講義する | 小森陽一オフィシャルブログ「一期一会」Powered by Ameba

講義する

依頼は昨年のこと。
「学生に向けて、創作の話、物語の発案や形作るプロセスなどを話して欲しい」
そんな事だったように思う。


打ち合わせに来られた先生方と話をする内、ゼミを受講している学生さんが総じて将来作家希望ではなく、中には商品を展開していきたいという思いを持っていることを知った。それならばプロデューサーを呼んではどうかとお伝えした。そうすれば0~1を僕が担い、1~10をプロデューサーが担う。より分かりやすく、幅広く話を展開させることが出来ると思ったからだ。

九州大学大学院芸術工学研究院のナラティブデザイン講座、年度の締めとして、僕と安藤プロデューサー(アンチカさん)はこの時期としては暖かい晴れの日にキャンパスに足を踏み入れた。

講義は90分×4、これを一日でという学生さんにとってもこちらにしてもなかなかハードな内容だ。僕は講義のテーマをあらかじめ提出しておいた。一限目は経験を交えながらの自己紹介、二限目でお題として出しておいた物語を企画書に展開する、三限目と四限目で学生の企画書を論評する。

お題のテーマは五つ、「一瞬で褪めた」「信号無視」「公園のトイレ~夏~」「手を振る人」「目覚めたら二年経っていた」。もちろん僕なりになんとなく頭に浮かべた物語を持ってはいたが、果たして学生さんがこれをどう扱うのか、とても興味があった。

しかし、講義の直前、思いがけない出来事が起きた。「セクシー田中さん」の作者さんが亡くなれたという悲劇だ……。


悩んだ挙句、僕は一限目の講義内容を変更することにした。作家とプロデューサーが揃った場において、もし、素知らぬ顔で自分の作品を語るような振る舞いをすれば、それは講義を聞きに来た学生さんに不親切ではなかろうかと思った。自分の身に起こった出来事を交え、作家が見ている(見えている)世界とプロデューサーが見ている(見えている)世界とを生の声として伝えた。将来、学生さん達の一粒の糧となるように願って。


その後、学生さんの書いた物語を発表してもらった。中身はどれをとっても素晴らしいものだった。これはお世辞ではなく、正直なところ衝撃すら受けた。お題としっかり向き合い、自分の想いを言葉に乗せて表現してくれていた。発表はどんどん熱を帯びていき、こちらの論評にも力が入った。気がつけば外はとっぷりと陽が暮れ、外灯の明かりに代わっていた。

「凄く楽しいです。また来年も講義に来てください」
話し終えた学生さんがその場で投げかけた言葉に、僕もアンチカさんも手応えと喜びを感じた。

沢山の力を貰った。こちらこそ皆さんにありがとうと言いたい。



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