。
「*日間、経過していますが、まだ何もわからないんでしょうか・・・」と、私たちにとってはほんときつい一言です。
しかし、そんな思いは想定内。
逆の立場なら私だってそう思う。言うか言わないかだけのことだ。
それこそ、「旦那に嘘ばっかつかれ裏切られ、探偵にも・・・」と、こんな心境にもなりましょう(汗)
探偵という職に過程はどうでもいいこと、結果がすべて。
どんな状態でどうとか、こうだからあ~だとか、依頼人には関係ないことです。
やって当たり前、やらなければ不審。
しかし、中盤になってやっとつかめた真実。
調査では、あることがわかれば謎はとんとん拍子で解決ってことが多々あります。
この案件では、夫の車では行動しない。
必ず女の車に乗り換える。
で、女の自宅が判明した。もちろん二人が浮気するときの女の車も明らかになった。
「なんだいそんなことか・・・」でしょうが、そこが明らかになれば、あとは接触内容、回数。
夫は女の車を運転して、あるときは県外。あるときは海岸と。
最低でも1時間離れた場所での浮気行動。
ラブホテルは2回に、その他デートの真実を捉えたのです。
女は実家住まいの未婚20代半ばの女性でした。
よくある事例なんですが、家も車で10分程度と近かった。
並行して女の勤務先もわかり、勤務先に電話して下の名前も聞き出し、姓とつながったのでした。
妻は離婚を望んでいなかった。
ただ普通の平凡な生活を夫婦で、家族でこの先もしていきたいことだけが願いだった。
だから、妻は女を排除したいがため、直接女に慰謝料請求と、誓約書を交わす旨を送付。
女からの返信はあった。それも行政書士事務所から。
これもよくあるケースです。
しかし内容は、慰謝料の額は相当に減額、支払い方法も長期分割と、妻にとっては納得のいくものではありません。
しかしそれを受け取ってから、どうこうもせず、しうばらく放置してしまったのです。
どうしていいかわからなかったのです。
もちろん夫の耳に伝わっています。
どこの浮気夫もそうですが、「そんなことやめとけ」、「取り下げろ!」とか、「俺が払うからやめろ」などと逆切れしながら言うものです。
この浮気夫もそうでした。「彼女は関係ない、俺が払う」からと。
妻はそんな要求はのみませんでした。
そして夫は家を出て行ったのです。自分の実家へ。
妻は女から誓約書は受け取っています。
反省の意と、金輪際おたくのご主人とは連絡もとらない、接触もしないと。
ただ、提示してきた慰謝料が到底納得のいくものでなかった。
しばらくの沈黙期間をおいて、妻は弁護士に依頼。
するとあっけなく女のほうは、満額で一括支払いをのんだのです。
かなり迅速に弁護士のほうに振り込まれたそうでした。
妻が起こした行動。ただの宣戦布告で終わらないようにです。
最悪の事態も想定に入れ、次のステップその次の展開も視野にいれてやりましょう。
ボール投げて、勢いよく返されて、固まってては八方塞がりです。
さて問題は家を出て行った夫との関係・・・。
夫は「戻るつもりはない。もうおまえとは離婚。離婚だ!」とそっちになっていきました。
「弁護士までつけて慰謝料請求なんてするからよ」と聞こえてもきましたが、そうとも言い切れません。
法的に白黒つけたから、終わったという事例だってあるわけですから。
浮気夫が、妻がなにもしなかった頃には離婚言わなかったけど、こんな展開になってからは、「離婚だ!」と騒ぐことはよくあります。
まあ本当のほんとに本気かそうでもないかはそれぞれですが、
この奥様の場合ですが、あれだけ夫婦は一緒、平凡に暮らしていきたい気持ちだったのが、
「もう無理かもしれません。離婚でもいい・・・」っていう心境の変化に変わっていたのは事実でした。
であるから、自分の納得のため、弁護士にも依頼したわけです。
もうその時点(いやもう少し前から)、夫とは無理かもしれないと思っていた。
あ、笑みのことですが、
事実がはっきりしてすべてがわかったとき。
やっと笑みがちょこっとだけ・・・ほっとしました。
ほんといい笑顔をしているのに。これが率直な感想でした。
女との紛争は一旦解決した。
しかし夫は家を出たまま。
連絡はとっていましたが、「帰るつもりはない!」「離婚だ」との一点張りだった。
購入して間もない一軒家で暮らしていた妻と子供たち。
夫のいない事実を受け止め、生活のため子供たちのため、パートには出ていましたが、定職を探し始めました。
浮気夫のいない家で暮らしていること。
幾分、ほっとしている自分に気が付いた。
辛いのは、子供が「パパは?」っていう言葉を発したときでした。
「今は別居中ですが、どうなるかわかりません」と、何度かお会いしたなか、それが最後に目前で聞いたお声でした。
ただ、前よりも微笑んでいる顔を見て、少しほっとした私でした。
それから半年たった頃でしょうか。
一通のメールがきました。
離婚が成立しましたと。
抜粋しますが、
私は後悔していない。
それよりこのことがあって、夢がかなったんだと。
子供たちのため、それと自分自身のため、頑張ってやった職探しで、
ずっと夢に描いていたやりたかった職につけて頑張り始めたという内容でした。
夢がかなってよかったです。
微笑んでいる顔だけが浮かんだ瞬間でした。