こんにちは
30年以上悩んで克服した経験から伝えられることがあります。
カサンドラ症候群・家族関係専門カウンセラー 紺よう子
プロフィールはこちらです
このところ、カサンドラ症候群についてお伝えをしていますが今回は
人に欠かせないもの
をお伝えして、
その結果としてカサンドラ症候群のおそろしさをお伝えします。
今から800年ほど前に、ローマ皇帝フリードリヒ2世が行ったといわれている人体実験をご存じでしょうか。
忌むべきその実験とは…
50人の赤ちゃんを隔離し、
一切の語りかけやスキンシップなしに育てさせたというものです。
その際に乳母たちに課された条件は、
「目を見てはいけない」
「笑いかけてはいけない」
「話しかけてはいけない」、
そして
「十分なミルクを与える」
「お風呂に入れる」
「排泄の処理をする」
でした。
つまり、衣食住の世話はするけれど、それ以上の交流をしてはならないというものでした。
そんな環境で育てられた赤ちゃんたちは、一年後どうなったと思いますか?
………
なんと、全員が一年以内に死んでしまったそうです…
この残酷な実験結果が示すものはなんでしょうか?
赤ちゃんが育つには、
物質的な栄養だけではなく、精神的な栄養も必要だということですね。
相関関係については様々な解釈が散見されますが、
これ以外にも類似の人体実験は複数今に伝えられています。
スキンシップをすることで成長ホルモンが分泌されて免疫力や抵抗力が高められるので、
その欠落からくる障害によるものだという方もありますが、
これは赤ちゃんや子どもに限ったことではないと思います。
人が生きるためには「愛情のエネルギー」が必要です。
いくら栄養や金銭が十分であったとしても、
無表情で心の通い合わないロボットや壁のような存在と生活していたら、
肉体の前にまず心が死んでしまいます。
それは、小さな赤ちゃんにとっては命を奪われるような致命的なエネルギー不足なのです。
わたしたちは、身体へのエネルギーはカロリー、
つまり数値として認識して、足りなければ補充しますよね。
そして身体の状態を知るには体重や検査結果の数値など、目に見える指標があります。
では、心はどうでしょう?
同じように心にもエネルギーが必要なのに、
こちらは目に見える数値による把握ができず、
状態に警告ランプが点滅して悲鳴を上げていても、
理解されることや、まして適切なケアやエネルギーの補充に繋がることは稀に思えます。
特に日本においては心というものの知識が不足しており、
それゆえの体制の不備は、自殺者数の多さを見れば明らかなことです。
(ちなみに厚生労働省のまとめによると、2021年の全国の自殺者数は1年で2万1007人。
これは東日本大震災で犠牲となった死者1万5900人よりも多い数字です)
子どもでも大人でも、心には水やりや手入れ、丁寧であたたかな情緒的交流が必要です。
いくつになっても、
「共感してもらえない」
「自分が大切にしている価値を大切にしてもらえない」
という生活は、心が枯れて死んでしまうほどの苦しみなのです。
それがどれほどの凄烈な苦しみを伴うものなのか、
一人では到底抱えきれないその重荷に、
さらにカサンドラ症候群では周囲に理解されない孤独が加わり、
心と身体が死とすれすれのところに追いやられてしまうのです。
当事者も周囲も、この症状を決して軽く捉えず深刻に受け止め、
腰を据えて根本から対策や解決に取り組んで欲しいと思います。
表面的でその場しのぎの対策では到底解決せず、
いつまでも再燃を繰り返します。
カサンドラ症候群に陥った女性たちは、
頭のてっぺんからつま先まで絶望にどっぷり浸かり、
正常な判断はできなくなります。
自分で死を考えた、あるいは相手を殺したいと思ったことがない人はいないでしょう。
残念ながら日本ではまだ人々の生活圏内にカウンセリングやセラピーが根づいてはいません。
社会制度が整ったり専門家が育つのを待たなくても、
人々の意識や関心が高まり、
寄り添う気持ちのある人が一人でも増え、
さまざまな支援が広がり育っていけば、救われる人は増えるでしょう。
苦しんでいる人が孤立せず、助けを求められる場所が増えますように、
そんな社会になりますように、そう願っています。
「カサンドラ症候群とは何か」 詳しくはこちら
夫の共感性に問題があるために、
妻が鬱やストレス性の心身の障害を抱えるに至ったものを「カサンドラ症候群」と呼びます。
1988年に臨床概念が世に出たばかりですが、
近年発達障害の急増から認識が広まり、
またコロナ禍における生活変化の影響も波及して
「もしかしたらうちの夫も」と多くの女性が気づくようになりました。
それ以前は、
原因が分からないまま妻側の問題として「ヒステリー」や「悪妻」と呼ばれることすらありましたが、
ようやく問題の構造が明らかになってきたということです。