猛烈な痛み。
全身に刺さった針を、無理やり一斉に抜いたみたいな。
甲高く、断末魔のような叫び声をあげて、ぼくは意識を取り戻した。
ぼくの最初の記憶。
そう、それは、その猛烈な痛みだったんだ。
後から聞いた話だと、緊急入院の2日目に、もう助からないかもとお医者様から宣告されたぼくの両親は、良くて植物状態、かなりの可能性で亡くなるだろうぼくのお葬式の準備を始めていたんだって。
お父さんの会社の人がいろいろ動いてくれていて、動揺からか何も手につかないお父さんお母さんに代わって、お寺の手配にお通夜やお葬式の日取り、連絡の手はずとかもしてくれてたみたい。
そんな最中の2日目。もうこれ以上は無理ってとこまで膨張していたぼくの脳が収縮に転じた。
お医者様も奇跡だって言ってくれたそうで、あわててお葬式の手配を止めることになったって、だいぶ後になって聞かされたんだけれども、なんだかなあって思った。
だってそうでしょ?
ぼくがぼくでなくなって、ほんとかどうかも分からない中刷り直しを強要(その頃はそう思ってた)されて、ようやく納得というか、諦めに近い感情でぼくとして生きてくことを決めたのに。
そこまで用意されてたぼくではないぼく。
もしかしたら、いまのぼくではないぼくはほんとは死んじゃってるのに。ぼくではないぼくのお葬式はしないで済んだって喜ぶまわりの人たち。
折り合いをつけて、たぶんお父さん、たぶんお母さん、たぶんお姉ちゃん。そう意識的に刷り込んだたぼくは、喜ぶみんなの顔が曇らないよう、ぼくだけが心の中で、ぼくのことを弔ったのを覚えてる。
話がそれちゃった。そう、あのとてつもない痛みでぼくは覚醒した。
その痛みは、体中に付けられた管を抜かれる痛みだったみたい。ほんとはそんなに痛くないよう、お医者様が気を付けてくれてたんだと思うけど、とにかくとっても痛かったことだけ覚えてる。
そうして目を覚ましたぼくは、なにもかも忘れ(ほんとに忘れたのかは未だに判明が付かないが)、自分が誰なのか、周りの人たちは誰なのか、すべてがもやっとした霧の中にあるみたいな。思い出せ思い出せと迫る人たちが怖くて。でもなぜだか話す言葉は分かるし、文字も読めたし、考えることもできたから、ぼくはいいこになることにした。
このひとはお父さん
このひとはお母さん
このひとはお姉ちゃん
ぼくを演じるぼくの舞台が幕を開けた。