丑三つ時。
お腹がすいて、こころなしかさみしい気持ちになったので、お茶を入れることにする。
ほうじ茶とアールグレイのミルクティ。
前者は湯呑みに、後者はカフェオレボウル替わりに使っている大きめのお茶碗へ。大輪の椿が咲く、まあるい、ほどよく手になじむ、お気に入りの茶椀である。
猫舌にはややつらい、淹れたてのお茶を、ふうふうと冷ましながらすする。ほんの一瞬、喉もとがぼわりと熱くなり、またすぐに大人しくなる。
椀を包み込む手のひらは、ぼんやりと熱い。子どもの頃、長いこと雪玉をつかんでいたあとの、手のひらがじんじんと痛む感触を思い出す。あのかんじに、ほんのすこし、似ているのだ。
ほうじ茶とミルクティを交互に飲む。
そういえば、以前、近所の喫茶店でほうじ茶ミルクティなるものをいただいた。
意外な組み合わせに驚いたが、おどろくほどに美味しい。
和柄のきれいなお茶碗に、なみなみと注がれたお茶。かぼちゃとアールグレイのスコーン。ミルクジャム、ブルーベリージャム。スコーン用と、お茶用、それぞれにクロテッドクリームがたっぷり。
目の前には、気の置けない友人がいる。
大切な人とともにするおいしいお茶の時間は、たいへんに楽しい。
夜中にひとりでするお茶は、すこしさみしいけど、なんだか秘密めている。
ぴしり。
たまに家鳴りがする。
音のしたほうをしばらくじっと眺めてみるけれど、だれもいない。なにもない。
ぴしり。
ぴしり。
けれど、音は続いている。
本当はだれかいるのかな。いったい、どこにいるのだろう。
暑いので、開け離していた窓から風が入り、カーテンがふわりとひるがえる。続いて、網戸がカタカタ鳴る。
すこしだけ、なまあたたかい気配。
目の前には、ふたつの茶碗。ほうじ茶とミルクティ。もう、あらかた飲み干してしまった。
ぴしり、とまた家が鳴る。急かすようだな、と思う。
重い腰を上げ、台所へ。
椿のほうの茶碗を軽く洗って、お湯を沸かす。
お気に入りの茶椀だけど、仕様がない。貸してあげよう。
ぴしり、カタカタと歓声のように音が鳴る。
ひとりでするお茶も悪くないけれど、誰かと楽しむお茶の時間にはかなわない。