「はい」
顎をつまんで考えていた僕の目の前に
でっかいふかし芋が差し出されました。
よく僕に声を掛けてくる東の女の子、
たしか"サオちゃん"と"アイちゃん"のどっちか。
「あ…ありがとうございます。」
一応受け取ったけど
"で、でかいな
"と呟きました。
「デカすぎ?半分こしよっか」
その子はそう言って、また自分の手に
芋を戻して3分の1くらい折りました。
「沙織さっき小さいの食べたから
こっちね」
3分の2の芋がまた僕の手に返されました。
"サオちゃん"の方か。
自分のことを名前で言うなんて子供っぽいけど
名前覚えてなかったからなんかホッとしました。
"サオちゃん"はそのまま僕の隣に座って
芋を食べ始めたんです。
「似合わないね〜
美形とイモ。」
「美形⁉︎」
「東京じゃ"美形"って言わないの?
なんて言われるの?」
「何にも言われないよ。
学校ずっと行ってないですし。」
「なんで今だにですますなの?
学年同じだよ?
央雅君て変わってるよね。
ぜんぜん笑わないし。
顔がいいから表情乏しくてもいいんだけど。」
ギョッとしました。
そっちこそ変わってんだろと思いました。
そんなこと普通直接言わないだろって。
でも確かに僕はその時も
表情は変えませんでした。
というか、変えられませんでした。
僕は昔から驚いた時とか
不快だった時、
顔に出さない癖がついてるようなんです。
特に学校のような場所では。
笑わないというのは
意識してませんでしたが
面白い、嬉しい、と思っても
それを大げさに表現するのは
わざとらしい気がして好きではありません。
どうしても必要な時はやるけど
って感じです。
サオちゃんが言った
"変わってる"ていうのは当たってます。
"表情が乏しい"ていうのは
はっきり言われたことはありませんでしたが
きっとそれも当たってるんでしょう。
「だいじょぶ、だいじょぶ、
食べなよ。
似合わないけど
央雅君はイモ食べててもかっこいいから。」
サオちゃんはなおも隣に居続けて
話しかけてきます。
「うちびっくりしたよ
央雅君て頭もいいんだね。
向こうでもモテてたでしょ。」
「モテ…た時期もあったかも…」
あれ?今度は自分のことを"ウチ"って言った。
こっちの女の子はそう言えば
"ウチ"ってみんな言います。
「あそっか、学校行ってないから
最近はモテてなかったんだ!」
サオちゃんは僕にとっては
初めての無遠慮さで面食らったけど
不快ではありませんでした。
そうか、さっきは僕が
名前がわからないだろうと
わざと自分の名前を出したのか…