憧れる | 小森陽一オフィシャルブログ「一期一会」Powered by Ameba

憧れる

世に才能を持った人はごまんといる。スポーツ選手、料理人、ロボット製作者、宇宙飛行士などなど。もちろん、僕のいる世界にも沢山溢れている。そんな中で、時に憧れの気持ちを抱かせる人がいる。その一人がマンガ家の漆原友紀さんだ。

以前、このブログでも「蟲師」に触れた事がある。初めて読んだ時は正直、よく分からなかった。ふわふわしていて掴みどころがない。キャラクターにも感情移入し辛い。だが、巻数を重ねていくうちにいつのまにかどっぷり浸っていた。



『およそ遠しとされしもの 
下等で奇怪 見慣れた動植物とはまるで違うとおぼしきモノ達
それら異形の一群を ヒトは古くから畏れを含み
いつしか総じて「蟲」と呼んだ』

世界観が秀逸である。蟲と呼ばれる異形の存在を土台に、時に巻き込まれ、時に愛で、時に命を奪われる市井の人達が、一人の人物を通して描かれる。それが蟲師ギンコだ。ギンコは旅をしながら蟲の生態を調べ、時に蟲に巻き込まれた人達を見かけると、緩やかに関わっていく。取り立てて熱くもならず、かと言って醒めてる訳でもない。淡々と、淡々と。

どこをどう押しても、僕からこの世界は生まれない。だから、いつしか強い憧れを抱くようになった。僕の熱が伝わったのか、気が付けば娘もギンコの似顔絵を書いてたっけ。

漆原さんには「水域」という作品もある。ダムに沈んだある村の、そこにまつわる人と伝説。そして、数世代に纏わる物語。ここには肯定も否定もなく、その人の行動と感情が記されていく。やはりこれも同じだ。淡々と、淡々と。



世の中は才能に溢れている。でも、憧れまで感じる事は少ない。歳のせいもあるのかもしれないが。漆原さんの描く作品は、数少ない惹かれる空気に満ちている。



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