先日東京に6日間滞在して、美術館を回ってきたのですが、某プライベート美術館を訪れたときのこと。

 

話の内容から美術館の関係者(あとでネットをみたら、その男性は美術館のCEOでした)が、美術界に詳しいと思われる高齢の男性に展示作品の説明しながら館内で大音量で「美術館こそこそ噂話」をしていたんです。

 

話の内容は、鑑賞者全員に筒抜け状態。

 

「ふんふん、この作品は美術界のゴタゴタに巻き込まれて憂き目をみたあと、ようやく日の目をみたのか」などと、アート業界のドロドロな裏側を垣間見ることができたのですが…

 

わたしが「この絵、綺麗だなぁ」ってある某ユニットの作品の前に立って鑑賞していましたら、背後に立ったCEOさんが言ったんです。

 

「こいつら、3年ももちませんよ。政治的な思想でも持たないと」

 

笑い声。

 

わたし、それを聞いて思いました。

 

美術を鑑賞する方法は立場によって異なるんだな。

 

私の場合ですが、作品はシンプルに感じることができたらいいなと思っています。「心から自分が喜べばよし」という立場。好き!興味ない!気になるー。というものさしでアートを楽しむ。ある意味お気楽な鑑賞者です。

 

本日は、そのようにゼンタングル認定講師としてアートを楽しむwami が、美術館を訪れたときの、おすすめのことあれやこれ。を6つ、厳選してご提案してみます。

 

ぜひ、取り入れてみてくださいね!

  楽しみ方その1:感じるか、感じないか。それのみ。イメージの洪水に出会うかも

わたしはなにかの表現を鑑賞するときに「感じるものがあるか、感じないか」。それのみです。感じなかったからといって、その対象がよくないとか劣っているというわけではなく…自分の中で「反応するものがあったかどうか」というのを大切にしているので、そうなります。

 

ですので、美術館にいったときには丁寧に全作品を鑑賞するのではなく、興味ないものや感じないものは、スルー。

 

 たた、感じないものには感じない分、感じるものには、とことん感じることも。

 

例えば、今回、草間彌生美術館を訪れたのですが、屋上でかぼちゃの作品をみたときに、感じたことがありました。雑誌などで見かけて「斬新なデザインだな」しか思ってなかったんですが、実際にその作品の前に立ってみると。

 

ドーン!

 

大小の異なるドットが隣り合ったり、ドットが反転するさまをみて、凄まじいナニカを感じたんです。それは洪水のようで。

 

「大きいドットのみ、小さいドットのみだと意味がない。人にはいろいろな違いがあるけれど、違うことでお互いが引き立つ。この違いが美しさを生み出すんだ」

 

「黒と黄色が、かぼちゃのヘタの部分で逆転してる。ヘタではドットだった黒が背景に。背景だった黄色がドットになっている。人というのは、場が異なれば立場が逆転することもあるんだ」

 

こういう言葉のイメージのようなものが一瞬で心に押し寄せて。アップアップになってしまいました。

※草間彌生美術館で撮影

 

もしかして、他の人にはクールなかぼちゃかもしれません。ですがわたしにとってはこのかぼちゃは「メッセージの塊」。触れたことで視野が一気に広まりました。

 

草間彌生さんがどのような意図でこの作品をデザインされたかはわかりません。わたしがそう感じたから感じただけなのですが、ときにそういう衝動的な心的経験が生じるのが、アート鑑賞の醍醐味の一つだと思っています。過去に一度同じ体験をしたことがありますが、それは、岡本太郎さんの作品でした。

 

作品には作家の思いのようなものがこめられていて。鑑賞者はときに「圧倒的なナニカ」を感じることがあるのかもしれませんね。

 

感じることを大切にしていれば、洪水レベルのパワフルな作品に出会えるかも。

 

  楽しみ方その2:自分が好きなアートの傾向を知る

いつでも、すぐに。多くの美術館に行ける方でしたら、いろいろな作品に触れることもできるかと思うのですが、わたしのように旅先で鑑賞する場合。特に選択肢が多くあるときには「何を見るのが選ぶ」必要性が生じます。

 

そんなときに役立つのが「自分が好きなアートの傾向」。それを軸に行き先を決めればよいわけです。

 

わたしの場合は、現代アートが好き(最近気づきました)言い方を変えると「伝統的ではないもの」なのかも。

 

日本では岡本太郎さんや草間彌生さんのようにインパクトのあるもの、海外では、バンクシーのようなメッセージ性の強いもの。また、作家の奥にある感覚を表現するようなシュルレアリスムと呼ばれるものの系統やパウル・クレーといった抽象絵画も好き。クリムトの妖艶な作品も。

 

なので、今回限られた時間で東京の美術館をまわるのにあたり、自分の好きな系統の展示会をメインに選択。上野にいっても、国立西洋美術館はスルー。

 

有名であるとか話題になっているといった理由で鑑賞するより、自分が求めているものに関わりに行く。

 

という、能動的な姿勢がよいのではないでしょうか。

 

好きなものに触れると心が喜びます。アートにおいては自分の心に正直になることって大切。

 

  楽しみ方その3:自分でタイトルをつけて遊ぶ

 

中学生の頃、国語のテストの問題が嫌いでした。「このときの主人公の気持ちはどのようなものだったのでしょう」って。「そんなもの、本人にしかわからんよ」って思ったのだけれど、立場上、テストの点数を稼ぐために「これを書いたら正解」になる回答をしてみたりする。ああ…そんな自分が嫌。

 

そういうテストを経験してきた人が、そのことに違和感を持たずに大人になったら。表面的な言葉のみで「あの人はこう思っているのよ」とテストの回答のごとく、勝手に他人の気持ちを断言したりするようになるかも。そんな、病的な人が大量生産されるんじゃないか?と心配になったりもして。

 

人が何を考えているのか、どんな気持ちなのかってわかりません。ときには自分のことですら。

 

美術鑑賞に対しても同じスタンスです。作家さんが表現したものを言い当てる必要はないと思うんです。わからないと思いますし。それを理解した上で、自分だからこそ感じたことが正解としています。

 

例えば抽象画を見たときには、その場で自分でタイトルをつけてみたりします。そのあとタイトルがある作品であれば、作家のものと照らし合わせる。イメージがあっていたり、ぜんぜん違うものだったり。それは、そういう違いを楽しむんです。

 

じゃあ、具体的に、どういう風にすればよいの?

 

今回、東京都美術館でデ・キリコ展を訪れたのですが、そのときに彫刻コーナーで楽しんだ方法をご紹介してみますね。それは、彫刻をみてイメージと色をタイトルにする遊び。

 

例えば、ある銀メッキのブロンズ彫刻の前でぱっと浮かんだのが色は「オレンジ」。雰囲気は「自信あるある男」。なので「オレンジ色に輝く自信過剰男」

 

次に名付けられたタイトルをみたら「吟遊詩人」とありました。わたしはちょっと自信過剰なポジティブ男を想像したけれど、デ・キリコは陽気な詩人をイメージしたのかな?

 

そんな感じで表現者と鑑賞者の間に生じた感じの違いを確認する。

 

感性をフル活用して遊びましょう。

 

 

  楽しみ方その4:なんちゃってキュレーターになったつもりで自分で作品を選んでみる

キュレーターのお仕事のひとつに、美術館などで資料の研究・収集・展示などを行うということがあるです。

 

複数の美術館を訪れたときには、なんちゃってキュレーターになってみるのはいかがでしょう。

 

「自分だったら今まで見た中からテーマーをきめて展示するのだったら何を選ぶだろう。そして、どう企画して展示するだろう?」って考えて作品をチョイスしてみるんです。

 

例えば、撮影可能だった絵の中からあるテーマに沿って画像を選び、一か所にならべてみる。妄想なので、しがらみもありませんし、コストもかかりません。

 

わたしは、今回9か所の美術館を回ったあとに、その中から「瞳」というテーマで脳内展覧会を脳内企画。閉じているもの、輝いているもの、空洞になっているもの。いろいろな作家さんによるしまざまな瞳があるんですよね。

 

「描かれた瞳はただの球ではありません。作家の心の宇宙の窓なのです」とかなんとか意味不明なそれらしい説明もこしらえたりして、遊ぶ。

 

そして、鑑賞者にいろいろ感じたり考えてもらうことを想定して展示方法を考える。そんな妄想。

 

 自分でそれをすると、展示の意図ですとか、何を伝えたいかとかを意識するようになると思います。

 

企画・展示する側にも立ってみましょう。鑑賞方法に奥行きが生じます。

  楽しみ方その5:アートショップで買い物をする

一つだけでもよいので、これ好き!これから何か感じる!ぎょっとした!といった心が動く作品にであえたら。ミュージアムショップでそのポストカードを探してみましょう。わたしはいつも、1枚は買うようにしています。

 

また、アートショップではデザイン性が高かったり遊び心のあるアイテムもそろっていますよ。それもまた、アート鑑賞のようなもの。

 

今回は、ミュージアムショップで購入したアイテムご紹介しますね!

森美術館のミュージアムショップで購入した

 

 

(air vace)です。これは何かといいますと、形を自由に変えることができる24色の紙の器。

色とりどりの丸い形の紙がはいっており、切り目が入っていて。びよーーーん。と伸びます。伸びるとどうなるの?

こうなります。かごみたいな感じに。自分の作品をいれてみたり

エアープラントのお部屋にしてみたり。伸ばし具合で高さも調節できて、自由自在に色と形で遊べます。

 

もしお気に入りのアイテムがあったら、思い切って購入してみましょう。お部屋がアート空間になりますよ。

 

  楽しみ方その6:帰宅後なにか一つ表現してみる

表現活動をしているのなら、鑑賞で得たものを自分の作品に活かしてみることも

 

わたしはゼンタングルという幾何学模様のアートを楽しんでいるのですが、帰宅後、こんな感じで作品にしてみましたよ。

こちらは、森アーツセンターギャラリーmuca展のカウズの作品。(タイトM4かM7。どっちだったかなぁ…)

 

これをゼンタングルでいうストリング(アウトラインのようなもの)にして一枚描いてみるとこうなりましたよ。

「カウズからの一枚」

お気づきの通り、同じに描くというわけではありません。(私の場合は、真似しようとしても描けませんが!)

 

なんだかおもしろそう!気になる!という作品を見つけたら、その一部を利用して自分の表現方法で一枚描いてみる。

 

線を利用してみたり、色使いを真似てみたり、似たようなテーマで自分でも描いてみたり。…それならできそう!って思いませんか?

 

自分の技術を総動員させて、視たものを自分なりの方法で活用してみましょう。

 

 

心に栄養を

 

 

本日は、美術館の楽しみ方あれやこれを6つご紹介してみました。

 

時間は有限。

 

できれば、心の栄養になることに時間を使いたいものですね!

 

以上、ゼンタングル認定講師wamiによる、美術館のおすすめな楽しみ方6選でした☆

 

※今回、立ち寄った美術館は、草間彌生美術館、東京都美術館、東京都現代美術館、森美術館、森アーツセンターギャラリー、21-21DESIGN SIGHT、サントリー美術館、東京国立近代美術館、某プライベート美術館。の9か所です。