「美津子おばさん、なかなかの力作だとは
思うんですがーけっこう統一感
ないですよね?」
とうとう僕はおばさんに物申しました。
「あれ、だって元々日記やで、私もだけど
キフネ様だって人に読んでもらうつもりで
書いてないんだからー
一貫性なんか考えてないさね」
「いやいや、おばさんは誰かに読んでもらう
つもりで書いてますよね?
「あは、あは、途中からな。
そんなにひどかったかねえ?
なにしろ学生の頃に書いたから
忘れちゃったわー。あの頃は自信を持って
書いてたんだけどなあ?」
「急に自分のこと"僕'っつっちゃってたり
するし」
「あら央雅、
書いてあることはほぼ原文にあることよ
表現は確かに…だんだん崩れてってるけど
キフネが自分の気持ちを書いてる部分は
確かに"僕"が合ってるのよ。」
そう言ったのはママ。
ママはキフネ日記の原本も読んでみたのだ。
ママにまで言われて美津子おばさんは
ギョッとしたように
「崩れていってるかねぇ?
自分じゃノリノリで書いてただけなんだけど」
ママは美津子おばさんの肩を叩いて
「わかる、わかる
書いてるうちにこっちの想像が
侵食してくのね。少年はこう考えたに違いない
とか、反抗心がなかったはずがないとか」
と言いました。
すっかりもう友達同士みたいです。
「僕はキフネが普通すぎて拍子抜けだなぁ
ぜんぜん神がかった力のエピソードがない。」
「そりゃ本人が日常を書いてるからよ。
多分ちょっと勘がいい程度のもんだから
他人が見ればなかなか鋭い子に見えても
本人にすれば"先読み"って言われるほどの
ことが起こらなくて
それでいて周りから期待を寄せられて
プレッシャーかけられて
ただただ不安の日々だったんじゃないかね」