追悼 レスター号 | 小森陽一オフィシャルブログ「一期一会」Powered by Ameba

追悼 レスター号

「もうレスターが危ないです。明日の朝まで持つかどうか……」
警視庁の山川警部補から3日の夜、そんな電話をいただいた。レスターとは警備犬だ。いわゆる警察犬とは異なり、人命救助や爆発物の検索をしたり、犯人を制圧したりする。首輪の種類によって人を助けもするし、人に立ち向かってもいく優秀で勇猛な犬達。その中でもレスターは僕がもっとも印象に残っている存在だ。



2004年に発生した新潟の中越地震。僕は少年マガジン編集部の依頼を受け、ドキュメントマンガを作る為に東京消防庁のハイパーレスキュー隊を取材した。その際に見せられた現場の写真には、一頭の犬が写っていた。土砂の中から幼い少年の匂いを嗅ぎ分け、真っ先に生存を伝えたのはレスターだった。
『レスターってどんな犬なんだろう……』
以来ずっと頭の奥にそのことがあった。



その後、山川警部補と知己を得て、警備犬訓練所でレスターに会うことができた。茶色い毛並みのジャーマンシェパード。他にも沢山の犬達がいたが、やはりレスターは別格だった。颯爽として見えた。目が合うとこっちがドギマギしてしまう。そんな雰囲気が全身から漂っていた。



その後も何度か警備犬訓練所に足を運び、その度にレスターを見た。訓練をしているところ、犬舎でゆったりと休んでいるところ、トイレのシーンにも出くわした。レスターはチラリとこっちを見るが、それでお終い。その視線は常にハンドラーに向けられていた。こちらの羨望など一向に介していない。ひたすらハンドラーの素振りだけを見つめていた。その印象をそのまま『DOG×POLICE』という作品に反映させた。ハンドラーと警備犬との圧倒的な絆、レスターを見てそのことを存分に描きたいと思った。



レスターは災害や警備の現場に408回出動し、沢山の仕事を成し遂げた。そして、13歳で天国へ旅立った。警備犬の歴史に残る名犬に、心から感謝を捧げたい。



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