満了 | 小森陽一オフィシャルブログ「一期一会」Powered by Ameba

満了

「オズの世界」の出版報告とお礼を兼ね、熊本県荒尾市の遊園地、グリーランドを訪れた。小説の中では東洋スーパーワンダーランド、略してTSWという名前で登場する遊園地、その大部分はここ、グリーランドをイメージして書いたものだ。

社員の皆さんの反応は、取材に全面協力していただいた小柳氏よりある程度聞いてはいた。とても喜んでいただいていると。……だが、自分で確かめるまではやはり不安だ。なにしろ「田舎」だとか「無駄に駐車場が広い」とか、それこそ言いたい放題、書き放題をやってしまっている。しかも、この日は夜半から天気は大荒れ、担当Aの飛行機も遅れに遅れるくらい低気圧が発達した。福岡から熊本へ電車で向かう際も、冷たい雨とどんよりした空が陰気さ加減を増している。どうやっても気分は上向きになれなかった。
だが、着いてみると雲間から太陽が覗いていた。風も止み、実に穏やかだ。ニコニコ顔で出迎えていただいた宮川社長を見た途端、肩の力が抜けた。
『あぁ、怒ってない』
それが伝わる満面の笑みだった。



「なぜ、遊園地の物語を書こうと思ったのか?」
新聞やテレビの取材を受けながら、本当のところ、どうだったんだろうと当時の記憶を辿った。きっかけは間違いなく小柳氏だ。彼が飲みの席で聞かせてくれた遊園地時代の想い出は、とてつもなく面白かった。エレファントショーも爆弾事件も原寸大ウルトラマンも、ベースはすべて事実に基づいている。あの日、あの話を聞いていなければ、この物語は生まれてはいなかっただろう。……だが、種はずっと以前から心の中にあった気がする。子供の頃、両親に連れられて来た記憶。自分が親となって子供を連れて来た記憶。この遊園地にはいろんな年代の記憶がある。そんな記憶の種に水が与えられ、爆発的に発芽したのかもしれない。



社長を始め、社員の皆さんが口々にヒロインの久瑠美やクセのある小塚、姉御肌の弥生の話をしていた。僕が生み出したキャラクターはもう、リアルに飛び出して皆さんの中で生きている。そのことを想った時、ストンと気持ちが落ち着いた。ここに無事、満了。実に清々しくそう思えた。



▼公式ウェブサイト
http://www.y-komori.net/

▼小森陽一プロダクト ウルトラマンガレージキット
http://www.y-komori.net/garagekit/

▼Facebook
https://www.facebook.com/yoichi.komori67