イトナ様は庭へは出ておいでにならなかった


タケリやキクチも姿を見せず

イオエだけが萩の花の咲く一角で待っていた


「こちら側へきたのは初めてです」

吾と同い年の少女は東よりもずっと花々が多い南の庭に落ち着かなく見回しながら言った

「金木犀ですよね、こちらもよい香りがしますね」

「金木犀は東にもたくさん植えられてますからね

 南はこちらの奥様が花をお好きなのでより花木が多いんですよ。もう少し行くと薔薇やさざんか、菊も今咲いてると思います

薔薇は棘が多いので気をつけてください

触らないようにね」

吾はおとなしくついてくる年下の子たちに注意した


イオエが近づいてきて吾に耳打ちをする

「イトナ様もお嬢様方が棘で怪我をされないようにと仰ってました。きっとキフネ様のご接待のじゃまにならないよう気遣っておいでなんですよ、ただご自由にご覧下さいと。タケリやキクチのことも中にお引き留めになってました

大事なお見合いなんですから」


「見合いと仰ったか!?」

「いえ、お見合いとは仰いませんでしたが

 でもそうでしょう?」


「そうはっきり言うな

 ほれ、子供らが怪我をせんようあっち側にまわれ」


吾はため息を吐きながらイオエを押しやった