百回

正直に告白すると、こんなに続くとは思っていなかった。というより、続けていけるかどうか、不安だらけで先を見る余裕なんて全然なかった。特殊部隊、警備事案、守秘……。何もかもが秘密のベールに隠されて、こちら側には見えない。見えるものは世間に公開を許されたものだけだ。そんな題材を扱って、本当に話を作っていけるのか？　普通は連載日が決まったら喜ぶものなのだが、この作品に限ってはそんな気分にはならなかった。
「どうしよう……」
不安だらけの船出だった。

２００８年６月２４日。僕の手元に残るプロットの日付だ。タイトルは『ボクサー警官』。

神御蔵　勇太郎（かみくら　ゆうたろう）、２９歳。
職業、プロボクサー。
リングネーム、「ミクラス勇」。
勝敗、２８戦８勝（判定）２０敗。
生涯一度のＫＯ勝も、なし………。
そんな男がなんと、『警察官』になった――――。

これが残されたもので最も古いプロットである。そして、「Ｓ」はここから始まった。

記念すべき１回目の連載は、２００９年８月２５日。表紙はイモトアヤコさん。珍獣ハンターとして世界を駆け巡るイモトのように、「Ｓ」も世間に羽ばたく存在になって欲しい……と思ったかどうかはもう忘れた。ただ、「一回目の表紙にしてはやたらインパクトあんなぁ……」と思った事は覚えている。





次の節目は５０回越えを果たした時。２０１１年の１７号。常に香椎の隣に寄り添う静かな副官、速田仁の過去を掘り下げた。夢中で警視庁捜査一課の取材をやったっけ……。でも、こちらも決してオープンな組織ではないから、この時もまた色んな人にお世話になった。



そして１００回目。２０１３年９月２５日。表紙はキッスのボーカル、ジーン・シモンズ。またもやとんでもないインパクト！　「よりによって記念号がコレかよ……」と、思わず担当に愚痴を言った。この感じだと、次の節目は一体どんな表紙になるのやら、先が思いやられる……。



ともあれｅｐｉｓ０ｄｅ１００　『悪魔の種』はスタートした。横川の父、勇太郎の登場。蘇我伊織が一日たりと忘れた事のない因縁の相手。３Ｄプリンター銃、ジャンボジェット機――。色んな事を飲み込んで大いなる悪魔の種が芽吹く。その時、果たしてどんな事が起こるのか？？？　う～ん、煽ったはいいが、どんな事が起こるんだろう……。きっと色んな事が起こるんだろうな。きっとそうに違いない。



藤堂裕という天才的な画師と出会わなかったら、この日は迎えられていない。
担当Ｋが背中を押してくれなかったら、この日はやっては来なかった。
その事を忘れず、次の節目に向かって行ければと思う。

……でもなぁ、どこまでやれっかなぁ。ほんとにこれ考えるの、難しいんだもん。

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