光が生み出す人生 | 小森陽一オフィシャルブログ「一期一会」Powered by Ameba

光が生み出す人生

試写二本目。今回はイギリス映画、「エンパイア・オブ・ライト」です。


出だしのワンカットから息を呑みました。取り立ててどうという事もない部屋の中なのに、すーっと惹きこまれていく感じ。フィルムに焼き付けられた色がなんともいえず美しいんです。光や空気がそのままそこにあるような感覚。あぁ。これはいい映画だなと思いました。

監督はサム・メンデス。007シリーズ「スカイフォール」や「スペクター」という娯楽大作を撮った方です。でも今回は真逆のベクトルで作品が創られています。パンフレットを読むと、ご自身の青春がベースになっているそう。80年代イギリスの混迷、失業率は高く、黒人差別が横行し、フーリガンが暴れ、サッチャーの台頭で権威主義的な風が吹くといった時代背景です。監督自身も移民だそうで、母は看護師として、父はバスの運転手として働いていましたが、父はいずこともなく失踪し、ずっと母と二人暮らしだったそう。おそらくいろんな事に傷つき、かつ、助けられもした人生だったんだと思います。

だからでしょうか。この作品も一概に面白いとは言えません。半ば過去の栄光を背負ったようなエンパイアという名の映画館を舞台に、人種差別、中年女の孤独、純粋な愛(のような形)が描かれます。ハッピーでもなければそれほど哀しくもない。色んなことがあるけれど、それでも人生は続くという普遍的なことが淡々と描かれます。

「映画は24コマの静止画。これに光を当てて廻してやれば、鮮やかに動き出す。まるで人生のように繋がっていく」

本作のテーマが美しいカメラワークと心に寄りそうように流れてくるメロディーに包まれます。映写技師役のトビー・ジョーンズがとてもいい味を出していました。世界には知らないだけで素晴らしい役者さんが沢山いますね。



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