母さまは新しい青と銀の衣裳を吾のからだに当ててみて
よいな、よいな、とにこにこ機嫌がよさそうだった
10の祝いに着るのです
郷中の名だたる家門から客人を招いておるからお前は名継ぎらしく立派に挨拶するのですよ
と言葉を教えてくださった
吾はこの度10になるのだがイオエや他の屋敷の子らは皆誕生の日など祝うことはなく
皆一様に年明けとともに歳を数えている
吾は他の子らとは違うのだと母さまはたえずおっしゃる
毎日ともに遊びどこが皆と違うものかと思う
ただ皆は吾に先読んでみせよとからかうようにつねに言うのは困ることである
先起こることを思いついては言ってはみるが当たったとてもともと起こりそうなことばかりであるから皆がことさらに驚いて見せるのもみょうに感じるばかり
でもさすがさすがと肩をいだかれるは悪くはない
10の祝いは大きに催すと母さまは言い父さまはこれを機に父さまのお仕事の度に吾を呼ぶとおっしゃった
気がはねている
イオエは父さまの言葉を聞いてから吾のことをつねにキフネ様と呼ぶ
なにも変わるはなし三月しか違わず二子のように育ちきたものをこれまでと同じくキフネと呼び捨てればよいのにへだてをとろうとするものか
ずっと側に暮らしたレンも家へ戻るのだと支度をしている
前にも一度帰ることになったことがあるが父さまが今しばらくとひきのばしここから炊屋の仕事に拘っていたものが今度は本当に部屋を引き揚げる
レンの家は遠くはないがもうここへは来ないのだ炊屋へ行けば会えはするが
10になるは淋しきことも多い